第0話 世界が終わった先で、君が笑ってくれるのを願いながら
はじめまして。しなとべあと申します。
この物語は、
たったふたりだけの登場人物で紡がれる、
“静かな愛と赦し”の物語です。
現代と異世界、
ふたりの時間だけがゆっくりと流れていきます。
最初から最後までが一本の映画のように繋がる、
そんな物語を、どうか受け取っていただけたら嬉しいです。
世界が、終わった。
空は裂け、大地は焼け、何も残らなかった。
人も、魔王も、そして世界さえも、ただの瓦礫になった。
静かだった。
風もなく、音もない。
灰が舞う中、少女は金色の義足の膝をつき、白い短剣を抱きしめていた。
それは、かつて“彼”だったもの。
骨と灰と、剥き出しの執着が形になった従魔の、そのまたなれの果て。
彼女の瞳は揺れていなかった。
泣きもしなかった。
ゆっくりと、白い短剣を振り上げる。
「ねぇ、龍哉クン──」
その声は、優しく、ひどく静かだった。
「今度は、ちゃんと、君を助けて見せるから」
少女は、ためらわず地面に短剣を突き立てた。
世界の終わりに、ただ一度だけ許された“願い”が、時空を裂いた。
神の声が問う。
「その願いでは、君は報われないのでは?」
少女は、微笑んだ。
「ううん、龍哉クンには辛い思いをして欲しくないんだよ。死なないでいてくれる、それだけで、いいんだ」
崩壊した世界に、光が差す。
時は遡り、世界は再構成される。
死ぬはずだった一人の少年の運命を捻じ曲げるためだけに。
願った一人の少女を置き去りにして。
これは、“沙穂と龍哉”の物語が始まる、もっと前の話。
彼が“ごめん”を言うために、世界をやり直す物語の、前日譚。