表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/30

船上の不協和音 ~混ぜるな危険!個性派クルーの日常~

 シー・チキン号は、再び静かに航海を続けていた。


 嵐は去り、問いは残り、プリンは――誰かが黙って食べていた。


 しかし。


 それ以上に残っていたものがあった。


 **混沌である。**


 ------


 朝の甲板。


 爆発音と共にマジシーの叫びが轟く。


「でぇぇきたぁぁああ!!!“ビスケット加速式・論理貫通型マルチショック砲Mk-II”!!」


「ちょっと待って!?その名称の9割、意味不明なんだけど!?」


「これでプリンの硬度を飛び越えられる!未知のグミすら撃ち抜けるぅ!!」


「なにその“おやつ特化型兵器”!?用途が局所的すぎる!!」


 ------


 そこへポンデン登場。


 彼は、例によって優雅にお茶を片手に語り出す。


「……考えてみたまえ。ビスケットとは“砕けやすい哲学”なのだよ」


「いやそれは違う。“物理的に砕けやすい”だけだからね!?」


「口に入れて溶けゆくあの瞬間……問いが問いであることを手放すが如き快楽……」


「誰かこの人から哲学を取り上げてぇぇぇ!!」


 ------


 一方、ソーラが観測報告。


「今日の海、ちょっと“しょっぱい思念”が混じってる気がする」


「え?感想!?観測じゃなくて!?!」


「あと、空の“青さ指数”は昨日より2プリンくらい高いね!」


「単位が“プリン”なのは誰のせい!?いや我々か!?ぷりぷりプリン団のせいか!!?」


 ------


 ノエラのリュートが鳴り響く。


「本日のリクエスト、いきまーす♪“滞納者のための応援歌・デスメタルver”!」


「なにそれ!?だれが頼んだの!?完全に誰も頼んでないやつ!!」


「♪払えええぇぇぇぇぇえぇ!!今すぐ!!愛と共にいいいいい!!!」


(※その日、船上ではなぜか3名が自主的に確定申告を始めた)


 ------


 ノートンは静かにすべてを記録していた。


「本日、船内混沌度:理想的カオス指数8.4

  歌による士気変動:乱高下。音楽療法に対する再考の必要性あり

  ソーラの観測値:物理的根拠、ほぼ皆無。だが本人は満足そう。記録終了」


(※ちなみにこの記録は、数日後“シー・チキン号珍行動記”として広く配布されることになる)


 ------


 そして、トランフォード。


 彼は、ただ……ただ、見ていた。


 マジシーがビスケットを弾丸にして、なぜかプリンに向けて発射しようとしているのを。


 ポンデンがその様子を見ながら「これは思考実験だな」とか呟いてるのを。


 ノエラがその背後で“税金ビートボックス”を始めてるのを。


 ------


 彼は、そっと薬包を開いた。


「……あ、やばい。胃薬……残り、2錠……」


(早くも底が見えた)


 ------


 そのとき、船長が颯爽と登場。


「各員、報告を。“昼飯”はどうなっている?」


「え、それ今このタイミングで!?このカオスの渦中で!?!?」


「昼食には、あえて“無銘のカンパン”を選んだ。“答えのない噛みごたえ”が、問いの深さを喚起する」


「それ、単に湿気ってただけですからぁぁぁあああ!!!」


 ------


 シー・チキン号は、今日もぶれない。

  方向性がない、という意味でぶれない。


 問いを抱え、プリンに執着し、税を歌い、空の色にプリンを感じる。


 それぞれがそれぞれの“理”を持ち、**だいたいその理が破綻している。**


 でも、どこかで――

  誰もがこの船に、**“目的地にない何か”**を見出しているのかもしれない。


 ------


 たとえば、それは――

  「一緒に突っ込んでくれる誰かがいる」安心感。


 あるいは、「プリンがある限り、生きていける」希望。


「……いや、どっちも正気じゃないよ!?」とツッコむ声が、今日もどこかから聞こえてくる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ