王家の宿命?それって美味しいの?~アレルギー体質の特異能力~
歴史とは、しばしば盛られるものである。
曰く、アトラス浮遊王国を築いたアトラス王家には、神より授かりし奇跡の力が代々受け継がれてきた、と。曰く、その力は星の運行を読み、万象の理を解き明かし、王国を不滅の栄光へ導いた――などと、なかなかに壮大な物言いで語られている。
……が、現実は、たいてい“想像の斜め下”を行く。
たとえば、建国王・アトラスⅠ世。歴史書には「大飢饉を予見し、民を救った」とあるが、実際は「競魚大会の万魚券に人生を賭けて当て、その賞金で食糧を確保していた」という説が濃厚である。未来を読んだというより、ギャンブルが強かったのだ。
さらに、隣国との戦争においては、戦略家として名を馳せたかのように見えて――
「敵将、重度のフナムシアレルギーらしいぞ」
という謎情報をもとに、敵陣に大量のフナムシをばらまいたという戦法を取った記録が残っている。倫理はどこだ。
そんな由緒正しき(?)王家の血を受け継ぐ、我らが主人公・船長(本名非公開、本人も忘れたが、便宜上そう呼ぶ)。
彼に宿った力は、ズバリ――
「超絶論理分析能力(ただし実用性は未知数)」である。
曰く、あらゆる物事をデータとして捉え、そこから即座に仮説を構築・検証・再構築できる異常な処理能力の持ち主。
……なのだが、その力が発揮されるのは、だいたい以下のような場面である。
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例1:「感動的な逸話」を聞いたとき
→「構成は平凡、意外性は薄く、感情喚起パターンB2に該当。感動指数は3.2%程度かと」
例2:「冗談やギャグ」を聞いたとき
→「その笑いのロジック、既存のテンプレートに近似しすぎていて新規性が不足していますね。ユーモア係数は……あ、マイナス行きました」
例3:「プリンの味の違い」に悩むとき
→「舌に残るザラつき……これはプレミアムゴールド規格の0.3%逸脱だな。異物混入の可能性……いや、私の味覚センサーが誤作動を起こしている可能性も……プリン容器の成分を再調査せねば……」
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まわりの人々は、そんな彼を「無駄にすごくて、すごく無駄な人」と認識している。
だが、本人は真剣そのものだ。
彼にとって、「問い」とは、己の存在意義であり、処理すべき命題であり、時に逃避である。
ある日、ふと空を見上げ、こう呟いたことがある。
「なぜ……トイレットペーパーはいつも芯だけになるのか……?」
その問いが王国の未来を大きく動かすなどとは、誰も想像していなかった。
(※国王は、その問いを「王家に再び“目覚め”が訪れた」と誤解し、船旅を命じた)
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こうして始まった、船長の「答えの出ない問い」と「無意味に精緻な分析」に満ちた旅。
その第一歩は、歴史の表に出ることはないかもしれない。が――
その横で必死に翻訳を担う家臣たちの胃には、確実に刻まれる。
なぜなら彼の「問い」は、誰より真剣で、誰よりズレているから。
その“ズレ”こそが、物語のエンジンなのだから。