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第二十話 革命の裏側

 アウグストは部屋に着くなり、社交パーティーのために着飾った衣服のままベッドに突っ伏した。


(なんだよ……あれ)


 ついこの間、ルーシュからヴェルツ正教で不審な動きがあることを聞いた。それもいまだに信じられないでいるのに、ここにきて、あの革命さえもヴェルツ正教が企てたものだったなんて……。


「……民をなんだと思ってんだよ」


 怒りのこもった声が口から漏れた。


 先の革命は、ヴェルツ正教の勢力拡大を危惧した前王朝が宗教弾圧を行い、それに反発したヴェルツ正教および信者、そしてヴェルツ正教の事実上の後ろ盾である現王朝のクロイツ家が騎兵したことにより発生した。

 記録上は、前王朝側がすぐに降伏したことにより、あまり大きな被害はでなかった。

 ——しかし、それは王都の話である。


 ロイエンタール家は当時から王都南方を治めていた。

 当時のクロイツ家領である王都西方から発祥したヴェルツ正教は、革命時点で西部を中心に国内に六割程度広まっていた。

 一方、国の東部には潤沢な資源の取れる山々があり、前王朝は東部に目をかけていた。これは経済的な面だけでなく、研究施設の多い西部に対抗する措置でもあったのだろう。公共事業も優先的に行われ、働き口にも困らない。その結果、東部は前王朝を慕うものが多かった。

 当時のロイエンタール領地ではヴェルツ正教の普及が四割ほど進んでいた。そうは言っても、ヴェルツ正教は歴史的な背景から他の宗教を弾圧しないことを提言している。

 様々な信仰が混ざり合う中、平和に暮らしていたのである。あの時までは——。

 前王朝によるヴェルツ正教弾圧が始まってすぐ、ロイエンタール領地内でも反対運動が起こった。

 矛先が王宮であればまだ良かったものの、攻撃したのは領地内の土着宗教の御神木だった。

 その意味をよく考えもせず躊躇なく火を放ったのである。それが皮切りだった。

 ロイエンタール領地は東と西で分かれ、この前まで助け合って共に生きてきた者たちが、突如として敵となり、排除すべき対象となった。

 父がかつて言っていた。

「人の心とはこんなにも恐ろしいものなのか」と。


(ヴェルツ正教が私欲のためにこんなことをしたのであれば許せない……)


 騎士でもなければ、武器すら持っていない。王都で行われた出陣とは訳が違う。

 ロイエンタール領地での争いは、農民、それだけでなく子供さえも巻き込まれたのである。

 アウグストは無意識に両手を強く握りしめていた。

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