6話:気力だけで飛んでやる!
飛行魔術と聞いて僕は焦る。
実際は空から地面へと落ちていたからだ。
いや、違う!!!落とされていたんだ!!
「え~っと・・・・ね?でも僕飛行まじゅつ?得意じゃなくて・・・・・・・・。」
とりあえず嘘をついてみる。
「だろうね。だって落ちてきたもん♪」
ハハハっと笑い楽しそうに言うアルトに僕は頬を膨らませた。
だいたい、僕は落ちたくて落ちていたわけじゃないんだからね!?
「落ちたかったわけじゃないんだからね?」
「誰も好き好んで空から落ちる人なんていない思うよ?」
「だーーーーもう!とにかく、僕のトコロでは印は付けないの!
飛行魔術の話はこれでお終い!だいたいこれからどうすればいいんだよ?
そもそも印がなかったらいけないことなの?」
僕の質問にアルトは首を傾げて言った。
「クォンの町?村?では他所の町や村に行ったりしないの?そのときに通行書の役割として機能しているはずなんだけど?」
アルトの言葉に僕は慌てる。
というか、アルトの一言一言において緊張をしてしまっていた。
「ええっと・・・・・その・・・・・あまり村のことを話したくないんだ。っていうか知られたらいけないというか。」
今更ながらそんな言い逃れをしても大丈夫なのだろうかと内心冷や汗をかく僕。
でもアルトは深く追求をしたりしなかった。
「ふぅん。まぁ、言いたくないのを無理やりにでも聞こうとは思わないけど。」
「あ、ありがとう。」
なんとか誤魔化せたかな?なんて僕はほっと息を吐いた。
「でも、これだけは教えて。」
「何?」
「クォンのいた村は皆魔術が使えるの?」
またしても焦る僕。
どう答えたらいいのだろう?和樹ならどう答えるだろうか?
小説になんて書いてあったっけ?漫画には?アニメは?
こんなシチュエーション読んだことも見たこともないよ・・・・うぅ。
もういっその事僕が勝手に作っちゃえ!
詳細は後々考えるとして・・・・。
「ううん。使える人と使えない人がいたよ。でもどうしてそれを聞くの?」
「うん。もしかして封印された村なのかなって思っちゃって・・・・。」
「え?封印・・・・ぜ、全然違うから!そんな閉鎖的なものじゃないよ?!だからいつか村に招待してあげるよ!!・・・・だぶん。」
「ハハハハ、無理しなくて良いから。うん、でも楽しみにしてるね!!」
アルトが嬉しそうに笑うの僕は少し複雑な気持ちを抱いた。
僕はこの世界に来て【世界樹】の【記憶】を集めなくちゃいけない。
一人でなんて無理。それに『一人ではありません』って神様もどきが言ってたし。
こうなったらアルトを連れて行こう!!っていうかいったいどこの誰か教えてくれてもいいと思う。
それにアルトは勇者の末裔?だって言ってたし・・・・なんてそんなことはどうでもいい。
和樹が言ってたように『まず初めに会った人物は信用しろ。んで、あとから騙されろ!』って・・・・不安だぁ~。
でもでも全部が終わったときに、少しで良いからアルトを僕の世界に招待してあげたい。
自然はこっちには負けてるけど、他の面ではきっと驚くものばかりだから・・・いつか。
「あ、アルトはもちろん魔術が使えるとしてどこまで使えるの?」
「うぇ?!!!!!」
真剣に未来のことを考えていた僕にアルトからの爆弾発言をいただいた。
しまったぁ!!!
実際に僕は魔術なんて使えないんだよぉ・・・・。
心の中で半泣きで、実際の表情も半泣き状態だけどはっきりと言う。
「聞かないで。」
だた一言を。
「ああ、うん。ごめんね?だから泣かないでよ??」
アルトはその一言で全てが分かったような顔をした。
きっと飛行魔術が使えながら・・・・っといっても落ちるし、きっと苦手なんだろうなぁ~っと思っているに違いない。
「うぅ・・・泣いてなんかないもん!!」
目から涙らしき滴が頬を伝う。
人はコレを泣いているというのだろう。
だからといって僕はそれを認めない。
それを見てアルトはなんと僕の頭を撫でてきた。
「よしよし。いつかは使えるようになるよ。」
「う、うるさい!そういうアルトは使えるわけ?」
どうせ妖精や精霊を見ることしかできないんでしょ??
まさか勇者の末裔だからってそんな便利な能力が備わっているなんて・・・・
「うん。まぁ一応・・・・クォンよりは使えるよ?」
はい。備わっておりました。
それはアルトが勇者の末裔だからとかではなさそうで。
「・・・・・・・・・・嫌味?僕だって・・・・・上手く使えるようになるもん。」
魔術すら使ったことがない僕は右上斜め45度の明後日を見ていった。
嘘じゃない。
願望をいったまでだ。
そう僕は自分に言い聞かせる。
だいたい異世界に渡ってなんの能力ももらえてないなんて・・・・あんまりだと思う。
きっと魔力だってあるはずだ。
神様もどき!!まさか無能なんてわけじゃないよね?!
「じゃぁ頑張って練習しないとね?」
「やってやるさ!アルトよりも上手くなってすごい魔術師になってやるぅ!!」
当初の目的はどこへ行ったのやら拳を握り締め僕は燃えていた。
しかも魔力があるのか定かではないのに自信満々に魔術師になると断言してしまった僕。
ああ。聞こえてくるよ・・・・和樹の声が。
『馬鹿やろう!!あるかないかも定かじゃないのになんでそう言い切る?後先考えて行動してくれないと俺心配で心配で・・。』
・・・・・・勝手に心配してなよ!
「ああ、まったく和樹は煩い!」
「え?」
気づいたら声に出ていたらし。
危ない人だと思われたかも・・・・気にする僕にアルトは感心した目を向けてきた。
あれ?なんで??
「クォンは遠く離れた場所でも会話できるんだね!クォンの魔力はきっと凄いんだろうなぁ~。」
「うぇぇ?ち、違うこともないかも・・・・・・。あぁぁ。」
ごめんなさい。嘘をつきました。
しかも取り返しのないような嘘を。
あ、アルトどうかこんな僕を見捨てないでください。
「っていうことで、僕の手伝いをしてください!!」
僕の言葉を聴いてアルトは目を丸くした。
楽しい物語が書けたらといつも思いつつ経験不足差に嘆いています。
ああ。久遠・・・・アルトをそんなに悩ませないで!!