5話:僕の親友それは天才児
「あいつはね、偉そうで口が悪くて人のせいにすぐして何よりイケメンなんだぁ~」
まったくっというように腕を組みながら嘘を交えて言って見る僕。
「えっと・・・・クォン?」
「ごめんなさい嘘です。まじめに話します。」
アルトの純粋かつ蒼の綺麗な瞳に見られて僕は素直に謝ることにした。
そして今度そこというように一つ咳払いをし、アルトに向き直った。
「あいつ・・・僕の幼馴染かつ親友の名前は和樹っていうんだ。すっごくイケメンでぇ~あ、アルトはそれ以上だけど!!しかもしかも頭まで良いときた!まさしく天才なんだ!
女の子には一日に一回は告白されているって言ってもいいほどモテて。しかもそれをことごとく振ってぇ~僕に見せ付けるんだ。
『俺はまた告白されたぜ?羨ましいだろう??』って!!実際には言ってないけど・・・目が言ってるんだ!!あの目は絶対に。
だから僕はとにかく和樹はこの14年間一度も女の子と付き合ったことがないんだよ?あの容貌で!!ふざけてる!!
人には散々言うくせに!!」
「えっとぉーなんて?」
僕の話の中で何かが引っかかったらしいアルトは眉をひそめたがあえてそこはスルーして尋ねてきた。
尋ねられたので僕も和樹の真似をして答える。
「『いいか?告白されたら、好きでなくても付き合ってやれ!もしかしたらこっちも好きになるかもしれないからな?』ってさ。」
あぁ~言いながら和樹の顔が浮かんできた!!腹立つ!じゃぁなんで和樹は付き合わないんだよ!・・・・なんて理由は分かってるけど。
「はは、面白いね。」
「面白い~??どっこが!」
「でも気づいてるんでしょう?そのカズキが女の子と付き合ったりしないのか。」
アルトがニコリと笑いながら僕に聞いてきた。
それにしても、こう顔が整っていると笑顔までが凶器になるんだね。すごい。なんて内心関心しながら僕の顔はどんどん膨れっ面になっていっているに違いない。
もちろん僕は知っている。自分に原因があることを。
「気づいてるよ、僕が原因だってこと。それにここに来る前だってそれが原因で・・・・。(勝手に嫉妬しただけだけど)」
「っえ?好きな人がカズキに告白したの?」
「違う・・・・一緒に帰ろうって言ってたのに。ほ、他の・・・・」
「他の?何?」
「~~~~~~っ。」
改めてすごく嫉妬をしていたことに気づいて今更ながらに顔が赤くなったきた僕はアルトに顔を見られまいと横を向いた。
けれど横を向いただけで顔が赤くなっているのがばれないはずがなく、アルトはしっかりと僕の赤くなった顔を見ていた。
「クォ~ン?もしかして嫉妬したの?他の人と帰っているのを見て?その相手は女の子だったの?」
「・・・・・例えそれが、女の子だったとしても約束は守るべきでしょう?」
「女の子だったんだね?」
アルトの蒼い瞳に見つめられたら違っていたとしても頷いてしまうだろう。特に女の子は・・・・。
まぁ、間違ってないけど・・・頷きたくないんだよね。だってこれじゃぁただの幼馴染離れできていない子供ジャン!!
「・・・・・・(絶対頷かないぞぉー!)」
「クォン?口に出さなくても目が返事をしているから意味ないと思うよ?その無駄な努力。」
「っちょ!無駄とか言わないでよ!!それにそんな目で僕を見ないでぇ~」
ア、アルトの目は僕には毒なんだぁーーー!!
うわぁ~っと頭を抱える僕にアルトは不思議そうに顔を覗きこみ心配した。
覗きこまれた僕はますます顔を赤くする。
もし、アルトが女の子だったら・・・・・と考えると僕はきっと秒殺されていただろう。
「イケメン・・・だけどアルトが男で良かったよ。」
ふぅ~とため息をついて考えていたことを打ち消した僕にアルトは不快な顔をした。
「あのさ!さっきからイケメンイケメンって何なの?」
「え!?知らないの?イケメン?」
「いや、イケメンの意味じゃなくてさ!だいたいクォンは可愛い顔してなんで男なんだよ??」
「ハァ?可愛い顔って・・・・褒めてないよ?それ褒めてないよ??」
「しかも可愛いのは顔だけじゃなくて頭の中まで・・・・。これじゃあ和樹は恋人すら作れないよなぁ~」
「っちょ!それどういう意味だよ?嫉妬してたのは認めるよ。」
「認めちゃうんだぁー。」
「み、認めるよ。でも、僕がその・・・・・なのと和樹が彼女作んないのは関係あるかもしれないけどない!!」
そう言い切る僕にアルトは首を横に振り呆れていた。
「それじゃぁ矛盾してるよ。しかも嫉妬して勝手に怒って町から逃げ出してきたってわけ?」
「逃げ・・・まぁいいや。矛盾しているのはわかっているけど・・・・むぅ~。」
町から逃げ出したわけじゃなくて、和樹から逃げ出しているときにコッチにきっちゃったんだけど。
なんてことアルトに言えるわけないじゃん!
そんなことよりもなんで僕がこの村に住民登録された続きを聞かなくちゃいけないんだった!!
まったく和樹のせいで話が脱線したじゃないか!帰ったら文句言ってやる!
「和樹の話っていうか、僕と和樹の話はまた今度話すよ!
そんなことよりなんで僕がこの村に住民登録されたのか知りたいんだけど!!
精霊が見える、妖精が見れるって話で曖昧になって、しかも話が逸れて聞けなくなるところだったよ!」
僕が一気にそういうとアルトは驚いた顔をした。
その後にッチっと舌打ちをしたのは気づかなかったことにしようと思う。
「君を助けた後に、印が付いていないか確認したんだよ。」
「しるし?って何?」
「・・・・・・・え?印だよ??村や町の住民登録された証を印として残すだろう?」
「えっと・・・僕のところは違うんだぁ~アハハハ。」
「印を付けない?変わったところだね。まぁクォンの年で飛行魔術が使えることじたいがすごいことだけど・・・。」
アルトはじっと僕を見ながら真剣な声で言った。
でもその真剣な声の意味を僕は気づくことはなかった。
僕=久遠です。