表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

廃れた闇

あれは僕が高校3年生のときだった。

友達とふたりで学校から少し離れた山奥にある

大きな廃校に肝試しに行ったときの話。

その日の昼は炎天下だった。

何を隠そう、8月の中旬だったからだ。

そのせいか肝試しに行った夜もすごく暑かった。

親には友達とジムでトレーニングしてくると

嘘の出かける理由を言って家を夜9時頃に出て

友達と待ち合わせしていた近所の公園に向かった。

その友達は楽しみすぎて待ち合わせの10分前には

もう公園に来ていたそうだ。

その友達はケンジといって、僕の大親友である。

「おい!お前遅いぞ!」

「遅いって、ケンジが勝手に早く来たんだろ!」

「あ、そうだった。あはははは!」

なんて、いつも通りに快調なやりとりをして

待ち合わせで使った公園を出て、廃校へ向かった。


ここから廃校までは自転車で1時間くらいだ。

着く頃には10時過ぎになるだろう。

どんどん山の方へ自転車を漕いでいくと

さっきまでにぎやかだった街も遠ざかり

人の声、物音、街灯もどんどん小さくなり

やがて、聞こえなくなりあたりは闇に包まれた。

ただ実は廃校は解体工事が進んでいたため

廃校の周りには街灯が3本だけ立っていた。

その小さな3つの灯りが見えてきた。

もうすぐ廃校に到着する。

解体される前に肝試ししておこうという

思いもあったのだが、解体工事は中止されていた。

どうやらこの廃校の解体工事に関わった人たちの

一部が、不審な死をとげているらしい。

その話を思い出し、僕とケンジは自転車を漕ぐ足を

止めようとしたが、今日がチャンスだったので

そんな怖い気持ちをとっぱらい、廃校に到着した。


自転車を蜘蛛の巣だらけの駐輪場に仕方なく止めた。

確かに、噂通りにこの廃校は大きい。

学校として運営されていた時代には、ここの学校の

全校生徒は、1200人を超えていたらしい。

1200超えの生徒をいれるだけあって大きい。

ふたりはガラスの破片だらけの玄関に入り

とうとう、廃校肝試しをスタートさせた。

床はヒビだらけ、いたる壁も剥がれ落ち

紙くずや古びた木材などが床に散乱していた。

蜘蛛の巣がおびただしい数はられていた。

体育館に行くまでの廊下の天井は全て崩れ落ちていて

校舎の扉や窓に使われていたガラスも全て割れており

ただよう雰囲気がとにかく不気味だった。

「なぁ、ケンジ、もう帰ろうぜ?」

「なに言ってんだよ、確かに気味悪くてやばいけどよ。せっかく来たからもうちょい居ようぜ、。」

この廃校の雰囲気を味わったふたりは

もうそんな会話を交わしていた。

だがこのときはまだ恐怖より好奇心が勝っていたので

肝試しは続行された。


なぜ肝試しをしたかったのか。

その具体的な理由は、この学校が廃校になった

理由でもある、とあることをやりたかったからだ。

「おい、ケンジ、これ上がれるか?」

「うわぁ、ひどいなこりゃ…。でもほら、左半分は階段として機能してるから、慎重に行くしか。」

ふたりは半分壊れた階段を慎重に上がっていき

校舎の2階へと、歩みを進めて行った。

「あったぞ、ケンジ、、。」

「ここが理科室かぁ、。」

そう、今回肝試しにきた理由は、ここの廃校の

理科室の呪いを確かめたかったからだったのだ。

現役の学校だった時代、理科の授業で

アルコールランプを使うことがあった。

とある生徒が使っているとアルコールランプが突然

爆発し、木製の理科室の椅子に瞬時に燃え移り

理科室全体が原因となった大火事が起きた。

その時、調理実習の授業も行われていた。

理科室からの炎が調理実習室へ、さらに運悪く

給食室にまで燃え移り、結局校舎のほとんどが

全焼する大火事が起きたそうだ。

当時、新聞の一面や、ニュースで報じられるほどの

大きな出来事だったそうだ。

その大火災で23人の生徒が亡くなった。

そのうちのひとりが爆発したアルコールランプを

使っていた男の子だったという。

その男の子の霊や亡くなった他22人の霊が

今もなお、この廃校をさまよい続けて

面白半分で肝試しにきている人々を呪っている。


そして、その大火災が原因でそのまま廃校と化した

この学校には、理科室の呪いが存在している。

その理科室にはまだ、あの日に突然爆発した

アルコールランプのガラスの破片が残っていて

その破片を持ち帰ると、不運な出来事に襲われる。

といった、理科室の呪いがある。

経験者はたくさんいる、中には命を落とした人も

いたが、ふたりにはその呪いというものを

嘘だと頑なに思い込んでいたため、今日確かめに

この廃校まで足を運んでやってきたのだ。


ふたりはボロボロになった理科室へ入った。

「どうやら、その子はこの席だったらしいぜ。」

「そうか、こんな入り口の近くだったのか、。」

「らしいな、よし、この席の周りに落ちている破片を持って帰るぞ!お前も手伝えよ!」

と、ケンジに言われたが僕は

「いや、僕は遠慮しとくよ、。」

とケンジに返した。

「これだからビビりはダメなんだ?まぁいいよ、お前の分まで俺が破片を持って帰ってやるから!」

このとき、僕の体は硬直して動かなかった。

なにか、嫌な思いが脳をよぎってきた。

それは実際にはその大火災は僕らなんかが生まれた

年より何十年も前なんだけれど、その当時の現場で

慌てふためいている生徒や教師の姿がなぜか

僕の脳をよぎってきたので、僕は動けなかった。

そうしているうちに、ケンジはたくさんの破片を

ポケットにしまって、なぜか笑っていた。

「大量の破片だなこりゃ!大丈夫だって!絶対噂だから!理科室の呪いなんて嘘だってことを、俺が証明してやるから!待っとけ!!」

と、ケンジはニコニコしながら理科室を出た。

そして、僕は無言のまま理科室を出た。

こうしてその日は特に霊的現象に襲われることもなく

廃校を出て、ふたりとも無事に帰っていった。

だが、、、。


肝試しから1週間後、ケンジはこの世を去った。

ひとりで留守番しているときに火事を起こし

逃げ遅れ、そのまま帰らぬ人となった。

使っていた調理器具であった揚げ物鍋が突然爆発。

そのまま、ケンジは旅立ってしまった。

僕は親と先生とケンジの親に肝試しのことを話した。

複雑で、とくに怒られることはなかったが

学校ではあの廃校には絶対に立ち入るなと臨時集会で

校長が何回も何回もキツく話した。

それから数日後、あの廃校は結局解体された。

ケンジ、ごめん、。

なぜ僕は今、普段の日常を送れているのか、。

僕があの世に行ったら、ケンジに土下座します。

そして、ケンジが現世でやりたかったことを

全てあの世でやろうね。全力で付き合います、。

肝試しなんて、やってはいけない。

これは僕の人生の中で1番の学びになりました。




























評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ