偽りの涙
「消えてよ…優奈」
帰り道、信用していた親友から泣きすがられ告げられた5文字の言葉。
大粒の涙を顔に浮かべ訴えるその姿は、無理やり言わされたような感じではなく……………本当に消えて欲しいと、心から訴えるような感じだった。
あまりの衝撃に私は、言葉が出ないどころか恐怖心すら感じなかった。
あぁ……私ってその程度にしか思われてないんだ。とそのくらいにしか思わなかった。
気がつけば私は、ビルの屋上の柵の上に立っていた。
いつも大きく見える建物も、今いるビルから見るととても小さく見える。
風も強くて、柵から手を離せばすぐにでも落下するくらい高い。
かなり厚着をしているはずなのに、風が強いせいか何故かとても体が震える。
でも、こんな死に際に立たされても………………何故か恐怖心は湧いてこなかった。
ドンッ
さっきまで力強く掴んでいた柵から手が離れ、体が浮いた。
私の背中には微かに………誰かの手の感触が残っていた。
そしてほんのりと…………甘い匂いがした。
私と地面の距離がだんだんと近づき、鈍い音を奏でた。
グシャッ
微かに人の声が聞こえた。
「…ぃ……ぞ!」
男の人や女の人が沢山…私を囲っている。
電話をする人…私に呼びかけをしている人…それと…にこやかに微笑む誰かがいた。
私は一生懸命目をつぶらないように耐えていたけど…限界が尽きて……私の意識は、ここで途絶えてしまった。