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第八話 兄様と、友達?と、

 

「アメリア来てたんだ!」



 遡ること数分前……


 ディアン兄様の従者(と言ってもまだ見習いと聞いているが)であるヨハネスさんが何かがメモ書きされたか手紙を渡された。前触れのもなくしかも、いつもそばにいるヨハネスさんを寄こしてのことだ。何かあったのではないかと僕の従者から受け取った手紙を読む。それは、いつ見てもきれいな兄様の字だった。内容はというと、


『きみのかわいい“お友達”がとってもかわいい悩みを抱えて飛び込んできたんだけど、さすがの僕でも解決してあげられなさそうだからルシアンが解決してあげてよ。僕の部屋で待っているからね。PS.早くしないと迎えの馬車にさらわれちゃうよ?』


 僕の友達で、なおかつ部屋に招待されるほど兄様との仲の良い人物...一瞬ヨハネスさんが浮かんだが、いいや違うと心の中で否定する。あと友達と胸を張って言えるような人物は......


 少し早足でディアン兄様の部屋に向かう。

 わざわざ僕に手紙を寄越す程なのだ、それ程までに僕のことを揶揄ってやりたいのだろうか?と思いつつもわざわざ顔を出しに行く僕も、まるで揶揄ってくださいと自分から言っているようなものなのだろうか?


 そんなことを考えていると部屋の前に着いた。実際には五分ちょっとで着くのだか、いけないとは思いつつも早足で歩いてきたせいか、いつもより早く部屋まで着いた。


 息を整えるために扉の前に立っていると、部屋の中から聞き慣れた声が聞こえてきた。もう一度だけ深呼吸をしてドアノブに手をかける。そして冒頭へ……



 ***



 部屋の中には、驚いた顔でこちらを見つめている少女と、不満げに眉を潜めてこちらを見つめている少年がいた。


 一方は、「どうしてルシアン様がここに?」と、もう一方は「随分と来るのが早かったじゃないか。せっかくの楽しい時間だったのに」と言葉こそは発していないが、そう言っているような顔をしている。


 少女は一拍置いてから立ち上がり、いつも通りのきれいなカーテンシーをした。手紙に書かれた“お友達”と表現されたのが彼女であり、本来ならいないはずの彼女がこにいる事に嬉しく思った。そして、突然のことで驚いたのか、戸惑いながらも頭を下げる少女を見ていて、とてもかわいいと思った。


「そんなにぼーっと突っ立ってないで何か言ってあげないと、アメリア嬢がかわいそうだよ。」

「ア、アメリアいつも通り楽にしていいよ。そこにいるお兄さんは空気か何かだと思って、ね?」

「ありがとうございますルシアン様。さすがに王子殿下を空気と思うことはできませんが……それならば私から一つ質問をしてもよろしいでしょうか?どうしてルシアン様がここにいらっしゃったのでしょう?あ、もしかしてディアン殿下に用があると言うことなら、私はすぐに帰らせていただきます。」

「えぇっと、それはね……」


 さすがにアメリアに会いたかったから、急いで来たなんてことを言うわけにはいかないし、だからといってこのいかにも揶揄ってやろうと言う本心が、見え見えの兄様に用事があるなんて嘘はもっとつけない。

 元はと言えば、あの手紙が原因なのだ。それの差出人が説明をしては良いのではないか。とニコニコと笑いながら、この状況を楽しんでいる張本人に冷たい眼差しを向ける。


「ルシアン、さすがの僕だってそんな眼差しを向けられたら傷つくよ?君にも説明してあげる。そこにいる王子様は、立派なお兄様の召喚に応じてすぐに飛んで駆けつけたってわけさ。しかも誰も急げとは言ってないのに、わざわざ早足で歩いてきてさ。」


 明らかに言い過ぎだ。確かにお前が説明しろと言わんばかりの視線は向けたが、最後の一文はなかったっていいだろうというか絶対になくてもよかった。あの兄は、弟の尊厳を守ってやろうとか言う粋な計らいはできないのだろうか?


「ふふっ、召喚に応じて急いで駆けつけたって、まるで王子様じゃなくて騎士様じゃないですか。なんだか物語の中の騎士様みたいでちょっとかっこいいですね。」

「アメリア嬢は結構物怖じせずに言うタイプなんだね。普通国の王子に向かって騎士みたいなんて言う人はいないよ。まぁそこがかわいいんだろうけど?」

「あ、すみません。褒めようと思って言っただけなんですが……小説に出てくる騎士様はみんな、ヒロインちゃんがピンチになるとすぐに駆けつけてくれるかっこいい人だったので。」


 二人がしゃべっている間に、兄様の部屋付きのメイドに案内され席に着く。自分が騎士と形容された時、図らずも嬉しいと思ってしまったが、確かに、一般的に騎士の地位は王族なんかよりもっと低い。おまけに、身を呈して国や国民を守ることが仕事だ。王族に向かって騎士みたいなんて言うやつは相手が貴人であることを知らない世間知らずくらいなものである。


「そうだ!丁度ルシアンも来たんだし、せっかくなんだ、さっきの質問の続きでもしようか?アメリア嬢、君はどんな人が好き?」

「……!ケホッケホッ」

「行儀が悪いぞルシアン。これは友達同士がする所謂恋バナと言うやつなんだ。それくらい普通だろ。」

「大丈夫ですか?ルシアン様……?私と殿下は決して(身分が違いすぎて)友達にはなれませんが、殿下のご所望であれば恋バナでもなんでも付き合わせて頂きます。」


 何が丁度いいのだバカ兄様!と思いながら、頭の中の全自分を集合させて脳内会議を始める。これはアメリアの好きな異性像を知るまたと無いチャンスだと思いながらも、自分と余りにもかけ離れていたらどうしようという不安が生まれた。


 いいや、どうして僕は不安になっているのだろうか?


「そうですね...私の理想は、やっぱり一緒に話していて楽しいと思える人でしょうか?それと、私の魔法をきれいだと褒めてくださる人はとても好ましくおもいます。」

「心配しなくてもアメリアの魔法はきいれいだよ?」


 僕がそう言うと、アメリアの顔がだんだんと赤くなった。かわいいなと思いながら、ありがとうございます。と小さな声で呟いて顔を伏せてしまったアメリアを見ているとこちらまで少し恥ずかしくなってきて、僕も同じように顔を伏せた。


 ちらりとバカ兄様のほうを見てみると、影がかかったような、それでいてとても穏やかな笑みをしていた。まるで、とても欲しいものが目の前にあるのに手を伸ばしても届かないそんな現状に憂いているような。しかし、そんな笑みも僕が顔を上げたのに気が付くといつも通りの僕を揶揄うときの顔になっていて......


 兄様のあのなんとも形容しがたい笑顔を見たのは生まれて初めてのことで、あの笑顔がどうにも忘れられないのであった。



 ***



 しばらくすると、兄様の従者(見習い)であるヨハネスさんが帰ってきた。僕の部屋ともう一か所、魔法研究室にも手紙を届けに行っていたそうで、どこかの王太子様の指示でだいぶ遠回りをしていたから遅くなったのだそう。


「随分と遅かったじゃないかヨハン。」

「はぁ、誰のせいだとお思いで?」

「さあだれだろうな?僕のかわいい従者にそんな命令をする奴は。」


 兄様がこっちを見てくるので、思はずこっちを見るなと言ってやりたかった。いや、アメリアが居なかったら言っていたと思う。


 それから二、三分もすると魔法研究室の職員がやってきた。部屋に入るなりアメリアがお父様!と呼んでいたのであれがルシフェーヌ侯爵なのだろう。侯爵はというと、アメリアがいるのを確認してホッとした表情を見せたのも束の間、深く頭をさげ、アメリアもそれを真似して深く頭を下げた。それを見た僕達は二人があまりにも必死だったので思わず顔を見合わせて笑ってしまった。


「ルシフェーヌ侯爵もアメリア嬢も顔を上げてください。確かに無断で王宮に入ってくる令嬢なんて聞いたこともありませんし、普通なら見つかり次第直ちに拘束されて地下牢送りでしょう。」

「兄様もっと言い方があるでしょう?」

「しかし、アメリア嬢はそうされてはいない。それならば今回の件は水に流しましょう。僕だって職務怠慢だと縛られる騎士達を見たくない。第一、彼女は僕のいいえ、僕達の大切な友達ですから。」


 兄様がそう言うと、侯爵はありがとうございます。といってもう一度深い礼をした。僕としても絶対にアメリアが捕まるなんて事は嫌なので、兄様の判断は正しかったと思う。この国の王太子の言ったことに反対できるのはこの部屋にもいないので、この件は水に流す流れになった。


 今日の件もあってやっぱり、この人は人の上に立つのが向いていると思った。


「それでは我々は失礼します。アメリアも挨拶を。」

「はい、ディアン王子殿下、ルシアン王子殿下本日は急な訪問にもかかわらず寛大なおこころでのご対応ありがとうございました。次はちゃんとお手紙を出してから来ますね!」


 ニコッと笑ったアメリアの隣でもう問題は起こしてくれるなよ、やれやれ。というような表情をしている侯爵は中々に肝が据わっていると思う。こういう所はさすが親子というべきか?



 ***



 アメリアたちを見送ってから自然と僕たちも解散する流れになった。


「......兄様、ありがとう。」


 まことに不本意ながらも今日は楽しかったと感謝を伝えると、兄様はとても驚いた顔をしていた。


「ありがとうなんてらしくないなぁ。そんなにアメリア嬢が来たのが嬉しかった?」

「べ、べつにそんなことは...」

「いいと思うよ。せっかくの身分なんて気にせずに一緒に笑いあってくれる友達なんだ。それに、そんな子一人守れなくてどうするの?」

「...!」

「貴族には貴族のやり方で、そうでしょ?」


 たまには王太子らしいことも言うのですね。というヨハネスさんの一言に、らしいじゃなくて僕は本物の王太子だという兄様の反論が続く。確かにと今日の兄様の言葉を反芻してみる。いつもの僕をからかうだけの兄様ではなくて、言葉の端々には重みがあった。


「ほらほら、帰った帰った。僕は弟の恋愛話をきながらお茶を飲む趣味はないんだ。」


 やっぱり、さっきの言葉は訂正。たまには立派な言葉も言えるんだと感心していたのに、この無神経王子が。


「なら僕も帰らせてもらいます。お邪魔しました。ヨハネスさんバカ兄様、また夕食の時に。」

「ちょっと待てルシアン、僕はバカじゃ」


 バタン


 兄さんが何か言おうとしていたのを無視し、部屋から出て行った。散々僕のことをからかってきた罰として、ヨハネスさんにたくさん笑われるがいい。


 そして僕は読みかけの本を読むために、自室へと続く長い廊下を歩いて行った……


皆さんお久しぶりの夜桜零です( . .)"

ほんとに時の流れって速いですよね……もう3月です。

巷では入試&卒業式シーズンですね!


さて、今回のお話では全てルシアン様sideで書いてみました〜!心の声多めとなっておりますのでキャラの性格を出せたのでは?と思います( *´ `)

そして、兄様よ何を隠しているのだい兄様よ!!!

優しい人は我慢するって……ヨシヨシ(。´・ω・)ノ゛


色々と書いてて楽しい第八話でした!

それでは次のお話でお会いしましょう*˙︶˙*)ノ"

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