第十五話
私が巻き込まれた事件。その一連の犯行は最近王都や下町で頻発している事件、貴族や平民の子どもを狙った誘拐事件の一つだとお父様は教えてくれた。
発見された時私は魔力酔いを起こしており、体の中で二人分の魔力が反発し合っている状況だった。
魔力酔いは自分以外の魔力を瞬間的に流し込まれた時に起こるもので、かなり特殊な現象である。魔力の強いな人ほどかかりにくく、平民などの産まれ持った魔力が弱い人ほど重症化しやすい。
私にも一緒に救出された子達にも犯人の一人の魔力による魔力酔いを起こしていて、すごい熱を出していたらしい。今は何事もなく回復出来たので良かった。
***
「おはようアメリア、調子はどうだい?」
「おはようございますお父様。えぇ、沢山休んだのですっかり元にもどりました!」
「アメリアおはよう。今朝は一緒に朝食を食べられるなんて嬉しいよ。」
「オリバーお兄様おはようございます!私もお兄様と久しぶりに食事をご一緒できて嬉しいです。」
この数日体調を崩していたこともあって、家族一緒に食卓を囲むのは随分と久しぶりな気がする。
「お母様おはようございます!」
「あら、アメリアもう体は大丈夫なの?」
「はい、沢山休みましたから。今はむしろ体を動かしたいくらいです。」
「それなら、ダンスのレッスンでも先生にお願いしますか?」
お母様いくらなんでも厳しすぎではありません?一応病み上がりの娘のはずなんですけど…
久しぶりの朝食のメニューはふわふわのパンにスクランブルエッグ、こんがり焼けたベーコンにりんごのムースタルト。それと、はちみつを入れた甘い紅茶。最近はお粥ばかり食べていたから本当に美味しかった。
午後は久しぶりにオリバーお兄様とお出かけをした。
お兄様と一緒にいられるのも魔法学園に入学される十六歳まで、その後は寮から帰ってくる長期休みでしか会えなくなってしまう。それまで約2年間の間はたくさん思い出を作る作戦だ!
「お兄様見ました?今の!帽子の中からハトが出てきたり、切ったはずのハンカチが元通りになったり…まるでマジックみたい!!」
「ほんとうだ!魔法であんなことまでできるなんて…それにしても、アメリアは本当に魔法が好きだね。将来はすごい魔法使いになれるかもしれない。」
「それは言い過ぎですよ、お兄様!」
お昼ご飯をたべたり、家族でお揃いのコーヒーカップを買ったり、魔道具を使ったショーを見たり……とっても楽しい一日になった。
「アメリア、本当に僕は幸せ者だよ。家族にしてくれてありがとう。」
「私こそ!お兄様が私たちを家族と呼んでくれて嬉しいです!こちらこそ、ありがとうございます。」
夕日に照らされながらそんなことを言うお兄様はさながらゲームに登場する攻略対象のキャラみたいで、このワンシーンも実は私の忘れているスチルなのかもしれないと錯覚すら覚えた。
その日の夜は私たちが買ってきたティーセットでお茶を飲みながら、家族でゲームをした。前世でもよく遊んでいたトランプで簡単なHIGH & LOWというゲーム。数字の大小を当てるだけだが、とても盛り上がって楽しい夜となった。
***
病み上がりのお休み期間もつかの間、私の生活は次第に日常へと戻って行った。
家庭教師の先生と勉強をしたり、ダンスのレッスンを受けたり、お母様の指導の元前世でも苦手だった刺繍に挑戦したり……
あとはケイト様に呼ばれてお妃教育とやらにお邪魔して、その後は王妃様とお茶をしたりもした。その日は緊張しっぱなしだったので何があったかほとんど覚えていないが。ディアン様がケイト様に会いに来たのは覚えてる。だって、なにか尊いものを感じたから。
こんなことがあって、何回かお城にお邪魔しているのだが、ここ最近というか2人の婚約発表のあとからルシアン様に会えていない。魔法発表会のことはルシアン様と確定はしていないのでノーカンで。
ある日のお茶会でルシアン様のことを王妃様に聞いてみたところ、部屋まで行っていいと許可を貰えた。
お城のメイドさんに案内されてルシアン様の部屋にたどり着く。だけど、魔法でドアの前には切り裂くような風のバリア?が展開してあってノックすらまともに出来ない状態。何度か呼びかけて見たけれど反応もない。
「ねぇ紺いる?」
「アメリアぼくをお呼び?」
「紺お願いがあるんだけど、ルシアン様が部屋にいるか調べて欲しいの。」
「いいよ〜きみの頼みなら。」
紺はそう言うと影の中に消えていって、しばらくしてから戻ってきた。
「中にいるよ王子さま。ただ、すっご〜く怯えてるみたい。」
「そうなんだ、ありがとう紺。」
原作通り。ルシアン様が暗くて悲しい過去を抱え、他の人を信用できなくなってしまった。この世界では、ルシアン様にそんな思いして欲しくなかったのに。ゲームの強制力…そんなの、信じたくなかったのに。
***
それから時間がある時には王宮を訪れる許可を貰ってルシアン様の部屋を訪れていた。しかし、一向に進展はなく、いつの間にか二年が経っていた。
「お兄様!学園に行ってもお手紙出してく出してくださいね。約束ですよ!!」
「約束だね。アメリアから貰ったこのペンで沢山書かせて貰うよ。」
二歳年上のオリバーお兄様が今日、魔法学園への入寮を迎えられた。ルシフェーヌ家の紋章が入った馬車がどんどん遠ざかって行く。私も学園に入学するまであと二年か、と思うと実感がわかない。
ケイト様もディアン様も、この前魔法研究室で出会ったレオン君もだんだんとゲームのスチル通りの見た目になってきた。ルシアン様もきっと…
ぐるぐると同じことを考えているうちに、一年経ち、二年経ち、十六歳の春がやってきた。
新品の制服に袖を通し、髪を綺麗に整えてもらう。
桜が舞う門をくぐると物語の舞台である【王立魔法学園】は目の前だった。
ゲームの本編がスタートするのは、私達の学年が一つ上がった後。二年生から編入するヒロインが登場してからだ。それまでは一人の女子生徒としてこの学園を楽しませてもらおう。
まずは、とってもモブっぽいグループに参加するところから!
内心とても失礼な意気込みだな、と思いつつも平穏な学園生活への期待を胸に、入学式へと向かうのであった。
みなさ〜ん!お久しぶりです(n回目)夜桜です!!
梅雨なのか、梅雨じゃないのか分からない天気の中、いかがお過ごしでしょうか?
作者は雨だりぃ〜と日々思っております( ´・ω・`)
今回は家族と話したり、お兄様とデートしたり、尊いを摂取するだけの回でしたね〜(ちがう)
わかってます。わかってます。作者だってルシアン様を追い込みたくて追い込んでる訳じゃないんです…
ほら、あれです、あれ。ゲームの強制力……
と、とりあえず学園入学までかけたので、これにて一章【完】とさせて頂きます!
お次は学園に移っての2章ですね〜
ここまでお付き合い頂きありがとうございます✨️
ではまた次のお話でお会いしましょう(*´︶`*)ノ