閑話(2)
気づくと私は辺り一面が真っ白な不思議な空間にいた。周りにはふわふわとシャボン玉のようなものが浮いていて、よく目を凝らして見てみると人が映っている。それがいつの光景がもよく分からないが。
そんな感じでしばらくシャボン玉を見つめていると、突然シャボン玉たちは空高くまで飛んでいった。屋根…なんてものはこの空間にはないし、壊れて消えてしまうこともないが……
『そんなに熱心に記憶の泡を見て楽しかった?』
ふとそんな声が聞こえた。
『いらっしゃいアメリア。久しぶりだね』
声の主はそう続ける。
『ぼく心配したんだよ?きみがあまりにも無防備で純粋すぎるから。もし、きみがもう目覚めないなんてことになったら…あー怖い、怖い。』
私はこの空間もこの声も知らないはずなのに、この声は私のことを知っているような口ぶりだ。
「だ、だれ?」
『ぼく?ぼくは善良な、心優しい妖精さんだよ!みきがいきなり異世界なんかに飛ばされちゃうものだからぼくのセンパイがきみを見守ってあげるようにって言われてずっときみを見てたんだ〜!』
そういう声は私の足の周りをクルクルと回っていて、黒いモヤのような姿をしていた。さっきから消えたり、現れたりしているのは影どうやらを使っているらしい。
『そんなオバケを見るような目で見ないでよ〜!!ぼくたちは実体がない生き物なの。でも、本当にオバケだとかそういうのではないよ?きみが頭の中でぼくの姿を想像してくれたら初めてその姿になれる。』
「そ、そう言われても…」
影の中を移動するモヤはそんな無茶ぶりをしてくる。想像といっても、どんな姿がいいのかなんて分からないし…『神聖ないわば、神の御使いのぼくに姿を与えられるなんてアメリアは幸運だね』とか言われても、一体どう解釈すればいいのか…?
「ちょっと待って、今なんて?」
『だから、アメリアは幸運だねって!』
「そうじゃなくって、その前」
『神聖な神の御使い?』
そう聞いた瞬間にビビットきた!
頭の中でその動物を思い浮かべる。
神社にいる神(お稲荷さん)の御使いで、日本では古くから神聖な存在だとされてきた動物。
そういえば、私が生前にやってたゲームにもそんなキャラがいたような。確かピンクで、大きなしっぽがあって、魔法みたいな力が使えて……
と少々脱線はしたが、ふんわりとしたイメージが段々と鮮明になってくる。
「想像出来たらどうするの?」
『そのまま、そのまま待ってて……』
目をつむってイメージをそのまま想像していると、次第に足元に優しい光がさしてきた気がする。
いいよと言われて目を開けると黒いモヤモヤは居なくなっていて、その代わりに目の前に淡いピンク色をして、ふわふわのしっぽがある狐が浮かんでいた。
『これがきみの想像したぼくの姿…?』
「えっと、気に入ってくれてかな?」
途中で雑念が混じってしまったため現実には存在し得ない色になってしまったが、可愛いのでありだろう。
『もふもふのふわふわで、それにとっても可愛くて気に入ったよ!これなら、ぼくの可愛さでどんな敵でも手出し出来ないね〜。』
「でも、貴方がいられるのはこの世界だけじゃないの?」
『それがなんと、アメリアがぼくの存在を認識してくれたでしょ?だから、これからはもっときみの世界に干渉できるようになったってワケ。』
どう?すごい?とでも言いたげな表情で耳をピンとたてて訴えてくる瞳にうんと言わざるを得なかった。
『とういか、これまでもぼくがきみに干渉してたからいきなり飛ばさせたこの世界でも日常生活が送れてたんだよ?ほら、疑問に思わなかったのどうして自分が日本語以外の言語の読み書きができるのかとか。』
「そう言われてみたら確かに。でもそういうのって、チート能力的な?転生特典みたいなものかと…」
『も〜!ぼくが一生懸命にアメリアに役に立とうとしてたのに気づいてなかったの?』
この狐さんは次はプンプンと怒り出してしまった。
表情とか、感情とかがコロコロと変わって見てるだけでもおもしろかわいい狐さんだ。
「そうだ、きっと素晴らし〜く頼りになる狐さんだから、きっとあリがた〜い名前もあるんだよね?是非とも教えて欲しいな〜!」
とりあえず、必殺おだて作戦だ!頑張って怒っている姿も可愛いけど、そのままにしておくのは申し訳ない。せっかく私のために色々してくれてたみたいだし。
『名前?ないよまだ。名前を付けるのもきみの大切な仕事だからね。』
「え、名前って、私ネーミングセンスなんて持ってないよ?」
この前魔法で作った鳥にと○っぴーって名前を付けてオリバーお兄様に苦笑された時の思い出が頭をよぎる。一生懸命に考えても出てきた名前がそれでは笑われても仕方がないと自分でも思うが。
「狐、狐さんでしょ?」
狐は確かお稲荷さんの化身みたいな存在のはずで、鳴き声は…
「紺?」
『こん?それってなんで?』
「ええっと、私の世界の狐はコンコンって鳴くから。」
『それだけ?……却下』
……却下された。
「じゃあ、お稲荷」
『おいなり?』
「うん。狐はお稲荷さんの使いだから。」
『それも却下。』
「そ、そんな…だからセンスなんてないって言ったのに。」
半ば涙目になりながら訴える。本当にネーミングセンスなんて備わってない私が名付けをするなんて無理な話なんだよ…!
『……分かったよ。その二択で許してあげる。』
「本当に?良かった〜!」
『きみがかなりの楽観主義者ってことは分かったから、最後に一番大切なことをしてもらうよ。』
目の前の狐さんは、浮いていたと思うと次は地面に足をついて何かの呪文らしきものを唱えた。すると、その足元に七色に輝くいかにも魔法陣らしきものが現れる。
『アメリアこの上に立って、今からぼくの言うことを復唱してね。』
狐さんの話によると今から名付けによる契約を行うそうだ。これからも今まで通りの力を使用するのに必要な契約だそうで、それを名付けという行為を元として行うとの事。
『これから結ぶ契約は、契約者が生きている場合に限り半永久的に存続するものとする。』
「これから結ぶ契約は、契約者が生きている場合に限り半永久的に存続するものとする。」
『契約者アメリアはこれからの人生をかの精霊と共に分かつものとし、かの精霊は契約者が望む限りその力を使用させるものとする。』
「契約者アメリアはこれからの人生をかの精霊と共に分かつものとし、かの精霊は契約者が望む限りその力を使用させるものとする。」
『ここにその契約を履行するものとして、かの精霊に依り代と名を贈る。』
「ここにその契約を履行するものとして、かの精霊に依り代と名を贈る。」
『さぁ、アメリアぼくに名前をちょうだい?』
狐さんはこてんと首を傾げる。
「分かりました。貴方の名前は、紺。これから沢山の経験や時には厳しい試練があるかもしれませんが、私と共に超えてくれますか?」
『はい、喜んで。アメリアと一緒ならたとえ火の中だって水の中だって余裕だよ。』
誓いの言葉を言い終えると七色に輝いていた魔法陣は輝きを失って、その代わりに私の右手の小指には小さくきらめく指輪が光っていた。その指輪には青色の宝石であるアイオアイトが嵌められていて、紺と言う名前にもピッタリだとおもった。
『おめでとう。これでアメリアはぼくの正式な主になったんだよ。その指輪は契約者と精霊を結ぶものだからなるべく肌身離さずにもっておくんだよ。』
紺が指輪に触れると空間がぐにゃりと歪んだ気がした。そして一瞬眩く光ったと思うと意識がどんどん落ちてゆく。
『少しの間のお別れだね。でも、きみが呼んでくれたらぼくはすぐに出てきてあげるからね。それと、ここで起きた事は誰にも喋っちゃダメだよ?』
「わかった」と言い終える前に意識がプツンと切れた。
目を開けると眠っていた私を抱くように少年が座っていて、朧気な記憶の中で名前を尋ねると「シオン」と名乗ってくれた。
「…ち。血出てる。」
男の子の、シオンが腕に切り傷があり、血が出ているようだった。私は持っていたハンカチで血を拭うと止血の助けになるかと思って腕に巻き付けておいた。
「あ、ありがとう…」
シオンは少し照れているのか横を向いてしまった顔がほのかに赤く染まっていた。「君はもう少し寝ててもいいよ」というシオンの声に身を任せてもう一度目を閉じる。
そこは優しい風が心地よい空間だった。
皆さん新年あけましておめでとうございます✨️
夜桜零です( * . .)"
今年も変わらずこの小説を読んで頂きありがとうございます!(*´ `*)
さて今回は、魔法使いと言えば使い魔という定石?により紺が仲間に加わる会です。前々から登場させる予定だったのですが、ようやく出できてくれました〜!
作者は声優のあゆさんで脳内再生しておりました()
駄文もここまでにして、今年も自由気ままに更新していきますのでよろしくお願いいたします。❀.*゜*・
それでは次のお話しでお会いしましょう*˙︶˙*)ノ"