第十四話 奪還
第十四話やっと完結であります⸜(* ॑ ॑* )⸝
兄さんにもらった姿各紙の魔道具をぎゅっと握りしめて、アメリアを連れ去った黒いローブを着た男を追う。この魔道具を身につけている間は所有者の気配が薄くなるといったもので、かなり希少価値の高い魔道具らしい。
男は長い廊下を進み、使用人の区画の方へとやってきた。そこから、食品運搬などに使われる荷馬車の出入り口の方へ。
その前にとても癪だが、僕一人ではどうにもできなさそうなので書き置きを【兄様へ、誘拐される予定ですから助けてください Rsian】
ドアにでも貼り付けておけば、気づいた使用人がどうにかしてくれるだろう。第一に、自国の王子の直筆サイン入りの手紙を隠蔽なんてしたら…それ相応の罰が下るなんてのは想像に容易い。
黒いローブの男はアメリアを荷馬車の後ろへ乗せると、自分は仲間が待っているのであろう運転席へと向かった。僕は気づかれないように静かに荷馬車へ乗り込んだ。
中にはアメリアの他にも3人の少年と少女がいて、身なりからどこのかの貴族の子供だと思われる。3人ともぐったりとした様子で、肩を揺すってみても起きる気配がない。睡眠薬でも飲まされたのだろうか?
「アメリア、飲める?」
目をつぶったまま起きないアメリアに僕が持っている通称“なんでも回復薬”を飲ませる。飲むと回復のためにすごい眠気が襲ってくるのが難点だが、王族御用達の魔法士が作っただけあって効果は折り紙付きだ。
しばらく走った後、荷馬車は止まった。道のせいか、馬車の性能のせいか揺れが酷かったので少し酔った。犯人達が御者の席から降りたのかもう二度と馬車が揺れ、扉が開いた。僕は体を丸めてじっと待つ。
「商品は1.2.3.4.5…?兄貴俺らが連れてきたのは4人じゃなかったですかい?」
「人1人増えたくらいで変わらんだろう。所詮はなにも出来ないチビばっかりなんだからな!それよりも口を動かす前に体を動かしやがれ。」
「うぃっす、兄貴!」
(やっぱり僕達は何かの目的で誘拐されているんだ。これまでの子供たちも…)そう思うとなんだかやるせなくて、無性に腹が立って今すぐにでも起き上がって手を出してやりたいところだった。でも、そんなことをしても今の僕じゃダメだ。兄様が見つけてくれるのを待つしかない。
じっと待っていると、手首に何かを巻かれた。気づかれないように見てみると、青色をしたヒモのようだ。僕とアメリアは同じ色、他の3人はそれぞれ赤色が2人、黄色が1人と何やらグループが分かれているようだ。
「そっちの黄色いヒモのSランクのやつは丁重に扱え。傷一つすらつけるなよ。お前らの命よりも高い値段で売れるんだからな。赤いヒモのAランクのやつもまずまずの見た目だ。見栄を張りたい成り上がりが好んで買ってくれるだろうな。」
「あーにき!こっちの青いヤツはどうしますか?」
青と言えば僕とアメリアが腕に巻かれたヒモの色か。こいつらの会話からランク付けされているのはわかったが、聞いていて気持ちのいいものじゃない。しかし、今は我慢して聞き流す。それくらい王族にとって容易いことだから……
「青のBランクのやつは檻にでもぶち込んでおけ。茶髪と黒髪なんで見栄えもしない、ただの奴隷だ。第一黒髪なんて汚らわしい色をした女誰が好んで買うものか。」
前言撤回。
こいつだけは絶対に許さない。
「……るな………触るな…僕のアメリアに指一本触れるな!!」
「ハハッ!なんだ〜このガキ。起きてやがったのか?僕のアメリアに指一本触れるなだって?かっこよくて、笑わせるセリフ吐いてやがるぜ!なぁ兄弟?」
「あぁ、そうだなぁ兄弟!眠った姫を助ける王子サマ気取りとは笑わせてくれるぜ!」
王子サマ気取りじゃなくて本当に王子なんだが、その話は一旦置いておいて、こんな下等で下劣な誘拐犯達がアメリアに触れて穢されるなんて考えたくもない。
僕は隠し持っていた剣を抜いて構える。もう一度姿隠しの魔道具を強く握りしめる。こんな道具に頼らないと大人3人を相手できない自分が恨ましいが今はそんなことを言っている場合ではない。
「はっ!消えた!?」
「そ、そんなわけねーだろ、消えるたってまだ魔法も使えないガキだぞ!」
相手に気づかれないことを利用して下っ端二人を片付けていく。何度か攻撃したらパニックと恐怖でもう戦えない状況になっていた。二人とも意気消沈したのか今は端の方で蹲っている。
「へぇ、消える魔法ね…だかなガキ足音までは消せてないぜ。」
僕が敵の兄貴と呼ばれていた男に切りかかろうとした瞬間、男が剣を振り下ろしてきた。すんでのところで右に避けると、僕が元いた場所には剣が刺さって地面に砂埃が舞っていた。
「ハズレ、か。いい線いったと思ったんだけどな。」
その後も、男に切りかかろうとするとものすごい速さで剣が飛んで来て、それをギリギリで躱すという攻防が続いていた。
あんな攻撃一度でも当たったら、タダでは帰れない。そう思った矢先
パリンッ
ガラスが割れるような音がした。いや、実際には姿隠しの魔道師に付いている魔法石が割れた音。攻撃を躱そうと避けた瞬間足がもつれ、転んでしまった。
もう魔道師としての存在が出来なくなった魔法石は、次第に色褪せていき完全に使えなくなった。
「よお、王子サマ気取りのガキんちょさんよ。やっと正々堂々やり合えるじゃないか。」
「できるならやってみろ。僕はアメリアを助けにここに来たんだ。口先だけじゃないと証明してやる。」
飛んでくる剣をひたすら避ける。体格、技術、経験ともに僕一人じゃ勝ち目がない。せめて兄様たちの応援が来たら…それまで耐えれたら……
そんな希望的観測とと裏腹に、いつの間にか忌々しき誘拐犯のリーダーがアメリアを背にする形で荷馬車の前に立っていた。
「そろそろお疲れか王子サマ?残念だったな好きな奴一人守ずに散っていくなんて王子サマすら失格なんじやねぇか?」
「うるさい…」
「どうせ売っても買い手がつかないんだ、そんなに可愛がる女の子とやら優しい俺が引き取ってやろうじゃないか。」
目の前にいるアメリアすらも守れない悔しさ、絶望、不甲斐なさ。誰か、誰でもいいあの子を守って……
そう強く願った瞬間体のどこからか不思議と力が湧き上がって来たような気がして、踏み込んだ足が風の如く空を切り、男を追い越しあの子の傍に辿り着いた。
そのまま口が勝手に動くのに任せて詠唱を開始する。
──風の精霊よ我に力を貸したまえ。
全てを斬り、全てを守る嵐となれ──
ブワッと暴風が巻き起こったかと思えば、次第に風は凪いでいった。今、僕とアメリアは台風の目の中にいるようだ。暴風が起こった一瞬今まで戦っていた相手の断末魔が聞こえたが、今は全くの無音の空間。あれが息絶えたのかそれともこの嵐が外の音をシャットアウトしているのかは分からない。
未だ眠ったままのアメリアを膝に寝かせ、僕も馬車の壁に寄りかかる。この綺麗な、まるで星空を写しどったかのような綺麗な黒い髪を縁起が悪いなんて目がおかしいのだろうか?
アメリアの髪を撫で、おでこに顔を近ずけ……
「……あ、えっと、お、おはようございま、す?」
「ちが、ちがうんだ、これは決して変なことを考えていた訳ではなく、熱、そうだ熱を測ろうと思って、君が寝ている間に解毒薬といえど、普段なら飲まないような薬を飲ませてしまったから。だから……」
焦って僕は何を言っているのだろう?せっかく紳士的でいようと思っていたのに、こんなのじゃかっこがつかないじゃないか……
「つまり、私を助けてくれたってことですか?…ふふっありがとうございます。ところで、恩人様お名前を伺っても?」
「……うん。僕の名前は、」
変装しているのに正直に名前を答えてはダメだ。それに第一こんなかっこ悪い奴だったと思われては面目が立たない。僕はうんと考えたあと“シオン”と答えた。
皆さんお久しぶりです〜夜桜零でございます✿
アメリアsideルシアンsideと続いて、最後はルシアン様で締めさせていただきました✨️
いや〜長かったですね、誰がこんなに長くしろと言ったのか?
話は変わりまして、誘拐という一大事件を経てルシアン様の魔法の覚醒まで書かせていただきました!この後はどーなるんでしょうね?ゲーム通りならルシアン闇堕ち期に入る予定なのですが……?
とりあえず、アメリアちゃんが眠っていた間の話を次は投稿したいと思います☺️
今回もお読み頂きありがとうございました〜!
それでは次のお話で*˙︶˙*)ノ"