第十四話 逃亡と
魔法の研究発表会に参加出来るのは各国の王族と招待状を貰った一部の参加者のみ
まさかアメリアとルシフェーヌ侯爵が来ているとは…
多方、兄様辺りがアメリアが魔法に興味があるのを知っていて、招待状を送り付けでもしたのだろうけど。はっきり言って、今はいや、アメリアとはもう関わらずに生きていこうと思っていたのに。
僕の招待を断れなかったように、兄様の招待も断れなかったのだろう。兄弟揃って同じことをするなんて、本当に情けなく思う。
研究発表も無事に終わり、発表者への質問タイムへと入った。興味がある発表としては声を録音出来る魔道具とか、あとは任意の魔法を操れるペンダントとかか?そのペンダントを紹介してたのは確かレオン・シュタイン…僕の一つ下。
レオンを探そうと会場をキョロキョロ見回していると、一人の女の子と目があった。
「アメリア……」
その呟きは会場の空気に呑まれて消えていったが、いてもたってもいられずにこの場所から離れようと後ろのドアへと向かった。
「待ってください!」
後ろでアメリアが誰かを呼ぶ声がする。…本当に僕以外の誰かなら良かったが、彼女はきっと、いいや、絶対に僕に向かって言葉を投げているのだろう。
振り向いて笑ってあげたい気持ちをどうにか押し殺して、ドアに手をかける。
「待ってください、ルシアン様!」
「……なんで」
なんでアメリアが僕の名前を、僕を呼び止めた?
おかしい、絶対にそんなことは出来ないはずだ。だって僕は明るいホワイトシルバーの髪も、王族特有のターコイズブルーの瞳だって今は変化させてるのだから。きっと思い違いだよ……
僕は、足早に逃げるように会場を後にした。少し風にでも当たろう。そうすれば頭も回るはずだ。
***
大広間を抜けてバルコニーへと出ると、あの賑わいが嘘だったかのように人気がなく静かで、ただただ穏やかな空間が広がっていた。
あの日、僕はもうアメリアとは関わらないようにしようって決めたんだ。そろそろ潮時だって、そう思った。僕にはまだ内緒にしてるみたいだけど、他の国の王族からの縁談なんかも来ていると噂で聞いた。
ふと、そんなことを考えながら空をぼーっと眺めていると、こちらに向かって足音が近づいて来ているのが聞こえた。ヒールの音とショートブーツの音からして、会場から抜け出してきた恋人とかかだろうか?
まもなくしてドアが少し開かれた。入れ違いに会場に戻ろうと振り返ると、バタリと倒れ込む女の子。
「…………アメ、リア…!」
咄嗟のことで思ったようには声が出なかった。
アメリアはそのまま隣に居た男に姫抱きにして連れ去られる。この前のメガネの婚約者ではなく、黒いローブを身にまとった怪しげな男に。
14話まだ続きます→
(メガネの婚約者=オリバー兄さんのことです)