第十三話 魔法の発表会!
『ルシアン・ノア・クレイヴィル様』
久しぶりに書いた日本語、というかカタカナ。
こちらの世界に来てからは英語とも似ても似つかない文字を何故かスラスラと書けるようになっているし、日本語とは程遠い文字をスラスラと読めている。
日本語で書かれているものと言えば、私が転生してすぐに書いたゲームの覚え書きのみ。ほんとに久しぶりに日本語で文字を書いたせいで少し書くのが下手になった気がする。
一番綺麗に書けたカードを半分に折って、また半分に折ってこの前買ったペンダントの中にしまう。これはけ、決してあの店主の言っていた噂を信じたからとかそういう訳ではないが、ゲームの世界だし、魔道具とかも存在するから、もしかしたらって思っただけで…
それはともかく、ほんとに綺麗なペンダントだ。見ているだけで吸い込まれそう……
トントントン
「アメリア、私だ。渡したい物があるのだか、開けて貰えるかな?」
「どうしましたか、お父様?」
「君に招待状だ。受け取ってくれるかい?」
「……はい、今度はどこのご令嬢のお茶会ですか?」
お父様は招待状を渡すと、中身は開けてからのお楽しみだと言い残して去っていった。
私は引き出しの中にあるペーパーナイフを取り出し、封を切ろうとすると、突然封筒かふわふわと浮かび上がった。怖くて後ずさるとブァッと炎が封筒を包み込む。そして、バチバチと静電気のような物が走って、炎にぶつかるとパンッと音を立てて花火のように散っていった。その後はキラキラとした水が燃えた封筒の中に入っていたカードを洗い流して、ヒラヒラと上から舞った花びらが真っ白なカードを綺麗に彩った。
「す、すごかった……魔法ってあんなことができるんだ!」
この世界の五大魔法全てを組み込んだ魔法式を封筒に忍ばせたのだろうか?しかも、発動する直前まで魔法がかけられていることに全く気が付かなかった。私も、こんなすごい魔法を扱えるようになりたい!
そんな興奮冷めやらぬまま手元に残った招待カードを見てみると、【魔法研究発表会へのご招待】と大きな文字で書いてあった。中身を要約すると、いつかのオルゴールのお礼に四年に一度開催される魔法研究発表会へ招待しますという内容だった。
四年に一度だなんて、前世のオ〇ンピックみたいだ。いや、研究発表会ならどちらかと、日本でも開催されるという万〇博覧会のほうが近いだろか?
そんなことはどうでも良くて、本物の魔法が見られるなんてとても楽しみだ。当日は王宮のホールを貸し切って開催するらしく、国内外から魔法に秀でたお偉いさん達がたくさん集まるのだそう。そういえば、そんなシーンが、ゲームにもあったような…
***
あれから数週間。待ちに待った魔法研究発表会の開催日だ。この発表会は一週間にも及んで開催され、今日は二日目。午後からは魔法を研究している人々による発表というビックイベントがまっている!
「アメリアそろそろ準備が出来たかい?」
「ええ、お父様。準備万端です!」
夜会で着るような豪華なドレスではなく、動きやすいドレスを着て、髪は邪魔にならないように編み込んで貰っている。私の得意な水魔法をイメージした水色と青のグラデーションが綺麗なドレスだ。それに、例のペンダントともよくあっている。
お母様とお兄様に見送って貰って、馬車に乗り込む。ルシフェーヌ家から王宮まではそれほど遠い訳ではないが、楽しみで早く着いて欲しいと浮き足立ってしまう。
***
「お集まりの紳士、淑女の皆々様。本日は我がブルーム王国の魔法研究発表会にご参加頂き誠にありがとうございます。二日目となりました本発表会は、ビックイベントである国内外の魔法研究員による発表会を予定しております故、存分にお楽しみください。」
そんな挨拶で始まった発表会。王宮で開催されるともあって、とても広い会場に個性豊かな魔道具が並んでいる。実際に使用出来るものもあって、声を拡張するといった機能的なものから、幸運を呼び寄せるブローチなど少し胡散臭いものまで。
……あの魔道具ゲームで見たやつだ。こんなところで本物に出会えるなんて!後でお父様にお願いして、全種類コンプリートしたい!リアルな魔道具に出会えただけで今日来た甲斐があったよ〜!!
「十分楽しめているようだね、アメリア。」
「はいお父様!今日は招待して頂きありがとうございました。」
「それなら良かった。だが、私は入場券を貰うので精一杯でね。研究発表会のほうは、王太子殿下直々に私とアメリアにと席を用意してくれたんだ。」
「ディアン殿下が?」
「あぁ、アメリアは魔法が好きだろうからとね。いい時間だ、そろそろ発表会場へ向かおうか。」
話によると、各国の要人つまりは、怪我のひとつでもつけたら最悪の場合国際問題になりかねない人々が集まっている会場に素性の分からない人を寄せ付けないための打開策ということらしい。二日目がビックイベントと呼ばれるのはただ単に舞台発表があるからだけでなく、運営側にとっての山場という意味合いも強いのかもしれない。頑張れ運営さん!
先程の大ホールより少しコンパクトになった小ホールには、前方には舞台が設置されていて、12席×10列の座り心地のとても良さそうな椅子が並んでいる。私たちの席はE-7番。ちょうど真ん中位の位置だ。
発表の時間になると、一人一人舞台上にたって自分の魔道具の説明を始める。完成品もあったが、研究途中の未完成の物が多かった。そういうものを発表している学者さん達は、今目の前にいるお偉いさんの中から自分の研究を後援してくれるパトロンを探しているのがほとんどだとか。
次の発表者が舞台に上がる。すると、ザワザワと会場がどよめく。
「次の発表者とは、見るからに子供ではないか。」
「どこの国の子かは知らんが、ここは子供が遊びにくる場所ではないぞ。」
「衛兵、その子供をつまみ出せ。」
「全くブルーム王国では子供ごときに侵入を許すほどの警備体制しか取れんのか?」
黒いマントを身にまとった少年?男の子?のフードの隙間には子供らしい顔が隠れていた。身長は私と変わらないか、少し低いくらいで、年はそう離れていないように見える。そんな子がする発表とは一体どのようなものなのだろうか?
「はぁ、これだから頭の固いお偉いさんは……」
「い、今わしの事を頭の固いと言っ」
パチンッ
「さぁ、なんのことでしょうか?(こんな人達に評価される魔道具が可哀想だ。)」
男の子がパチンッと指を鳴らすと、当たりがシーンと静まり返った。正確に言えば、さっきまで騒いでいた人達は誰一人として声を出せなくなっただろうか。それと、最後はなんと言ったか聞き取れなかったが、この子は臆せずに人に物を言うタイプなんだ。
「改めて、新しい魔道具の発表をするためにシュタイン辺境伯爵家から来ました、レオン・シュタインです。以後お見知りおきを。」
着ていたマントを脱ぐとその子は恭しく一礼をした。貴族、さらには国外の貴族とも接する機会の多い辺境伯家の子と言われて納得の礼だった。
肩ほどまである髪をハーフアップに纏めて縛っている髪に、この名前や学園入学前にも関わらず魔法を使いこなし、魔道具の発表までする少年……この特徴は、ゲームの、いちこいの攻略対象以外に居るだろうか?いや、居ない!
「本日は組み合わせることによって起こる魔法の可能性についてお話させていただきます。」
その台詞から始まった発表では火、雷、風、土、水の三属性魔法を組み合わせてより強力な効果を得ると言ったもので、ゲームの作中でレオンが使っていた攻撃魔法と同じエフェクトがかかっていた。
一般的に魔法は攻撃属性と呼ばれる火、雷。中和属性と呼ばれる風、土。回復属性と呼ばれる水の三属性五魔法と呼ばれており、一人につき一つの適正魔法が存在している。適正がない魔法を全く使えないということもないのだが、属性が反発し合って使えるのもせいぜい日常魔法程の低級魔法のみである。
もっともこのレオン・シュタインにこんな常識が通用することはないのだが……
「そんな有り得ん…三属性の魔法を同時に使役するだなんて。」
「そ、そうだ。きっと遠隔魔法で他の奴が操っているに違いない!」
またまた会場中がさわがしくなる。いや、そうなるのも無理ないというか…私の時はゲームだからと割り切っていたから「すご〜い!」くらいで済んでいたけど、いざ現実になると疑いたくなる気持ちも分かる。とてもとっても分かる。
「有り得なくなんてございません。……僕と、僕の魔法に不可能なんてありませんから。」
で、でた名台詞!主人公とレオンが魔物討伐で一緒になるイベントで、窮地に立たされ諦めそうになった主人公に対して言ったセリフだ。そこから始まる二人の息の合った共闘は作中でも人気のシーンで、レオンファンに厚く支持されている。
「と言ってもそんなことが出来る人なんてひと握りもいないでしょう。ですから、今回僕が持参した魔道具の出番ということです。」
と言ってレオンが取り出したのは赤、紫、緑、黄、青に輝くペンダントだった。これ見た事あるやつ!というか、ゲーム中で何度もお世話になったやつだ!
これは予め込められた魔法が使えるようになるというペンダントで、いわゆる“最重要”お助けアイテムだ。序盤は魔法がまだ上手に扱えない主人公のお守り代わりに、ゲーム終盤ではレオンの言ったように二属性の魔法を同時に扱うために使われていた。
ゲームの世界恐るべし。その後の発表も私は釘つげになって聞いていた。集中しすぎて、後でお父様に心配されたくらいに。
***
実に実りのある発表会だった。全ての発表が終わったのでこの後は自由に研究者の元へ質問やら、ビジネスの話をできる時間なのだが…レオンを探していると、ふと懐かしい雰囲気を感じた。ハットして振り返ると、私と同じくらいの年の少年がいた。
声をかけようと近づくと…その少年は踵を返して歩いていった。それよりも逃げられたというのが正しいのか?
「まってください!」
声をかけてもこの子は止まってくれることもなく、部屋の扉に手をかける。この雰囲気知ってる。絶対に知ってるのに、分からない……いや、違う。
「まってくださいルシアン様!!」
少年は驚いたように目を見開いて、しかしまたすぐに歩き出してしまった。
皆様〜お久しぶりです、夜桜です( . .)"✨️
お盆が、お盆休みが明けてしまいました(꒪д꒪II
日本にももっと休日があればいいのに…!
それはそれとして、今回は魔法回です!
四年に一度の発表会つまり、魔法の祭典。初登場のレオン・シュタイン君も大活躍(?)のお話でした。
今回一番楽しかったのはガヤのお貴族様の台詞を、書くことなんですけどね(,,- -,,)
珍しく長いお話にお付き合い頂きありがとうございました!
それでは次のお話でお会いしましょう*˙︶˙*)ノ"




