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第十話 婚約式とパートナー

 

 私は困惑した。それはもうとても。


「婚約披露パーティにパートナー必須なんて聞いてないんですけど!!」


 しかも一ヶ月半後ですって?ドレスや靴、アクセサリーなんかは今から新調したら間に合うけど、パートナーを新調なんて真似出来ないし……



 ***



 一ヶ月半後……


「お手をどうぞ、アメリア様。」

「ありがとうございます、オリバー様。」


 煌びやかなシャンデリアにオーケストラの演奏による優雅な音楽が流れる王宮大ホール。ここに来たのは例のお妃様主催のお茶会以来であったか?


 このパーティではデビュタント前、つまり16歳を迎える前の子供でも出席を許されているパーティなのである。ここにいるのは辺境伯爵家以上の身分かつ、王家と縁深く招待状が送られてきた人のだけなので子供も参加出来るのは納得出来るような気がする。


 ちなみに、このパーティーに出席していない人は後ほど行われる王都を回るお披露目パレードによって発表が行われるそうだ。


「アメリア様、先程から難しい顔をしておいでですが、体調が優れない様なら少し休憩にいたしましょうか?第一王子(本日の主役)がいらっしゃるのももう少し先のようですが?」

「い、いえ、大丈夫ですよ。オリバー様こそ私にお構いなく飲み物や軽食など取ってきていただいてもよろしいのですよ?」

「ですが、俺…じゃなくて、私はアメリア様を守ることが一番大切な役目ですのでお傍を離れる訳にはまいりません。」


 先程から私のパートナーとして完璧なエスコートをしてくれているこの青年(イケメン)はオリバー・ルシフェーヌ。

 ルシフェーヌ侯爵家の分家であるルシエル子爵家の長男であり、私から見たら一応はとこに当たるらしい。というのも、最後の会ったのは一昨年の夏らしく、私が覚えてないのも仕方ないと思う……



 ***



 オリバーさんが私のパートナーとしてこのパーティに参加することが決まったのは一ヶ月程前のことで、顔合わせをしたのもそのくらいの時期だった。


 ある日「大切な話がある」とお父様に呼ばれ応接室に行ってみると、同じくらいの年頃の男の子とその両親らしい人が座って話をしていた。その人たちは私に気がつくと立ち上がってお辞儀をする。

 同じくらいの年頃だと思った男の子は私より一歳年上らしい。


「初めまして、いや、久しぶりかな?アメリア嬢。私はルシエル子爵家当主のチャールズ・ルシエル。隣が妻のエミリー、そして息子のオリバーだ。」


 オリバーと呼ばれた少年は深い緑色の瞳にオリーブ色の少しくせっ毛なふわふわヘアーの少年であった。

 そんな子が親戚にいたんだ〜なんて考ええながら私も挨拶を返す。お互いが椅子に座ったのを確認すると、お母様が話を切り出してきた。


「実はねアメリア、この家に家族が増えることになったよ。」

「そうなんですか?お父様もお母様もおめでとうございます!私もお姉様になる日が来るなんて……!」

「えぇっとね、アメリア。誤解してるかもしれないから言い直すけれど、貴方がなるのは妹であって、姉では無いのよ?」

「……お母様、話が全く見えないのですが。」



 ***



 今思い出しても突然のこと過ぎて実感が全く湧いて来ないが、色々あって、私は妹となった。いずれはオリバーさんに家を継いでもらおうと思っていたのが前倒しになったらしい。

 いきなり家族だと言われてもどう接すればいいかなんて全然分からないし、初めのうちは目すら合わせられなかったのに、今は名前で呼びあっているなんて奇跡のようだ。依然お互い敬語は取れないが。


「アメリア様、そろそろ国王陛下と皇后陛下、第二王子殿下がいらっしゃるそうですよ。私達も並びましょうか。」

「えぇ、そうですね。オリバー様」


 しばらくすると、国王陛下と皇后陛下、そして第二王子であるルシアン様が入場してきた。俗にいう王子様らしい服装に身を包んだルシアン様はかわいくて、かっこよくて......

 一眼レフカメラなんてものを今持っていたらフィルムが無くなるまで写真を撮り続けていただろう。


 なんてことを思いながら、ルシアン様をじーっと見つめていると、不意に目があった気がした。私の思い過ごしかもしれないけれど、にこっと笑った彼が、いつものわくわくと魔法の話をしているときのような彼に見えた。



「お集まりの紳士淑女の皆、皆様本日の主役であらせられる我が国の第一王子殿下とその婚約者様が入場なされます。」


 そんな言葉の後に、軽やかなトランペットの音で、ファンファーレが演奏される。演奏が一段落した後、ディアン殿下とケイト様が仲睦まじそうに腕を組んで入場してきた。

 まるで結婚式を思わせるような上品な白いタキシードに身を包んだディアン様と、白を基調とし、金糸を使ったレースをふんだんにあしらったドレスに身を包んだケイト様は誰がどう見ても完璧なお姫様そのものだった。


「会場の皆さん今日は僕たちの婚約パーティーに集まっていただきありがとうございます。短い時間ではありますが、どうぞお楽しみください。」


 そんな挨拶でパーティーが始まった。

 ゆったりとしたリズムで演奏されたワルツが会場にこだまする。中央で踊りだした主役二人は、お手本のような美しい踊りをしていた。


 そこに一人、また一人と加わっていく。


「アメリア様、僕とも一曲お願いできますか?」

「えぇ、喜んで。」



 相手の目をしっかり見て、姿勢正しく、どんな時でも笑顔で、お母様がいつも口にしている言葉。

 初めは息が合わずにペースが乱れて、乱されてばかりだったワルツも約1ヶ月にも渡る猛特訓のおかげで大分様になってきた。


 一曲、二曲と踊ってお辞儀をする。舞踏会のマナー上同じ人と踊れるのは三曲までだ。ほとんどの場合婚約者やパートナーなら三曲、家族や特に親しい友人なら二曲、その他な一曲と暗黙の了解的なものに従っている。


 壁際で休憩していると三曲目のダンスが終わり、用意された席に戻ろうとするディアン殿下とケイト様。そして、それを見てそわそわしだした他の招待客。

 私もオリバー様と一緒にケイト様から渡された招待状を持って、お祝いの一言を送るために既にできていた行列にならんだ。



「この度はご婚約おめでとうございます。ディアン王子殿下、ローゼス公爵令嬢様。」

「私たちルシフェーヌ侯爵家よりも最大限のお祝いの言葉を送らせていただきます。」


 私とオリバー様二人揃ってカーテシーとボウ・アンド・スクレープをする。


「顔を上げてください、ルシフェーヌ侯爵子息様、侯爵令嬢様。この度は私たちの出席パーティに参加いただきありがとうございます。どうぞ楽しんで行ってください。」

「わたくしからもお礼を。改めて来てくれてありがとうアメリア。それと…?」

「殿下もローゼス様もお気遣いありがとうございます。こちらは、私の義兄のオリバー・ルシフェーヌでございます。」

「お初にお目にかかります。先月ルシフェーヌ侯爵家に迎え入れていただきました、オリバーと申します。以後お見知り置きください。」


 私がオリバー様のことを説明すると、ディアン殿下は何故か少しほっとした顔を、ケイト様は何故か少し落胆した顔をしていた。二人ともオリバー様に何があるって言うんだ?


 う〜んと頭を悩ませていると、ディアン殿下が少しこちらへと手招きをしたので顔を寄せる。


「(アメリア嬢が知らない男を連れていたからってどこかの王子様が落ち込んでたよ。元気付けにでも行ってあげたら?)」

「(どこかの王子って…)」


 さぁ、誰のことだろうね?というような意味ありげな笑みを浮かべるディアン殿下。ケイト様はというと、オリバー様とお話しているせいか全然気づく素振りが見られない。わたくしがあなたのパートナーを見極めてあげるわ。みたいな発言は案外本当のことだったらしい。


「ルシフェーヌ侯爵令嬢、最後にひとつお願いが。このホールの奥にある休憩室にとあるものを忘れてしまって…扉の前には近衛兵達がいますが、私の使いだと言えば通してくれるはずです。取りに行くようにお願い出来ますか?」

「はい。殿下のお願いとあらば謹んでお受けいたします。」

「ありがとうございます。もう一つ、それはとても繊細なので部屋に入る時は一人だけでお願いしたい。」


 ディアン殿下とオリバー様の間てアイコンタクトらしきものが行われる。要するに、オリバー様は私を送って行って扉の前で待機しておけと言っているのだろう。



 そんなことで、このパーティーの最大のイベントである二人への挨拶は無事終了したのだった。



 ***



 トントントン


「……」

「失礼します。あの、誰かいらっしゃいますか〜?」

「その声、もしかしてだけど…アメリア?」

「ルシアン…様?どうしてこんな所に?」

「アメリアこそなんでこんな……なるほど、」


 とりあえず座りなよとルシアン様の前の椅子をさされる。お茶をいれようとしてくれたが、さすがに断らせてもらった。そんなことを王族の方にしてもらうなんて忍びない。


 机に乗っているお菓子や軽食たちは、舞踏会の会場から貰って来たものらしく、よく二人でお茶会をする時に並ぶもののほかにも可愛らしいバラをかたどったものなども用意されていた。

 きっと、ケイト様の家名に因んで作られたお菓子なんだろうと容易に想像ができる。


「それで、どーせどこかの王太子にでも僕の場所を教えて貰ったんだろうけど、パートナーも置いてなんでアメリアがここに来てるの?」

「私はディアン殿下に忘れ物があるから取って来て欲しいと言われたから来ただけで、ルシアン様がいらっしゃるとは本当に知らなかったのです。」


 話によるとここはルシアン様のための前室だったらしく、普通は来てもいい場所ではなかったらしい。ディアン殿下が行けと言ったから来たのに、これではいつお縄にかけられても不思議じゃないじゃないか!



「立派な、僕よりも大人なパートナーが居るでしょ?アメリアも僕と言えども、婚約者以外の男性と一緒にいたなんて知られたら人聞きが悪いよ。」

「でも……」

「兄様には忘れ物なんてなかった。王太子ならもっと周りを見てから発言しろって伝えといて。」



「じゃあね、アメリア。バイバイ。」



 ルシアン様が静かな声で誰かの名前を呼ぶと、部屋のドアが開いて、外から近衛兵さんが入ってくる。部屋の外までエスコートされて、外に出ると待ってくれていたオリバー様と交代する。


 いつもと違う、じゃあねとバイバイ。いつもならまたねって微笑んでくれるのに……


 なんだか視界がぼやける。音が遠ざかる。

 オリバー様が何が言ってくれているみたいだけど、全然聞こえないや。

 でも、家に帰るまでは、馬車に乗るまではしっかり淑女らしい振る舞いをしないと。

 その前にディアン殿下に伝言を伝えて……


 ズキッ


 心做しか胸が痛い気がする。

 きっと大好きだった推しに拒絶されたからなんだ。そう、拒絶。あくまでルシアン様は私の大好きで大切な推しなんだから、ここはゲームの世界で、私はヒロインでも悪役令嬢でもないただのお助けキャラ。きっと、攻略対象と深く関わりすぎたのがダメだったんだ。


「あーあ、全部リセット出来たらいいのに。」



 そんな現実味のない独り言は口に出したのか、出してないのかも分からないまま空に消え、気づいた時には自室のベットの上だった。

 お母様には昨日の社交は完璧だったと大袈裟に思えるくらい褒めてもらったが、如何せんあの後の記憶が抜け落ちてしまっているのでどうにも喜べない。


 ケイト様の二着目のドレスの色も、テーブルに並べられていた豪華の料理も昨日踊ったダンスの曲も。ただ一つだけ。ルシアン様が見せた別れ際の切なそうな顔だけは忘れたくても忘れられなかった。


皆さんこんばんは!夜桜零です(◍´꒳`◍)

待ちに待ったゴールデンウィークでごさいますね✨️

私は休みの日一生ゲームしているので、危機感持った方がいいと叱ってくれる人は常時募集中です……


ところで、ですよ!

・ディアン殿下とケイト様の婚約式!

・アメリアのパートナーを探せ!

・嫉妬……そんなのしてませんけど!

の三本立てで今回はお送り致しました(๑•̀ㅂ•́)و✧

不穏ですね本当に不穏。作者は胸を痛めながら書きました…ほんとに不穏は良くない!!(大声)


そんなところで、長い後書きにも付き合って頂きありがとうございました( . .)"

それでは、次のお話でお会いしましょう*˙︶˙*)ノ"

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