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第一話 想起

 煌びやかなドレスに身を包んだ貴族の子女達が蔓延るパーティー、もとい現王のお妃様主催のこのお茶会は、この国の第一王子並びに第二王子の婚約者を決めるパーティーである。


 このパーティーには伯爵家以上の身分である子女達が集められて、そのうちの一人である私、アメリア・ラスフェーヌはラスフェーヌ侯爵家の一人娘として参加していた。


 つらつらと述べられていくお世辞や、自分の自慢話。それに耐える王子たちも顔には出さないものの、そろそろ限界が近いだろう。誰もが自分こそは王子に取り入ろうとしている中、前世の記憶をつい先程取り戻してしまった私はもうそんな気も起きなくなってしまった。


 それはいわゆる生前の記憶


 厳密に言えば今も生きていることは確かなのだか、その実感が持てないのはここがゲームの世界だと気づいてしまったからだ。



 ***



『ストロベリー・ナイツ』

 通称 苺恋いちこい

 主人公であるヒロインが貴族の養子となり、魔法学園に入学してきたことから始まるこのゲームはよくある乙女ゲーである。

 攻略対象は四人+隠しキャラ一人の合計五人で、

 それぞれノーマル、ハッピー、バッドで分けられたシナリオが十五個+特殊シナリオというものを合わせて合計十八個ある。


 その当時一番仲が良かった友達とあれやこれやと全ルート攻略していたのは懐かしい思い出である。中でも私の最推し兼ゲームにおける隠しキャラである第二王子、ルシアン・ノア・クレイヴィルのルートは二週、いや、三週はしていたと思う。



 ***



 そんなことを考えていたら、私が王子たちに挨拶する番がすぐそこまで回って来ていた。


「皇后陛下並びに、王子殿下本日はこの素晴らしいパーティーにお呼び頂き誠にありがとうございます。ラスフェーヌ侯爵家から参りました、アメリア・ラスフェーヌでございます。」

「顔をお上げになって。本日は短い時間だけどいい交流の場として楽しんでくださいね。」

「暖かいお言葉をありがとうございます、皇后陛下。私からは手短に王子殿下へプレゼントをしたいのですが、よろしいでしょうか?」


 そう言うと、お妃様が頷いたのを確認してひとつのオルゴールを取り出す。鍵を使ってネジを回すと、綺麗なメロディと共に水魔法によってワルツを踊る幻影が作り出された。


 幻影たちは楽しそうに、それでもって優雅にオルゴール三巻き分踊り終えたあとは音楽がフェードアウトしていくのと同時に静かに散っていった。静かになったオルゴールが手元に帰ってくると、これが私の魅せ方だと綺麗な一礼をして会場の人の中に溶けていった。



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