屋根裏のおふだが隔てる出会いと別れ
リハビリ中
久しぶりに書いてみました。
「じいさん亡くなったって…」
あまりに唐突で、直ぐには理解できなかった。
病院でじいちゃんの遺体を見た時、あまりの事に頭が真っ白になった。
大好きだったじいちゃんが死んだ。
心が千々に乱れ、頭が働かない。
そんな状態でも時間は止まらない。
通夜の時間が終わり、葬式の時間も通り過ぎていく。
初七日を過ぎても心は乱れたまま淡々と日々が過ぎ、49日の法要も恙なく終わりを迎えた。
「とりあえず一区切りついたし、お前もそろそろ立ち直らんとな。
俺は暫く忙しいから、お前が先にじいさん家に行って遺品整理を進めておいてくれ」
親父はそう言って俺に鍵と交通費を握らせた。
これ以上、先延ばしにすることも難しい。
俺はじいちゃんの家の鍵を開けて玄関に入る。
「お邪魔します」
「は~い。あら、ケンちゃん!いらっしゃい。遅かったわね」
俺を見てばあちゃんが笑顔になる。俺も釣られて笑顔を浮かべる。
「ばあちゃん、線香あげていい?」
「いいわよ」
ばあちゃんの手招きに応じて仏壇の前まで来ると持参した蝋燭に火をつけて線香をあげる。
暫く手を合わせるとばあちゃんが声をかけてくる。
「ケンちゃん。おじいちゃんとの約束、お願いね」
「やらないとダメかな?」
泣きそうな俺の顔を見てばあちゃんは優しく言う。
「ケンちゃんにしかお願いできないの」
俺は屋根裏部屋へと入り、柱に張り付いている御札を見付け、震える手で御札引っ張ると、御札は破れる事なくきれいに剥がれた。
俺は仏間に戻るとばあちゃんに見せる。
「これ?」
「そうそう、それよ」
そう言うとばあちゃんはお札に手を合わせる。
「それじゃお願い」
「…」
「ケンちゃん、お願いよ!」
泣きそうな顔で睨んでくるばあちゃんに俺は負けを悟る。
「…わかったよ」
そう言って俺はお札を燃やす。
御札が燃え尽きると、ばあちゃんが涙を流した。
「ようやく逝けるわ。全く、あなた。迎えに来るのが遅いわよ」
そう言って暫く虚空を見つめるばあちゃんは、泣きながら笑っていた。
「ありがとねケンちゃん」
「ありがとう」
祖父母の幸せそうな声が聞こえた。
そう思った時には、ばあちゃんの姿は消えていた。
「二人ともズルいよ…」
俺は祖父母を思い静かに泣いた。