表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/49

縮まらない、距離 2

 あれから後悔が付き纏っていた。


 やはり彼女には、俺の瞳が(あか)に視えていた様だ。

 それがわかり、俺は思わず声を荒らげて、彼女に酷いことを言ってしまった。


 あの日から、彼女に会っても顔が見れなかった。



「弦太ーー。 ひなたちゃん、こっち見てるぞ」

「あぁ、知ってる」

「何だよ。 声かけてあげないの?」

「これ以上関わるのは良くない」

「……まぁお前がそれでいいなら、ね」



 一葉は何か気づいたのか、それ以上は聞いてこなか

った。



 俺の瞳を、見られたくなかった。

 気づかないでいて欲しかった。



 『関わるな』と言ったあの時、自分の都合ばかりで、彼女の気持ちまで、汲み取る余裕がなくなっていた。


 怒っているだろうか。

 怯えているだろうか。


 ただ笑った顔が見たいのに。


 最後に見た、彼女の悲しそうな顔が、なかなか頭から離れなかった。

 

 もう、胸の奥がぐしゃぐしゃだ。




 あの後も彼女を見かけると、黒い靄がついていたり、ついてなかったりする。

 やはり引き寄せやすい体質なのだろう。



 だが、もう俺が祓う資格はない。



 俺がこれ以上近づいたら、前よりももっと大きな靄に、巻き込まる危険がでてしまうかもしれない。


 そもそも、近づいていいわけがない。

 これで良かったんだ。



 なのに……なぜ未だに悩んでしまうのだろう。




 『赤が好き』

 俺はふと、彼女の言葉を思い出した。




 忘れてくれと言ったのに、本当は忘れてほしくない。


 矛盾して纏まらない気持ちが、少しずつ俺の足を動かした。



 その足で店に行き、赤い色の石を選んでそれにチェーンをつけた。 これなら持ちやすいだろうか。

 そこに詫びの手紙を添えて、彼女のロッカーにしまった。

 持っていれば、多少の靄からは彼女を守ってやれるはずだ。



 だが、受取ってくれる保証はない。

 だからこれは、俺のただの自己満足だ。



 例え覚えていてくれなくても、記憶の片隅に残ればそれでいい。



 彼女が他の場所で、笑っていられるのなら充分だ。


 







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ