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王弟殿下の帰還

ホールの中には異国の服を着た沢山の人が立っていた。


このホールにいたのは王弟殿下と、まだ見つかっていない最後の一隻に乗船していた使節団員だった。と言うことは、この中にお父様とお母様がいる!



何故行方不明になっていたのか王弟殿下のから国王陛下への説明が始まった。




3隻連なっての航行中に、大きな落雷があり、船同士を繋いでいた魔法が消えてしまった。しかも、雷のせいで六分儀がおかしくなってしまい魔法石での制御がきかくなってしまったと、他の船は思っていたようだ。

しかし、先頭を航行していた王弟殿下の船は突然、海から魔物に攻撃を受けた。

このままでは全ての船が沈没してしまうと王弟殿下は危惧した。



しかし、王弟殿下の船に乗船していた魔道具の製作師や魔石加工師達は、移動中の暇に任せて作っていた魔石付き魔道具を出してきた。


面白いくらい戦闘の準備があれよあれよと言う間に整って、海から出てきた魔物の群れと戦った。


他の船は危ないから、遠隔魔法でそれぞれの船の船首の女神像の中に仕込んであった魔石に付与してあった『何があっても国に戻れる帰還魔法』を発動させた。


これは、船を結界で覆い隠す魔法で、国に着くまでは船を隠してしまう効果がある。


だから捜索隊かなかなか船を見つけられなかった。


王弟殿下の船では、戦闘に魔石が足りなくなって『帰還魔法の付与された魔石』も利用してしまったので、帰還魔法は発動出来なかった。


でも、倒した魔物から大量の魔石を回収できた。




魔物との戦闘で、船はこのまま航海を続けれる状態ではなく、沈没を回避するために、1番近い陸地に上陸したが、そこは国交を結んでいない国だった。


船は解体して痕跡を消し、そこからは『旅の行商人一座』として移動してきた。




「いやぁ、急遽陸路での移動にしたが、魔道具技師に錬金術師、魔石加工師など技術集団が一緒にいるから困った事は何一つない上に、行商人一座として入国しても、こちらの技術を見て相手国から定住や長期滞在、それから技術提供を求められるわけだよ。

すると、そこは文化庁長官のシラウト侯爵の出番だ。

シラウト侯爵が交渉のテーブルについてくれる。

その上、金銭的な交渉となったらアデレイド伯爵の出番。

そして、最後の最後に、獣魔である龍を従えて出ていけばいいんだから。」

と王弟殿下は言って、海の魔物から回収した沢山の魔石と、他国との貿易協定を結んだ締結書面を4冊出した。



あの大きな龍は王弟殿下の従魔だった!



「4カ国と条約を結んだとは!皆、大義であった」

国王陛下はねぎらいの言葉をかけた。



「今回、船を襲った魔物はツユミム帝国が雇った獣魔使いによって操られたものだった。

その獣魔使いは、既に拘束している。

ツユミム帝国は、ロングウッド辺境伯領からアデレイド伯爵領を通って王都に進軍してくるつもりだったようだが、アデレイド伯爵領に入ると同時に逮捕している。

これにはアデレイド伯爵家の協力がないと出来ない事であった。

アデレイド伯爵令嬢、当主であるアデレイド伯が不在にも関わらずよくやってくれた。」

国王陛下からの直々のお言葉に私は嬉しくて何も言えなかった。




そしてこの後、陞爵式があった。


騎士団員は、皆、位が一段上がり、シラウト侯爵は既に爵位を譲っている事になっているので、新しくザーランド公爵になった。ザーランド教会を管理する中央区司教様になるそうだ。


前シラウト侯爵は聖職者でもあったのだ。


現、『ザーランド司教』様は、一旦教会本部付きの司教様兼ケルダード教会司教に戻る事も合わせて発表された。



後でリスト様にこっそり教えてもらったのは、私に『ザーランド司教』と名乗っていた『ケルダード教会の司祭様』は、変身魔法で別人になって隠密行動をとっている宰相様だったのだ!

どう考えたって別人だけど、リスト様も第二王子とは別人だものね。



そして、父はアデレイド伯爵から、アデレイド侯爵になった!



今回の陞爵は、後日改めて式典として行うことが告げられた。



非公式の式典が終わると、私はお父様とお母様に駆け寄った。

2人は私を抱きしめてくれた。

「戻って来て最初にマリーナに会えるなんて!」


両親の服装は異国の服装だった。


皇太子殿下と、クリストファー第二王子は王弟殿下に呼ばれてそちらに行ってしまった。

リスト様に感謝の言葉を言う時間がないまま、私は帰路についた。



私は両親と共に馬車に乗って、ギルバートのいる王立病院に向かった。

その馬車の中で、今まであった事を話した。




トレド様と婚約した事。


ケルダード教会に奉仕活動に通っていた事。


司祭様と夜会に出た事。


トレド様と美術館のリニューアルパーティーに出た事。


命を狙われていた事や、私達を守るために、沢山の騎士や魔導士が我が家に使用人としている事。


トレド様の乳母が護衛をしてくれていて、お茶会に出た方がいいと言われて積極的に社交をする様になった事。


ギルバートを守るために今ギルバートは王立病院にいる事。


現シラウト侯爵家の夜会であるホワイトナイトに行った事。


最後に起こったロングウッド辺境伯とラナス侯爵、そしてツユミム帝国のスパイとの事。



お父様とお母様は黙って私の話を聞いてくれた。

そしてお父様は

「数ヶ月で見違えたと思ったが、そんな事があったのか!

よく頑張ってくれた」

と言って、抱きしめてくれた。



連絡ができなかったのは、身分を偽って帰国の旅についていたから、安全のために手紙などは書かなかったと言われた。

もしもの時は、ノエルがアデレイド伯爵家を一時的についでギルバートを支えるという事を、出発前に両親とノエルの間で話し合っていたそうだ。


ノエルは分家の当主だものね。

確かにその手があった…。


「お母様、あの百合の花が屋敷の皆の支えとなりました。

初めは、あの百合に付与された魔法を信じていなかったけど…でも、今となっては信じてい良かったです」

と言うと


「あの百合はね、ギルバートを安心させるために百合の時間を止めただけなの。インチキでごめんなさいね。でも支えになったなら良かったわ」

とフフフと笑っていた。




王立病院に行くと、ギルバートは剣術の訓練の真っ最中だった。

体つきもずいぶん変わった。


お医者様は

「ギルバート子息は魔力量が多すぎる上に、攻撃魔法の能力が高すぎる。

昔はこのような子供は魔力量を削ぐ薬を飲んで安静にしていたが、最近の研究で、体を鍛えて魔力に耐えるような体作りをした方がいいという事がわかった。

後は、魔力のせいで異常に発達した体にならないようにするために、この薬は毎日飲むように伝えてください」

という事だった。


今までギルバートが飲んでいた薬は体力を落として魔力が体に行き渡らないようにする薬だった。

薬を飲まないと、魔力が精神まで支配して、気の向くままに攻撃魔法を放つ兵器のようになり、魔力の器と呼ばれる存在になっていく。

昔は、魔力の器を殺人兵器として戦争の最前線で戦わせたらしい。

今はそれを阻止するために投薬治療をするのが一般的だ。



魔力の器の素質がある子供は、魔力を削いで運動させずに安静にして、12歳を過ぎてから投薬をやめて普通の生活を送るというのが通例だ。


しかしそれでは、魔力に耐える体力が無いため体に無理がかかってしまい、短命になるケースがほとんどだった。


最新の研究では、小さい頃から魔力を運動で消費して、専用の薬で使いきれない魔力を放出するのが体に負担をかけない方法だと確立された。

ギルバートはその専門家の先生の指導を受けながら生活する事になった。



お父様とお母様は、短命だと言われていたギルバートが長生きできるようになると知り、大変喜んでいた。



ギルバートは今、すごく楽しそうだ。



屋敷に帰ると、使用人に混ざってリスト様から派遣された騎士様たちが出迎えてくれた。

ノエルからの勝利宣言の連絡が来ていたようで屋敷はお祝いムードだった。



結局、アデレイド領ではノエルと共に向かった20名の魔導騎士様達だけでは対処できず、皇太子殿下が追加で派遣した国軍などが合流して、ロングウッド辺境伯領から侵入してくるツユミム帝国の兵士や騎士達を捕らえたようだ。


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