表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/18

貴族院の崩壊

一瞬の出来事だった。

ツユミム帝国のスパイだと言われた男性が立ち上がり、ローブの袖から数センチの魔法玉を沢山出して崩壊した壁に投げつけた。


魔法玉は火の玉に変わり、崩壊した壁の近くにいた沢山の近衛兵が怪我を負ったようだ。

そして空気のシールドを作って雷と炎の攻撃を仕掛けてきた。


それと同時に、先ほどワインを給仕した侍従など貴族院の職員であろう者が数名、ローブの男を守るようにリスト様に攻撃魔法を放ってきた。



リスト様は私を護るように前に立ち、シールドを張りながら相手に攻撃の閃光を撃ち込んだ。


撃ち合いは同時だった。



激しい爆音が建物の中に響き白煙が上がって視界が遮られた。


何も見えないが、激しく何かがぶつかり合う音だけは響いている。



シールドの外の空気がまた共鳴し、白煙が消えた。



そこには先程とは全く違う光景が広がっていた。




数名の侍従とラナス侯爵を取り押さえる第四師団の魔法騎士達と、ローブの男と撃ち合う第四師団長、そしてロングウッド辺境伯と剣を交えている第一騎士団の服を着た男性がいた。



それを見ながら、リスト様は私を庇ったままゆっくり後退りしていく。

声は全く出さず物音も出さないようにゆっくりゆっくり。

そして崩壊した壁のところに行くと、シールドではなく結界を張った。


「マリーナごめん、とりあえずここにいる近衛兵にこれを飲ませて」

そう言うとローブの下から、錠剤を出した。


「攻撃魔法を使ったせいで魔力が減ってしまっているから、この結界は5分が限度だ。

5分経ったら()()()()()()()()()()()()()時間を止めておけるのは5分だ!

さあ急いで!」


錠剤は透明で、中にポーションが入っている。

リスト様の指示通り、倒れている近衛兵の口に錠剤を入れる。

すると、すぐに近衛兵は起き上がれるようになった。


沢山の近衛兵に錠剤を飲ませていく。


「敵の攻撃に備えろ!来るぞ!」


リスト様は叫びながら錠剤を飲ませていく。



だんだん視界が明るくなってきた。

「結界が解ける!」


リスト様は

私の所に来て自分のローブを羽織らせた。

「これで少しはマシになる、衝撃がくる。耐えて!」

と私に言うと


「来るぞ!」

と大きな声で叫んだ!



視界が明るくなるとリスト様は私を守るようにシールドを張った。


ロングウッド辺境伯領の軍隊が貴族院の中を占拠する様に入ってきていたようで、近衛兵に向かってマシンガンのように沢山の氷の矢が撃ち込まれていく。


近衛兵が炎の盾で塞ぎながら炎をマシンガンのようにして撃ち込み応戦すると、既に脆くなっていた建物が崩れ出した。



建物が音をたてて崩れ、半壊状態になると、外が見えた。


本来ならそこには、綺麗なフラワーガーデンが広がっているはずなのに、そこには国軍の軍服を着た兵士がこちらを取り囲んでいて、軍服の兵士で黒く染まっていた。




短い抵抗の末、ツユミム帝国のスパイを筆頭に、ラナス侯爵やロングウッド辺境伯や侍従、そしてロングウッド辺境伯軍の全員を拘束した。


第四師団が全員を連行していく。




ラナス侯爵が私達の横を通過しようとした時だった。

それまで無抵抗だったラナス侯爵がいきなり私に飛びかかろうとしてきた。


「あっ!」


私は咄嗟にカーラに教えてもらった護身魔法で身構えた…つもりだったが、護身魔法が上手くいかずに、ラナス侯爵に氷魔法を放ってしまった。


結果、魔力封じをされて連行中だったラナス侯爵は、対抗魔法が使えずに氷漬けになってしまった。


「護身魔法…カーラに訓練してもらおう。」

とリスト様が呟いた。


そして私の手を握って

「マリーナ、ごめん。私が迎えに行くのが遅くなったから、君を危険な目に合わせてしまった。」

と言うと抱きしめられた。




「リスト、無事か?」

その声でリスト様は私を解放して振り返った。

でも右手は繋いだままだ。


するとそこには第一騎士団の制服を着たダークブラウンの髪に、蒼とも碧ともつかない瞳の映画スターのような目が霞むくらい綺麗な顔の男性がいた。


先程の戦闘の時に、剣で相手を圧倒していた騎士様だ。

そして、2回ほどケルダード教会に来て、寄付をして行ったあの騎士様だ。



「兄上、いち早く駆けつけてくださりありがとうございます」

とリスト様は答えた。


「いや、気にするな。

それより、一刻も早く報告に行かねばなるまい。」

と騎士様は言うと、私達に近づいてきた。

そして騎士様はリスト様の手を取った。


その瞬間、強い重力を感じて思わず体に力が入り目を閉じた。

船に乗るよりも激しい揺れと強い重力で気持ち悪くなってきた。



「マリーナ大丈夫?」

と言う声で目を開けると、大理石でできた床が目に入ってきた。

気持ち悪さで立っていられなくなって膝をついた。


「兄上、初めて移転魔法を経験する時は、気持ち悪くならないように酔い止め(ポーション)を飲まないと大変な事になるのに」

とリスト様は騎士様に抗議をしている。


「ごめんねマリーナ。でも急がないといけないのも本当だから。 

私に体を預けて」

とリスト様は言うと、私に回復用のポーションを飲ませてくれた上に、横抱きで抱き上げられた。


いわゆるお姫様抱っこをしてくれて、スタスタと騎士様の後ろをついていく。


広い大理石の廊下を2人は歩いていた。


広い廊下には、等間隔で近衛兵が立っており、私たちが通り過ぎる時に敬礼をしてくれている。

お姫様抱っこで通り過ぎるのは恥ずかしい。



「リスト様、自分の足で歩けます」

と言って降ろしてもらえるように言ったが

「マリーナが自分で歩くより、この方が速い。」

と言われた。


リスト様の髪の間から見える綺麗な瞳にドキドキする。顔が近い…。

髪の毛が揺れていつもは見えない瞳が見えるが、それ以外はいつものリスト様だ。




大きな扉の前に近づくと近衛兵が開けてくれて、騎士様とリスト様は高位貴族専用のこじんまりとした謁見の間に入った。


そこには国王陛下夫妻がこちらを向いて立っていた。


「クリストファーの諜報活動とフランクの的確な指示のおかげで、ツユミム帝国の侵略を阻止できた。

もちろん、アデレイド伯爵令嬢の協力がないと成し遂げられない結果でもある。

3人とも、この度は大義であった。」

謁見の間に入った途端に国王陛下が仰った。


既に礼をしている騎士様に続いて、リスト様は私を降ろすと、騎士の礼をした。

私もカーテシーをする。


「フランク、クリストファー、2人ともいつまでその格好でいるんだ?」

国王陛下の問いかけで、2人は立ち上がると、それぞれ指を鳴らした。


すると、騎士様はいつか見た皇太子殿下の姿になった。服も第一騎士団の服装から王族の服になっている。


そして、リスト様も髪の色が栗色からプラチナブロンドになり、顔の傷が消えた。

一瞬にして文官のローブを羽織った格好から王族の服になった。

リスト様は長い前髪をかきあげた。



「アデレイド伯爵令嬢、ご両親が不在の中、よくがんばりましたね。

今回、あなたとリストのお陰でこの国は救われました。

あなたにも国から褒賞品が出るから欲しい物を考えておいてちょうだいね。

褒賞品は次回お渡しするとして、今は私からアデレイド伯爵令嬢にプレゼントがあるの。

トーマス、アデレイド伯爵令嬢にお渡しして」

と王妃様は言った。


「かしこまりました。王妃様」

トーマスと呼ばれた男性は見えない位置に控えていたようでビロードに覆われたジュエリーボックスを持ってこちらに歩いて来た。


男性の服装で国王夫妻に仕えている執事である事がすぐにわかった。


男性は私の目の前でジュエリーボックスを開けて、私の目を見た。

その顔は楽しそうに笑っていた。


男性の顔に見覚えがある!

目の前にいる男性は、ザルバ子爵だ!



ザルバ子爵の持ってきてくれたジュエリーボックスにはブルートパーズがふんだんに使われた髪飾りが入っていた。

その髪飾りはすごく素敵だった。


「未来の娘へのプレゼントです。

リストとの結婚式は大々的に行いますからね。

私は楽しみにしているわ。」

と王妃様は楽しそうに言った。


ザルバ子爵って、国王陛下夫妻の執事だったんだ…。


頭が混乱していると、

「今から、ホールで非公式だが式典を行う」

と国王陛下は仰ると、ホールに続く通路を歩いて行った。


私たちは、それとは別の扉からホールに入る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ