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強い衝撃

部屋をノックする音が聞こえた。

近衛兵がやってきたようだ。




その時だった!


地響きと共に強い衝撃で談話室の壁に亀裂が入った!


もう一度、強い衝撃を感じた。

壁の亀裂が更に大きくなる!

空気が振動して椅子に座っていても体が揺さぶられるような振動があった。


すると、壁の亀裂がボロボロと崩れ、光が溢れた。

部屋全体に結界が張り巡らされていたようで、その結界に亀裂が入ったようだ。



もう一度強い衝撃があった。

空気が体にぶつかってきて体が痛いというか熱いというか、皮膚がピリピリする!

この一撃で部屋の結界は完全に破壊された。

そして談話室の壁が崩壊した。





壁のあった場所に立っていたのはブルーグリーンの瞳に、プラチナブロンドの髪を後ろに流した恐ろしく顔の整った男性だった。



その男性を止めようとして近衛兵が集まっている。

しかし、男性はそんな近衛兵達を無視して部屋の中に入ってきた。


瓦礫の上を優雅に歩く男性は、こちらに向かってきた。

威厳たっぷりのその様子はまるで魔王の様に見えて、この世のものとは思えなかった。



男性は私の方に向かって歩いてきて、私の座る背もたれに手を掛けた。

私は壁が崩壊した時に受けた衝撃で、皮膚のピリピリとした感じと痛みと熱さが続いており、そこに恐怖が加わって振り返る事ができない。



「これは何の集まりですか?」

私の後ろにいる男性は3人の男性に向かって聞いた。


「第二王子、最短距離を進みたくて壁からいらっしゃったのですか?

王子といえども、貴族院にやってきて、院内を破壊する行為は器物破損罪に問われますよ?」

ロングウッド辺境伯が恐怖で引き攣った顔で答えた。


「ロングウッド辺境伯に、それからラナス侯爵。

おや?その椅子にあたりまえに座っている男は、私の記憶が間違ってなければ指名手配をしているツユミム帝国の諜報員だ。

しかも…4日前に身柄を拘束したはずなのに、馬鹿な衛兵が逃がしてしまった。」

第二王子と呼ばれた男性の声は楽しそうだった。


「そんな指名手配犯がまさか、ロングウッド辺境伯領の文官のローブを羽織り、我が国の貴族院で優雅にワインを飲んでいるとか。

あり得ない話だ。

もう一度聞く。これは何の集まりだ?」

相変わらず、声は楽しそうだった。


「第二王子、お久しぶりでございます。

ワルキューレ・ラナスでございます」

ラナス侯爵は椅子から立ち上がり、貴族の礼をした。


「我が母である、前ラナス侯爵夫人はアデレイド家から嫁いでおります故、今後のアデレイド伯爵家を心配しております。

そのため今後の話を聞くためにアデレイド伯爵令嬢を招いた話し合いでございます。

この話し合いをするにあたり、アデレイド伯爵家の手助けになればと、アデレイド領と隣り合う領地のロングウッド辺境伯にも同席していただきました」

とラナス侯爵は答えた。


するとロングウッド辺境伯が

「この文官は、アデレイド伯爵家の紹介状を持って3日前に側近の面接を受けに来たのだ。

大変優秀であったため、即採用としが…。

本日の会合の際、やはりアデレイド伯爵令嬢とは旧知の仲だったようで、こうしてワインを飲みながら談笑していた。

ということは…アデレイド伯爵令嬢はツユミム帝国の諜報員と旧知の仲という事になるな」

と私に罪をなすりつける発言をした。



「アデレイド伯爵令嬢をスケープゴートにするんだな。

でも残念ながら、全て調べはついているから、今更そのような白々しい嘘を並べ立てたところで言い逃れはできない。

もちろん、ここから逃げることも。」

第二王子のその声にはかなりの怒りが込められていた。



少しの沈黙の後、ローブを着た文官が

「第二王子様、貴方様は私を誤解しています。

私の母国は確かにツユミム国です。でも、10年以上前にこちらの国に永住をして市民権まで保有しています。

私は一度も法を犯した事はありませんから、第二王子がおっしゃる逃げた罪人は私ではございません」

と言った。


「じゃあ、君達は全てにおいて身に覚えがないというんだね?

先日、ロングウッド辺境伯は軍事強化の必要性についてという件で、軍部でも騎士でもなんでもない文官が訪問してきたはずだ。

それから、ラナス侯爵の所にも、税金の有効活用について貴族院の幹部に質問があると文官が尋ねて来たはずだ。」


2人とも

「そうです」

と答えた。




「聞きに来た文官はこんな外見ではなかったか?」



と言うと、第二王子はパチンと指を鳴らした。


それから私の肩に手を置いた。


壁の崩壊時に受けた衝撃で体の感覚が麻痺してはいるが、体に心地よい魔力循環が始まった。



なぜ?



振り返るとそこには、いつものリスト様が立っていた。

耳が隠れるくらいの長めの栗色の髪で目は隠れて見えず、左頬に大きな傷がある、いつものリスト様だ。



私は驚きで声が出ない。



リスト様は椅子に座る3人の男性を見たまま、私の椅子を引き、私を椅子から立たせた。




「私の質問は大した事ない事や、的外れな事だったはずだ。

一見的外れの質問のようで、違うのだよ。

全く警戒していなかった君達は色々と教えてくれたよ。」


いつもは全く動かないリスト様の前髪が揺れてブルーグリーンの瞳がキラキラと光った。



「周りを甘く見ていた事がそもそもの失敗だよ。

私のような文官や、アデレイド伯爵令嬢をね。」

とリスト様は言うと


「この者達を捕らえよ」

と冷たく言い放った。



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