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シラウト侯爵家に滞在する事になりました

「さぁ、では仕事に戻りましょう。マリーナと私はしばらく監視室にいますので、師団長、よろしくお願いします」

とリスト様が師団長様に向かって言うと


「わかった。会場で怪しい動きをしていた奴は仮面がなくなったと同時に顔認証にかけた。

その中で、データに引っかかった奴は他の招待客に気づかれないように別室に連れていったよ。

後は、この会場からいち早く出発した()()()を尾行している奴だけど。」

と師団長が言うと


「尾行している人物の仮面も溶けるようになっていますよ。一瞬でも会場の床を踏んでいれば仮面に融解魔法がかかるように魔法陣を張り巡らせていますからね」

と女性の魔導士が答えてくれた。



「リスト様、そういえば王族の方も出席されているんですよね?仮面が溶けてそこに王族の方が居たら会場はパニックになりませんか?」



踊っていた相手が実は国王陛下だった、とか、皇太子殿下だったとか。想像しただけでパニックだわ。



「王族が会場にいたのは途中まで。隠れて最後まで警備するのは大変だからね」

リスト様はホールを見ながら一組のカップルを指差した。


「ほら、あそこにいるカップル。

マリーナになんとなく似ているでしょ?パートナーの顔の左頬に傷がある。

あの2人は魔導騎士でね、『近くで見ると別人だけど遠目で見ると、アデレイド嬢と私』に見えるように変装してもらっている。

ほら、あそこにも、あそこにも私達のそっくりさんがいるんだ。

敵への混乱作戦だよ。そっくりさん達は、誰かに聞かれたら『ホワイトナイトは仮装も兼ねているのかと思った』と答えるように指示してある」


そしてリスト様の声が変わった。


「ここからが本番だ。シラウト侯爵は私達の協力者だから、しばらくはシラウト侯爵家にいて欲しい。

アデレイド伯爵家は今、騎士や魔導士がいるが、そもそも建物の防衛機能が十分じゃない。

シラウト侯爵家は鉄壁の防御魔法が施されている。

なんせ沢山の絵画や宝石があるんだからね。

3日間で決着をつけて迎えに行く。

それまでシラウト侯爵家で過ごして欲しい」


そう言うと、リスト様は私の手に金でできた紋章入りのネックレスを握らせた。

「必ず戻るという約束だよ」



その言葉と共に、私の後ろに2人の侍女が来て

「もう遅いのでお部屋にご案内いたします」

と言われた。


「マリーナ、おやすみ」


リスト様は私を抱きしめて額にキスを落としてくれた。

それから侍女の方へ私を歩かせた。

私は何も言えなかった。


リスト様の方を振り返りながら通路を曲がった。


今からリスト様が何をしようとしているかはわからないけど信じて待つしかない。




長い長い隠し通路を通り、迷路のようなところを進むと、大きなエントランスホールに出た。


そこにはシラウト侯爵夫人が待っていてくれて、

「はじめまして。

私はリサ・シラウト。

もう遅い時間ですから明日、改めてご挨拶させてくださいね」

と挨拶をされて部屋に案内された。



その日はなかなか寝付けず、もらったネックレスを眺めていた。


手に握らされた時は金の紋章入りのペンダントトップが付いたネックレスだと思ったが、裏返すとダイヤモンドがついており、普段はダイヤモンドを表にしてつける女性用のネックレスだった。


鏡の前に行き月明かりをたよりに、そのネックレスをする。

そしてまたベッドに入り、ペンダントトップを触りながら目を閉じた。


やっと眠れたのは朝方だった。



あまり眠れずに目が覚めたらいつもの時間だった。


私が目覚めた事に気づいたメイドがシラウト侯爵夫人が準備してくれたシンプルなワンピースに着替える手伝いをしてくれた。

そしてリサ様のいるサロンに案内してくれた。


「おはようございます。リサ様。ドレスまで用意していただけるなんてありがとうございます。」

と言うと、リサ様はニッコリ笑って


「気にしないで。それは私が着ていたドレスなの。

でもね、今は締め付ける服は着れないのよ。」

と言いながら、少しふっくらしたお腹を嬉しそうに撫でていた。


「何かあってはいけないと言われてね、昨日のパーティーを楽しみにしていたのに、眺める事しかできなかったのよ。

見ているだけでも楽しかったわ」

リサ様は笑った。


「私は主人から安定期に入るまでは外出を制限されているから、アデレイド伯爵令嬢が来てくれて嬉しいわ。

なるべく長くいてちょうだいね」

と笑顔で言われたので


「突然の事でご迷惑をかけてすいません」

と答えると


「迷惑なんてないわ!私、妹が欲しかったから楽しみにしていたの。

それにね、トレド子爵にお願い事をされたのは初めてなのよ。

だから私も主人も嬉しかったの。」

とリサ様は楽しそうにしていた。



リサ様は、凄くおしゃべりな方で、シラウト侯爵と留学先で出会った事や、初めて会った時の印象など色々と話してくれた。


リサ様は、胎教にいいエクササイズとしてコーチを招いて毎日午前中にダンスルームでエクササイズをしているそうだ。


私も一緒にエクササイズをした。


それから、ランチタイムにはたっぷりの野菜を使ったハーフコースのランチをいただいた。

私には食べきれない量だった。


「近頃食欲が止まらないの。欲望に任せて食べ続けたら、風船になっちゃうわ。

特に甘い物!あれは天敵よ!だから、デザートは抜きなの。ごめんなさいね」

なんて言いながら、巨峰を2房完食していた。



午後には胎教にいい音楽鑑賞などをしていて、音楽鑑賞と言いながら、リサ様は招いた演奏家達の中にマイバイオリンを持って飛び入り参加をしていた。



リサ様と過ごすのはとても楽しくて、あっという間に3日目になったが、リスト様が迎えに来る事はなかった。


どこかで何かが起きているのかもしれないけど全くわからない。

それくらいシラウト侯爵邸は平穏に包まれていた。



弟のギルバートに夜会の日から逢いに行っていないので、せめて病院に行きたいとリサ様に相談すると、


リサ様から

「移動中の警備の問題があるから今はちょっと無理なの。ごめんなさい。

トレド子爵は、解決したら迎えに来ると言っていたから、連絡があるまで待って欲しいの」

と言われた。



そういえば自分は狙われていたんだわ。



4日目。すっかり仲良しになったリサ様とお庭を散歩していた。

「お庭にも強い結界が張ってあるから安心よ」

と言ってお庭を散歩しているとそこに



「奥様、急な来客でございます。」

リサ様を呼びに侍女が来た。


「マリーナ様、サロンで待っててくれるかしら」

とリサ様が来客に対応しに別室に行ってしまった、



一人になったところで、私にも来客があった。



なんで?

ここにいる事を知っているだろう?

そう思って対応に出ると、貴族院のローブを羽織った文官が待っていた。


「アデレイド伯爵令嬢。

先日のトレド子爵邸であった不法侵入についての問い合わせでございます。

アデレイド伯爵邸でこちらにいらっしゃると聞いて参りました。

一昨日、すでに召喚状を送っておりますが、本日再審議をする事になりました。

理由は守秘義務がある故お話はできませんが。

その件について、至急、審議会出席のために私と同行頂きたいのですが。」


文官が持ってきた書類には貴族院の紋章が入っていた。


念のため同席してくれているシラウト侯爵家の執事にも見てもらう。

「こちらは確かに貴族院の召喚状です。」

と言ったので


「わかりました。今からですか?」

と聞くと、文官は申し訳なさそうに

「はい。よろしくお願いします」

と言った。


シラウト侯爵家の執事から、

「まずリサ様に相談してからにしたほうがよろしいかと思います」

と言われたがリサ様は取り込み中。


それなら侍女をつけるから一人での外出は危険だと言われたが、行き先は貴族院で召喚状もある。

貴族院の職員は、帰りは貴族院の馬車で送り届けてくれると言った。


何よりこれ以上迷惑をかけたくなかったので、侍女はお断りをして貴族院の馬車に文官様と共に乗った。



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