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第八話 夢宮灯はみんなを笑顔にします!

 ここは……


「ここは、あの世だ」


 あの世?


「そうだ。貴様はここで裁かれ、天国行きか地獄行きか決めるのだ」


 そっか……

 私は思い出した。

 私、夢宮灯は死んだんだ。

 男の人に襲われて……


 優斗……

 パパ……

 ママ……

 みんな……


「貴様は地獄行きが決定している。連れていけ!」


 そんな!

 私は、誰かを傷つける事なんかしていません!!


「貴様は魔法少女だろうが!」


 そうですけど、私はその力でみんなを守ってきました。


「魔法少女は地獄行きと決まっている!」


 どうして!


「説明の義務は無い!連れていけ!!」


 どうして!

 どうしてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ


 こうして私は、地獄行きになった。





 地獄に落ちてから、どれだけの時間が経っただろう……


 十年?

 二十年?

 それとももっと?


 私は、今日も責め苦を受けている。

 もう、壊れてしまいたい。

 そう思う事もある。

 でも、私は絶対に諦めない。

 だって私は、魔法少女だから。

 どんなピンチでも、諦めないのが魔法少女だから。


 私を苦しめていた鬼の話し声が聞こえた。


「鬼灯様!このような場所にわざわざいらっしゃらなくても」

「いえいえ、これも仕事ですから。ところで、その女は?」

「はい、この女は夢宮灯。魔法少女マジカル・シャインです」


 私の事を話しているようだ。


「魔法少女マジカル・シャインですか……そうそう、思い出しました。魔法少女によくあるみんなの事を笑顔にするとか言っている女ですね」

「ええ、しかし魔法少女って何様なんですかねぇ。私がみんなの事を笑顔にする~って。お笑い芸人にでもなればいいのに」

「ええ、まったくです」


 違う!

 私は本気で思っていたんだ。

 みんなを笑顔にするって。

 本気で、そう思っていたんだ!!


「この目、どうやら本気でみんなを笑顔にするって思っていたみたいですね」

「まったくです。本当に馬鹿は死んでも治らないんですよね」

「鬼灯様のおっしゃるとおりですね」


 そう言って鬼達は笑っている。


「では、夢宮灯こと魔法少女マジカル・シャイン。あなたにいい事を教えましょう」

「え、よろしいのですか?教えてしまって」

「はい、私の権限で教えられる事ですから」


 そう言って鬼灯と名乗る鬼は私に説明した。

 魔法少女と悪魔の関係を。

 私は信じられなかった。

 そうだ。私は信じない!

 魔法少女が悪魔を生み出す元だなんて。


「誓って本当です。私の首をかけてもいいですよ」


 嘘だ!


「そうそう、あなたの思い人の草薙優斗君ですがね、彼は二年後に恋人が出来ましたよ」


 え?


「そして高校生になった頃には、あなたの名前も忘れ去っていましたよ。しかも、あなたが死んでよかったとさえ思っていますよ」


 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!

 そんな事あり得ない!!

 優斗が私の事を忘れるなんて、死んでよかったと思うなんてありえない!!!


「あなたのご両親ですがね、彼らも同様ですよ。二人の間には新しい命、つまりはあなたの妹が生まれましてね、その子がとても優秀だそうで、あなたの事なんかもうどうでもいいと思っていますよ」


 信じない信じない信じない信じない信じない!

 パパも、ママもとっても優しくって、私はそんな二人が大好きで、それで、二人ともいつも言ってたんだ。

 あなたの事が大好きよ、って。

 だから、そんな二人が私の事をどうでもいいなんて思うわけない!!


「そうそう、あなたの友人達もそうですよ。みんなあなたの事を本当はウザいと思っていたらしく、表面的には悲しんでいるけど、実はみんなよろこんでいましたよ」


 ありえないありえないありえないありえないありえない!

 みんな私の大切な友達だ!

 みんなと喋っている時は、私も、みんなも笑顔で、とっても楽しくって。

 何度も一緒に遊んで、学年変わってクラス変わっても友達でいようね、って言ってたんだ。

 そんなみんなが、本当はウザいと思っていたなんて大嘘だ!!


「やれやれ、どうやら信じていないようですね。では、信じさせてあげましょうか」


 私の脳裏に、映像が流れ出した。

 その映像は、とてもリアルで、それが真実だとわかった。


 そして分かった。

 鬼の言っている事が真実だと。


 私は何のために戦ったんだろう。

 私は、みんなを笑顔にしたくって、私が住む町を、世界を、守りたくって……

 でも、みんなは私の事をこんな風に思っていたんだ。

 私は……馬鹿だ…………

 こんな奴らの為に私は戦ってたんだ。

 痛い思いして、挙句の果てには殺されて、しかも死んでも苦しめられて……


 あは、ははははははははははは………………


「あ。壊れたようですよ」

「構いませんよ。いつもの事ですし。地獄では壊れた精神も明日には戻りますから。まぁ、記憶は消えませんから、また壊れるでしょうがね」

「ところで鬼灯様、この魔法少女は何日連続で壊れると思われますか?」

「さぁ。まぁ、仮にわかっても言いませんよ。あなた達の賭け事には関わりたくないので」

「あ、知っておられたのですか?魔法少女が何日連続で壊れるか賭けていた事」

「まぁ、いいのではないでしょうか?地獄では賭け事は禁止されていませんから。それに、魔法少女はそのほとんどが周囲を笑顔にする事を目標に戦っています。賭け事の対象になる事であなた達を笑顔にしているのですから、満足でしょう」

「それもそうですね」


 あはははははははははははははははははははは


「そういえば鬼灯様、あの建設中の建物ってなんですか?」

「あれですか?あれは魔法少女の展示場です」

「魔法少女の展示場?」

「地獄は娯楽が少ないですからね。仕事に従事する鬼の皆様のストレス解消は重要です。で、魔法少女を展示しようと思っています」

「それはすごいですね。楽しそうです」

「でしょう?魔法少女は脳内に花が生えた馬鹿ばかりですから、さぞ皆様に笑われるでしょう」

「わかります、わかります。私も大勢の魔法少女を見ましたが、全員脳みそお花畑のお馬鹿さんでしたから」

「ええ。魔法少女達も、皆様を笑顔にする事が出来て、さぞ幸せでしょう」

「いやはや、まったく」


 あはははははははははははははははははははは


「では、私は建設現場の視察があるので、これで失礼します」

「はっ。お気を付けください」


 あはははははははははははははははははははは………………


「よかったな。これでお前は、死後もみんなを笑顔にする事ができるぞ」

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