第六話 草薙優斗は愛しい少女の為に頑張る!
灯が死んで、もう二年経った。
あの日、俺が告白した後、そう、俺達が恋人同士になった後、あいつは死んだ。
あの日、灯は、急に用事があると言って去っていった。
きっと、いや、間違いなくそこで何かあったんだ。
警察は変死体、死因不明だって言っていたけど、俺は絶対に信じない。
きっと、灯は殺されたんだ。
そしてそれは、灯が俺に言おうとした内容と関係があるに違いない。
だから俺は、必死に調べている。
灯が死んだ原因を。
そして、もし俺の想像通りにあいつが殺されたのだとしたら……
俺はそいつを絶対に許さない!!!
だから俺は、今日もビラ配りをしている。
灯の顔写真が入ったチラシを配って、少しでもいいから情報を集めようと思っている。
あいつの死の原因が分かるまで、俺は絶対に諦めない!!!
「ふぅ、今日も収穫無しかな……」
ビラ配り開始からもう二時間以上。
ほとんどの人がもらってくれない。
今もサッカーをしている俺にとって、体力的には問題ないが精神的にはかなり堪える。
まぁ、いつもの事だけど。
余った大量のチラシを持って、俺は気分転換にあの公園に向かった。
そう、あの公園、俺が灯に告白した公園だ。
そこで休んで、俺は灯の事を思い出していた。
いつも元気いっぱいだった灯。
小さい頃から大好きだった。
そして、俺が告白したときのうれしそうな顔……
当時の事を思い出して、俺は思わず涙を流してしまった。
「あれ、優斗先輩?」
声の方を向くと、そこには俺の知り合いが立っていた。
そこにいたのは、金城 星海さんだった。
彼女は同じ学校に通う中学一年生、つまり一才年下だ。
そして、サッカー部のマネージャーで、成績優秀、美人で有名なうちの学校で人気の女の子だ。
「どうしたんですか?涙なんか流して……」
「あ、いや、何でもないんだ」
そう言ったけど、涙を流している所を見られた恥ずかしさで、俺は思わず逃げだそうとしたけど……
「待ってください!先輩!!」
そう言って星海は俺の手を掴んだ。
彼女の力は大した事は無かったから、振りほどこうとしたけど、その時、星海の顔が目に入った。
彼女の目からは、涙が出ていた。
「なんで、泣いているんだよ……」
「だって……先輩、とっても辛そうだったから」
「……」
「私……ずっと先輩の事見ていました。先輩、時々何かを思い出しては辛そうな顔をしていました。だから私、心配で心配で」
そう言って星海は声を出して泣き始めた。
彼女は、本気で俺の事を心配してくれているんだ……
俺は、彼女の事が愛おしくなって、彼女の事を抱きしめた。
灯の事は、もうどうでもよくなっていた。
「先輩……好きです」
そう言ってくれた彼女に、俺はキスをした。
それからしばらくして、
「あの、先輩。これから時間あります?よかったら、夕飯食べに来ませんか?」
「え、いいの?ご家族の邪魔にならない??」
「大丈夫。今日、その……両親いないから…………」
そう言って顔を真っ赤にする彼女は、とっても可愛かった。
「じゃ、じゃぁ、行く……」
俺も顔を真っ赤にして、そう言った。
「あ、ちょっと待って。ゴミ捨てるから」
そう言って、俺は公園のゴミ箱に邪魔なビラを捨てた。
それからさらに数年が経ち、俺は高校ニ年生になった。
星海とは、いまでも付き合っている。
ちなみに、俺は今引っ越しして、一人暮らしをしている。
でも、彼女との家の距離はそんなに変わらないから、今でもラブラブだ。
「でもよぉ、優斗。お前の彼女美人だよなぁ~」
そう言ってきたのは、俺の悪友だ。
高校生からの付き合いだが、なんだか気が合って友人をやっている。
「へっへ~いいだろ~」
「くぅ~っ惚気やがってぇ!」
そう言って笑いあった。
「あ~あ、俺にも可愛い彼女出来ないかな~。ゲームに出てくるような可愛い幼馴染で魔法少女、みたいな」
「へ~。幼馴染、ねぇ」
「魔法少女をスルーすんなよ。あ、そういえばさ、優斗の幼馴染ってどんな奴?ちなみに俺の幼馴染は、彼氏持ちになっちまった」
「幼馴染……」
俺は自分の幼馴染を思い出した。
「うーん……」
「え、ひょっとしていないのか?」
「いや、いたんだけど……」
そう、確かにいた。
だけど……
「正直あんまり覚えていないんだよね。名前も覚えていないし」
「え、なんで?」
「死んじゃったんだよね~。でもさぁ、正直死んでくれてよかったよ」
「どうしてだよ」
「いやー、俺あいつが初恋の相手だったんだけどさ、今考えるとあいつはウザいだけの女だったんだよね。馬鹿だったし。当時は勉強に付き合ったりしたけどさ、星海と付き合い出してから気付いたんだよ。本当は嫌だったって。いや~、幼馴染フィルターって怖いわ~」
「わかるわ~」
「しかもさぁ、死因が不明だったから、俺も一時期ビラ配りとかしていたんだよね。でもさ、俺がやめてからもあいつの両親が毎日毎日うるさいんだよ。ビラ配り手伝え、それでも私達の娘の幼馴染か、ってな」
「うざっ!」
「だろ。だから俺、もう関わりたくないと思って、高校入った時に一人暮らし始めたんだよね。ついでに言うと、その時あいつの写真全部消去した。もう思い出すのも不快だったからね」
「うけるぅ~」
そして俺達は笑いあった。
もう名前も忘れたけど、俺の幼馴染、死んでくれてありがとう。
それだけは感謝しているよ。
おかげで俺は、お前から解放された!
そして俺は、素敵な彼女と出会えた!!
俺は愛しい彼女の為に頑張るぜ!!!