第五話 この世界を守る為に頑張ります!
「よし、これで終わりかな。本当、よくこんなに撃たれて生きているよな、魔法少女って。でも変身を解かれる前に襲えてよかった」
変身を解かれると次に変身するのを待つ必要がある。
つまり、解かれると無駄な時間を過ごすことになってしまうのだ。
なんせ魔法少女の時に狩らないといけないからな。
だから大急ぎで襲ったが、なんとか間に合ったようだ。
魔法少女はいくらでも湧いて出るから、無駄な時間はかけたくない。
僕、月影 紅麗は持っている銃を腰のホルスターにしまった。
僕が持つ銃は複数のスキルが付与されている。
まず、スキル:魔法無効。
これにより、これで撃たれて出来た傷は魔法では治すことが出来ない。
さらに、スキル:変身解除不可によって、これで一発でも打たれると魔法少女はしばらく変身を解けない。
だから、不意打ちが成功すれば魔法少女を逃がす事はほどんどない。
僕は魔法少女の死体の首を触った。
念のため脈を確認して死んだのを確認するためだ。
時々しぶとい魔法少女がいて、死んだと思っても生きている可能性があるのだ。
本当に面倒くさい。
魔法少女の死亡を確認した後、僕はスキル:転移でその場を離れ、自分の家の自室に転移した。
今回殺した魔法少女の遺体は、変死体(銃死体ではなく)として発見される。
魔法少女は変身後の姿で死ぬと、すぐではなく数分後に自動で変身が解かれる。
そして、死因不明の変死体として発見されるのだ。
だから魔法少女の時に殺すようにしている。
まぁ、急ぐ時は変身を解いた時に殺すけど。
「しっかしまぁ、なんで魔法少女になんかなりたがるんだろうね」
変身を解きながら、僕はそう独り言を言った。
魔法少女になるのは幼い可憐な美少女ばっかりだ。
さらに、可愛い恰好をしているというオマケ付きでもある。
もう何年も魔法少女狩りをして殺すのには慣れたとはいえ、いい加減終わりにしたいものだ、と思った。
僕が魔法少女を狩る力を得たのは、八歳の頃だった。
八歳の頃、貧困家庭で餓死しかけていた僕は、救われる事と引き換えに、神から力を授かった。
魔法少女を狩る力、調律者としての力を。
そして、体を鍛え、戦い方を覚えた。
ちなみに、初めて魔法少女狩りをしたのは確か十歳の頃だったと思う。
(ちなみに、実際僕は救われて、現在は裕福な家庭に養子として引き取られ、幸せに暮らしている)
悪魔は人々が持つ負の感情を元に生まれる。
魔法少女は人々が持つ正の感情を集めて変身する事が出来る。
なぜ誰も疑問に思わないのか。
魔法少女はクリスタルと名乗る鳥が生み出す。
では、悪魔は?
なぜ実体のない負の感情が、悪魔になってしまうのか?
答えは簡単。
魔法少女が生み出すのだ。
それも無意識に。
クリスタルと名乗る魔鳥は、魔法少女という悪魔発生・維持装置を生み出し、世界を秘密裏に混乱に陥れる。
魔法少女に倒されたとしても、それまでにかなりの混乱が生み出されるので、問題ない。
なにせ魔法少女がいればいくらでも悪魔は生まれるのだから。
だが、もし悪魔が魔法少女を倒せば、最悪の事態になる。
悪魔は倒した魔法少女を食べてパワーアップするのだ。
パワーアップした悪魔は体内に悪魔発生・維持装置を持ってしまう。
こうなった悪魔は魔王と呼称され、魔法少女がいなくても悪魔をどんどん増やしていってしまうのだ。
さらに、魔王は大災害規模の死傷者がでる天災を引き起こしてしまうから大変だ。
だから調律者である僕は魔法少女を狩る。
悪魔に食べられる前に。
ちなみに、調律者は魔法ではなくスキルを使う。
だから僕は魔法少年ではないのだ。
ちなみに、魔法少女になった人間はもう普通の人間には戻れない。
つまり、殺すしかないのだ。
ちなみに僕は悪魔は狩らない。
魔法少女は悪魔発生・維持装置、つまり、魔法少女を狩ればこの辺りの悪魔は自動消滅するからだ。
さらに言えば、悪魔と戦った後の魔法少女は疲れているから楽に狩れるのだ。
もちろん、悪魔が魔王になってしまったらさすがに戦うが。
魔法少女は狩っても狩っても次々出てくる。
それも世界各地に。
それを僕一人で対処するのだ。
最初は苦しませない為に即死になるように頑張った。
だけど、狩った人数が百人を越えた辺りからいい加減イライラしてきた。
なんで好きで魔法少女になった奴に慈悲をかけなきゃならないんだ?
移動はスキルで一瞬とはいえ、面倒事には変わりない。
はっきり言って腹が立つ。
だから、最近ではなるべく苦しめて殺すようにしている。
自身の罪を理解させるために。
あと、こんな面倒事をやらされた恨みを晴らす為でもある。
まぁ、つまりは私怨の面もある。
何はともあれ、魔法少女はその存在そのものが悪だ。
だから、僕の戦いは続く。
魔法少女を狩りつくすまで。
そして、魔法少女を生み出すクリスタルという魔鳥を殺すまで。
悪魔や魔法少女、魔鳥がいない世界に戻る、その日まで。
世界を元の形に戻すのが調律者としての使命……
そう、この世界を守る為に戦うのが僕の使命なのだから。