01.プレリュード
イシルは人に見えないキラキラが見えた。両親は信じなかった。
妹のルルーは、イシルには見えないものが見えた。両親はそれを特別なものと考えた。
それがこの物語の始まり。
「ねえねぇ、お姉ちゃん、あそこにいるの、何?」
三歳の妹ルルーにそう聞かれてイシルがその場所を見ても、そこには何もなかった。六歳のイシルにとってはなにか重い雰囲気がするだけだった。
「え、何かいるの? わからないわ」
イシルはルルーにそう答えるしかなかった。
それからも、ルルーはあちらこちら人や場所を指差して、何度も
「あれは何?」
と姉に聞いた。
イシルは答えられなかった。ただあまり良くない雰囲気が感じ取れただけだった。
そんなことが続いて、ルルーは姉のイシルを、何もわからないと馬鹿にするようになった。
ルルーが見えているものは、両親にも見えなかった。それでも両親は、見えない何かが見えるルルーに
「ルルーにしか見えないものを見ているんだね。えらいね」
といつも言っていた。
いつしかルルーは、見えないものを見る自分は家族の誰よりも偉いのだと、傲慢になった。
そんなルルーは、さらに『それ』がはっきりと見えるようになっていった。
イシルは両親から、姉なのに見えなくて情けないと言われた。
『両親だって見えなかったのに』
イシルはそう思ったが、言えなかった。言えば「姉なのに」とわけがわからないまま責められることがわかっていたから。
ダメな姉というレッテルを貼られたイシルは、いつのまにか両親から無視されるようになっていった。
両親の愛は、ルルーにだけ注がれた。
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登場人物紹介を、
https://ncode.syosetu.com/n3875gw/
においてあります。
名前で混乱してしまった人は、コピペして飛ぶか、作者ページより「お話の人物紹介&設定集」の「「ダメ姉聖女」登場人物紹介」をご覧ください。
本編完結後は、そのネタバレなしをこの小説の続きに移し、別小説の方はネタバレありの「「ダメ姉聖女」登場人物紹介&設定」と入れ替えます。
本日もう一話投稿します。その後毎日一話ずつ11:00に投稿予定です。