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第二章2 災い転じて――

「鍛冶系統のスキル持ってる人って大抵鍛冶工房で使ってるよね。わざわざ鍛冶工房でやる必要ってあるの?」


「それは勿論ありますよ! やっぱり雰囲気が出ます。雰囲気が出ると魔力を出しやすいです。ほら、攻撃スキルを使う人って詠唱する方が多いじゃないですか? それと同じですよー。」


 確かに俺も事あるごとに鉱物生成って言っているし、多く作る時は多重とか言うと作りやすいし、なるほどそんな物か。まあ最近は言わなくても出来るようになってきている気もするけど。


「で、お前ら、今日は何しに来てんだ? 用事があるなら入り口で立ち止まったりするな。とっとと入れ。」


 俺達の声を聞いて鍛冶場のおじさんが出てきた。


「あ、騒がしくしてしまってすいません。」


「今日は私のスキルの練習に来たんです。魔力が切れてフラフラになるまでやっていきます! 今はゼル君が居ますから安心して倒れられますよー。」


「……信頼するのもいいが、その、気を付けろよ。」


「大丈夫ですよー。もう手遅れですからねー。ふふふっ。」


 ……どうしてエレノアはこんなにも全力で俺との関係を広めようとしているんだ!? 顕示欲的な何かなのか!? それともマーキング的な何かなのか!? 嬉しい気持ちも一部あるけど、複雑な気分だよ……


「お、おう。そうか……」


 エレノアが鍛冶屋のおじさんにも若干引かれていた。違うんです、エレノアはもっといい子なんです。


「鍛冶場なら空いているから使っていいけど、材料はあるのか? ミスリルなんて滅多に手に入らねえだろ?」


 もう俺の能力ってバレちゃっても大丈夫だよね? ……あれ、大丈夫じゃない?


 ……そう言えばロークレイン先生以外には銅を作れるって事すら教えていないし、もしかして俺って細い糸を作り出したり砂と鉄塊だけを作れると思われてたりする……? 王様に金属を生成する様に指示されなかったし、知らない気がしてきた。


 どうしよ、教えちゃっていいかな、絶対気付かれないと思っていた銀でさえ気づかれちゃったんだし、ミスリルは――


 そうだ、今の俺は宮廷魔術師なんだから、何にも不審な所は無いじゃん! ミスリルくらい持ってるでしょう。


 俺は気付かれないように、ミスリルのインゴットを生成し、鍛冶屋のおじさんの前に差し出した。


「は? ……これは、ミスリルだよな? 一体どうやって……まさか宝物庫にでも盗みを働いたのか!?」


「あ、いえ、宮廷魔術師になったので……」


「は……は!? そういえば新しい宮廷魔術師が誕生したとか聞いたが、お前がゼルディン・リヒターか! ……エレノアちゃん、上玉見つけたな!」


「えへへへ。そうなんです。ゼル君は凄いんですよー!」


 エレノアは照れくさそうにそう言った。エレノアのそういう所は可愛いけれど、俺も少し恥ずかしい。


「なるほど、それならまあ可能か……?」


 鍛冶屋のおじさんが納得してくれて良かった。これで鍛冶に取り掛かれる。


「お前も直ぐに女に貢ぐのは考えものだぞ。世の中には想像を絶する程の性悪女っていうのもいるんだ。気を付けろ。」


 だからと言って、エレノアが悪女なんて事は無いだろう。


「でもエレノアは――」


「惚れた女って言うのは何でも完璧に見えるもんだ。別にエレノアちゃんが悪女だなんて言うつもりは無えけど、それとこれは別だ。そういう男はいい女だろうが駄目にする。それを覚えとけ。」


 そんな事を言われたって、惚れただけでそんなに見え方が変わるものだろうか? それに正直エレノアになら裏切られたっていい、そう思っているけど、これが駄目なことなのだろうか?


「大丈夫ですよ、私とゼル君はラブラブですからねっ!」


「あと鍛冶場ではあんまり惚気けるな、そういうのは二人だけの時にしておけ。目のやり場に困るだろうが。」


「すいません。……じゃあ借りますね。」


 という事で俺はエレノアと二人で鍛冶場へと向かった。



「《魔力付与》ってどんな事が出来るの?」


「基礎スキルと呼ばれる日常で役に立つスキルが大体ですね。例えば、《伝言(メッセージ)》とか《収納》とか《水生成》とかです。攻撃系統のスキルも使えますけど使う方はあんまり聞きませんね。私は杖に付与してみたんですけどね……。魔力効率が少し悪めですけどその元々消費魔力が多くなければあまり問題はありません。」


 へー、魔力付与の中に《水生成》なんてあるんだ……確かにメイドさんとか普通にやっていたイメージがあったけど、そういうスキルが使える人を雇っていたんだと思っていた……生成スキルの立場が……


「空を飛ぶスキルも付与出来たりする? 宮廷魔術師の人皆飛んでたけど……あ、支給された装備品を使えば俺も出来るのかな?」


 個人的に一番使ってみたいスキルだ。空を自由に飛びたいなー。


「多分それは《飛翔(フライ)》ですね。魔力消費量は多めだとは思いますが。今は出来ませんけど、私もいずれは付与出来るようになるとは思います! 折角ですから私が付与した装備で飛んでください!!」


「あ、はい。」


「えっと、そのミスリルをこっちにお願いします。」


「インゴットの状態で大丈夫? 整形とかをしてからする物じゃないの?」


「大丈夫ですよ。形を固定するスキルを指輪に付与しているんです。こんな風に、《シェイプフォーム》」


 エレノアの魔力が指輪に流れ出して、そのままインゴットの形を加工しやすい様に変えていった。商会のお嬢様ってだけあって、エレノアも結構色々な物を持ってるんだなー。正直15歳の俺よりもよっぽど裕福そうな暮らしをしている気がする……その割に家は小さめだったけど。


 雑談を終えた所でひとしきりエレノアの魔力付与(エンチャント)に付き合ってから、鍛冶場を後にした。


「じゃあまた明日も、明日も……?」


 去り際に、おじさんに言いながら気付かされたのだが、これから毎日ここに通うとなると、流石に不審にしか感じないんじゃないか!? ……まあエレノアとは親しそうだし教えちゃっても大丈夫か。よし、白状しよう。


「あの、すいません。実はミスリルは俺が作ったんです。こんな風に、《鉱物生成》、内緒にしておいて下さいね。」


「……は!? おいお前!!!」


 その直後、店の入り口に来ていた男が、俺の所へと詰めてきた。


 俺がスキルを使用する瞬間を店の入口に来た客に目撃されてしまったんだ。どうしよう……

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