第一章17 告白
あの後、俺はフローレス商会へと向かっていた。同じ宮廷魔術師のレンヤに同情にも似た会話に突き合わされて、兄さん達には一時的にではあるが、こちらが申し訳なくなる程謝罪をされて、そして帰路に着いた。
正直今の俺は少しだけ、これから告白をしなければならない事に気後れしていた。
決死の覚悟で向かったというのに、その実唯の兄弟喧嘩であったからかもしれない。兄弟喧嘩というには少々規模が大き過ぎたけれども。
それでも、自分の事を非常に情けない様に思われた。それでも家を出る前に約束をしたのだから、告白はする。告白はするけれど、もう少しだけでいいから、フローレス商会に到着するのを待って欲しい。
決心はしている、でも、まだセリフとかも考えていないし、それにフラレるかもしれな――
そこまで逡巡してから思った。流石にそこまで考えてしまうのは男としてどうなのだろうかと。あそこまでエレノアに言わせておいて、それは流石に無いだろうと。それでも、エレノアに拒否される事は怖い。
だが、時間は経過し、馬車は目的地へと到着する。エレノアの家に戻ってきたのだ。
もうあまり考える時間は無い。だから、覚悟を決めよう。
「ゼル君っ! 無事だったんですねー!! 無罪が認められたんですか?」
俺はエレノアに抱きしめられて、心臓が脈打ち始める。
今か、今言えばいいのか? いや、違う、気がする……それとも、俺は逃げているだけなのだろうか?
「ただいま。無罪というよりは、元々罪が無かったそうだ。その、俺の兄さん達がやったたちの悪い悪戯だったらしい。エレノアにも心配掛けてごめん。」
今の一言で嫌われていないだろうか? そんな疑念が俺の中で芽生え始める。でも一つ分かることは、今の俺は冷静じゃないという事だ。落ち着け。
「大丈夫ですよー。元々そんなに心配していませんでしたから。」
「もう騒動にも巻き込まれる事は無いらしいから、俺がここに住むって話は――」
「折角ですから、これからもゼル君は家に住んでいってくださいよ。」
それは、なんて返答して良いのかわからない。今快諾したら、体目当てだと思われはしないだろうか? まだ出会って一ヶ月くらいしか経っていないというのに。
「そ、それは……まだ恋人という訳でも無いし。」
「じゃあ今恋人になってしまえば良いじゃないですか? お父さんはもう仕事に出掛けていますよ? 多分夕方まで帰ってきませんよー?」
……エレノアが言った言葉の意味は、よく理解していた。だからこそ、更に心臓が脈動を始める。
「一度落ち着いて話合いたくありませんか?」
そう言うとエレノアは俺を寝室へと誘導し、ベッドの上に座った。何故か分からないが、普段よりもエレノアに対して興奮を覚えていた。
「ゼル君は、私のこと、どう思っているんですか?」
……今俺が言うべき事は、分かっている。覚悟もしている。だから――
「エレノア、一目惚れだった。君を助けた時に、間近で見た時からずっと。これからもずっと好きだっ! エレノアの事を必ず幸せにする! 俺と結婚してくれっ!」
俺はエレノアをベッドに押し倒していた。エレノアの体が柔らかかった。腕も、足も、胸も。息が荒くなるのを感じていた。
「私だって、三年前にゼル君が最初に店を訪れた時からずっと好きだったんですよ? だから、とっても嬉しかったんです。私が困っている時に駆けつけてくれて、まるで王子様のようでした。それなのに、私の心配も知らないで、ゼル君は危なそうな目にしょっちゅう会いますし、意気地なしで中々好意を示してくれませんし、大変でしたよ? でも、許してあげますよ。」
「それは俺と結婚してくれるって事か?」
「……今のでやっぱり許す事を止めにしました。ねえ、ゼル君。帰ってきたらチューしてあげるって言いましたよね。」
そう言うと、突然エレノアは、俺の唇に唇を押し重ねて、接吻した。ただ、唇と唇が触れ合っただけなのに――
なんだこれは……!? よく分からない感情が溢れ出してくる。頭がボーッとしそうになる。
「どうしたんですか? 今日はお父さんは出掛けているんですよ?」
エレノアは俺の耳元でそう囁く。
「いいんですよ? 私の事が好きなんですよね? だったら、私もいいですよ? ゼル君がしたいように、めちゃくちゃにしてくれても――」
その言葉を聞いて、理性を保つことは流石に出来なかった。服を脱がせて、何度も接吻をして、その後、行為に及んだ。
一章はこれで終わりになります。二章は結婚に向けて




