第一章1 期待に胸を膨らませ
俺の名は、ゼルディン・リヒター、リヒター家の三男だ。
俺は今日という日を幼い頃から待ちわびていた。15歳になったものは、神殿へいき、神から授かったスキル名を教えて貰えるのだ。
貴族であっても、農民であっても、スキルの良し悪しで人生が大きく変わるといっても過言ではない。
生まれは農民であったにも関わらず、宮廷魔術師になった、爆炎のカザン、雷光のレンヤは、平民達の間では最も人気の物語にまでなっている。
そして、逆もまた然り。詳細は伏せられてはいるが、国王が先日アウグスハルト殿下を追放したという話は、未だに語り草になっている。
俺は今日、緊張と期待が入り混じった様な気持ちで、次に来る順番を待っていた。不安が3割、期待が7割といった所だ。
勿論スキルを授かって直ぐにその真価が判明するとは限らない。しかし、明らかに当たりの能力、外れの能力は分かる物だそうだ。
そして遂に、俺の番が来た。
「ゼルディン・リヒター、来なさい。」
「はい!」
神官の前へ俺は出る。
「ここへ、血を捧げなさい。」
神官がそう言って出したのは、刃が飛び出している小さな壷だった。兄様達から聞いたとおりだった。ここに自分の血を垂らすことで、どういう仕組みなのかは知らないが、神様から授かったスキルが分かるのだそうだ。
ふうぅ、緊張する手を深呼吸をして抑え、刃に自分の親指を押し当てた。
そして俺の血は、壷の底へと滴り落ちて行き、机上の上にある魔法陣が発光し始めた。
黄色を基本とした、虹色の光。この光が意味するのは、土属性のユニークスキルだ!
兄様達も、この儀式の際に眩いほど虹色の光を輝かせたという噂があった。そして、二人は共に貴族院でトップの成績で卒業したのだ。
行く行くはこの俺も、同じようになって、リヒター家を今よりももっと繁栄させて見せます!
「あの、俺のスキル名を教えてください!」
土属性のユニークスキル、どんなスキルになるのだろう。土属性で有名な二つ名は……【要塞】くらいだろうか。あまり思いつかなかった。
「うむ、そなたのスキルは《鉱物生成》、聞いた事も無いユニークスキルじゃな。生成系統ではあるだろうがな。」
鉱物生成、か。なるほど、確かに聞いた事がない。だからこそ、俺のユニークスキルとしては相応しい。きっと父上も母上も、兄上も皆喜んでくれるはずだ!
その時の俺は、そう思っていた。人生に於いて、今まで通りに、何もかもが上手く進むのだろうと、そう思っていたのだ。