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銀狼と狐
月明かりに照らされて、1匹の狐が空を見上げる。
気高くて威厳のある狼になりたい。満月の日にはいつもこの岩の上で願いをかけていた。
あの日、あの銀色の狼に助けられてボクは変わった。傷だらけの身体で餌になってもおかしくなかったボクを救ってくれるどころか、他の狼から守ってくれた。
彼はあまり喋らなかったが、ボクの傷が回復すると、もう大丈夫だな。と、短い言葉を残して去っていきました。
それは丁度、今日みたいな満月の夜のことです。
あれから彼とは会っていません。
彼が何故ボクを助けてくれたのかも分かっていません。
けれどいつか再会したとき、あなたのおかげでボクは成長出来ましたと伝えたい。
その為にも、ボクは彼みたいな立派な獣になりたい。
狐は満月に今日も願う。
本当は狼になれないのは分かっている。けれど、ボクは彼が誇れるボクになりたい。