短編小説① 『青春は、味の無くなったガムのよう。』
息抜きに、1000字くらいの短編を。
この世の"青春時代"なんて、こんな風に過ぎてくものだと思います。
「あたし、ガムを噛んでると笑えてくるんだよね。
だってさ、噛めば噛むほど味が無くなっていって、遂には只のゴムになるでしょ?
作られた時には、もうすでに味の限界が決められててさ。
あたしらみんな、限界を知りながら、同じ回数噛んでは捨てるんだ。」
「んー、おれはガム、好きだけどな。」
健二は何も考えずに、そう答えた。
いつもそう、あたしの話すことの一割も理解せずに、理解しようとせずに、ただただ返してくるのだ。
あたしは知っている。
世の中の人の大半が、健二だって。
あたしは少数派で、健二たちから見れば変わってる、メンドくさい人種なんだって。
夕陽が差し込む教室。
机も椅子もあたしの肌も、オレンジ色に染まって。
ここが唯一、あたしも多数派になることができる場所なの。
勝手に多数派に染めてくれるから、楽でいーや。
何も考えなくていーから。
「ねぇ健二。あたしら、別れない?」
「え?やだよ、突然なんだよ。」
ほら、また何も考えずに返すじゃん。
あたしは夕陽かっつーの。
ちょっとは考えろよ、自分のこと、あたしのこと。
「じゃあ、もうちょっと付き合う。」
「ん、良かった。」
短いキス。
健二の唇は葡萄の味がした。
健二の味じゃなく、ガムの味。
莉奈はいつも難しいことを言う。
おれは馬鹿だからイマイチ分からないけど、きっと莉奈の言うことだから正しいんだろう。
莉奈と会話するのは本当に難しい。
突然、ガムを噛むと笑っちゃうだなんて、どう返せばいいんだよ。
さっきは「おれはガム、好きだけどな」って返したけど、あれは正解だったのかな?
不機嫌そうな顔で睨まれたから、多分不正解だったのだろう。
莉奈の考えることは難しすぎて、おれには理解できないことが多い。
なるべく理解出来るよう、頑張ってはいるのだけれど。
「ねぇ、トイレ行こ。」
「おう。」
旧校舎の3階、奥のトイレがあたしと健二の"場所"。
あたしは舐めてもなんの味もしないモノを舐めて、健二もなんの味もしないところを舐める。
最初からなんの味もしないのに、ただそうする。
刹那だけの快楽を求めて。
いや、求めてるかも分からないや、だってただそうしてるだけなんだもん。
「ねぇ、これ、気持ちいいの?」
「うん。莉奈は?」
「いい。」
あたしは馴れた手つきでゴムを着ける。
今日のは葡萄の匂いがするやつだった。
ムカつく。
青春は、味の無くなったガムのよう。
使い捨てるだけの代物。
今日という日も、やっぱりガムみたい。
あぁ、あたしって、何も持ってないや。
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