その時は貴方が私を殺してね。
ごめんなさい、短めです。
シュー ・ アルバート
主人公 光属性兼闇属性
魔法を使うことに関しては、天才。
ただ単純な魔力はマリアンにも、マティルドにも負ける。
エリオットJr.・アルバート
シューの兄 火兼土属性
土の精霊エントの加護つき。
物理最強。
マリアン・ホワイト
ゲームのヒロイン
オズワルド・アルバート
シューの兄、エリオットJr.の弟
ユーリ・クラディウス
執事見習い
父エリオットは今日も今日とて王宮で残務だ。あの事件が起こったから致し方ないとは思うが、息子が変な人間に絡まれて体調が悪そうにしていても帰宅する気はないらしい。この家には父以外のシューの面倒を見ている人がいるから構わないが、息子だと思っているというくらいなら王宮にシューがいるうちに一目見るだけでも来ればいいのに、それができないから息子たちとの関係は良好とはいえないのだ。
エリオットJr.はシューより遅れて数時間で家に戻ってきた。オズワルドは今日は帰宅日ではないから、家族は二人のみだ。執事見習いのユーリがシューをエリオットJr.が呼んでいると迎えに来たので、大人しくついて行った。エリオットJr.がいた場所で、あれだけ「未来」を知っているような発言をしてしまったのだから、呼び出されるだろうと覚悟はしていた。
「疲れているところ、よく来た。」
「いえ、あの子はどうなりました?」
「まだシューの魔法で眠ってはいるが、死刑は免かれまい。しかし、まだ暫く、数年は生かされておくだろうな。」
「まだ10にも満たなそうな子供ですから、極刑の必要性は感じませんが。」
更生可能性というのは現代日本でもかなり議論を呼ぶが、10代以下の子供は良くも悪くもまだ周りの環境によって変化する可能性があるから、死刑に処す必要性がないとシュー自身は思ってる。(その周りの環境が悪ければ更に悪化するだけという可能性もあるとしても)
「オルレアンには彼女を受け入れる場所がない。ならば、再犯の可能性が高いく、またアルビオンは今回そこまで介入できない。これで彼女の処遇に関しては以上だ。」
脳裏で彼女の消えそうな赤い瞳と、少女の絶叫が反芻する。
「それから、彼女が侵入した経緯だが、シューの予想と同じだ。クリスが衛兵から話を聞き出したのだが、最近可愛らしい真っ白な子猫がうろちょろしていたらしい。それが今日門の前で少し可愛がっていたところ、門の中に入ってしまったらしい。」
「猫。」
シューが以前その方法で王立魔法研究所に侵入したが、猫というところも全く同じだった。彼女が未来でシューと知り合いだったとすれば、シューから教えて貰ったんだろう。
「確かに。あの子は狂っていたけど、悪魔憑きじゃなかった。」
シューがマティルドと手を繋いだ時、シューは身体がぐちゃぐちゃになりそうな感覚があったが、ティキを抱きしめていたから分かるのだが、悪魔からはそんな力を感じないのだ。
「…それで、お前とは知り合いだったのか、『未来』で?」
「そうらしいです。僕には彼女と出会った記憶がないですが。それに、僕は僕が死ぬ未来を知らない。彼女が話していたけれど、僕は殺す気はなかったにしてもマリアンヌを殺してしまった。その後色々あってエル兄様に僕を殺してくれとは頼んだけど、その時は聞いてくれなかった。マリアンが助命を嘆願したから。…それなのに、エル兄様が僕を殺す?」
「ちょっと待て。あまり俺がお前を殺したと連呼しないでくれないか。それに、お前が知っていることを最初から教えてくれ。」
シューもまた少女の出現で大混乱していた。彼女が口にしたのはシューの知らない「未来」だ。
シューは部屋の隅で控えているユーリに目をやった。彼は純粋なアルバートの人間ではないから、話すべきか迷うのだ。
「ユーリ、人払いをしてから少し休んでいてくれ。」
シューの気持ちを察して、ユーリを席に外し残ったのはシューの側仕えであるカーティスだけだ。
「多分兄様は僕を許せない、と思います。」
「どんな話をされるのか分からないから、断言まではできないが、シューの不利益にはしないと誓おう。」
「ううん、僕は裁かれるべきではあるんだ。今まで周りのせいにして無実のフリしていただけで。」
あの少女が裁かれるのであれば、シューの罪も裁かれなければならない。盗難も闇魔法も、魔族と連絡を取っていたのも全てこの国では犯罪なのだから。
「兄様は、僕が変わった日を覚えていらっしゃいますか。」
「神殿に行きたい、と言った日か? いつもとは目が違ったな。」
「あの日僕は記憶を取り戻したんです。」
それから、美代子とゲームだということを除き、未来に起こり得ること、マリアンが救国の鍵となること、それから、シューの罪について全て話した。カーティスに告白したとき、嫌われるかもしれないと思ったが、今は殺されるのだろうか、家から追い出されるのだろうかとばかり考えていた。エリオットJr.は口を挟むことなく、シューの告解をただ静かに聴いてその後にゆっくりと口を開いた。
「一つ、気になることがある。」
「なんですか?」
「どうしてお前は魔族側ではなく、人族側に味方した?その未来の記憶があれば、より人族を蹴落とすことなんて容易だっただろう。」
問われてもう一度最初を振り返る。シューはあの日美代子を取り戻した。あの日から暫くは美代子の人格が強く影響していて、人族のシューが魔族の味方するのは「おかしい」と思っていた。その後はマリアンヌと出会ってマリアンヌの「生きたい」という努力に寄与したかった。そして今は「バッドエンディングを『絶対に』回避しなければならない」と思っている。
「僕はそこまでポジティブじゃなかった。未来の記憶を知ったことで、生きているということがどうでも良くなったんだ。だから、それまで犠牲にしてきた人々に対して懺悔の意味で神殿で細々と生きれればそれでよかった。僕はあの少女と同じように裁かれるのならそれでもいいと思います。」
「その話は待て。俺は裁判官ではない。どちらかというと黒に近い為政者側の人間だ。受け入れ難いかも知らないが、よほどの事がない限りお前を裁くことはできない。」
「それもそうですよね。…でも、もし、僕が僕ではなくなって再びマリアンヌを殺してしまうのならばその時は兄様がちゃんと僕を殺してね。」
エリオットJr.は眉間にシワを寄せた。
「…まあ、罪人は最期を選べないというのなら仕方ないです。」
「シュー、残念なことに人には最期を選ぶ権利などない。あるのはどのように生きていくか望む権利のみだ。未来で俺がレディ・ホワイトの嘆願でお前を殺さなかったのも、レディがお前に生きていて欲しいと思うようにお前が生きていた結果だし、その後お前を、俺が、殺したというのもそういった生きた結果に過ぎない。ただ、お前が未来でアルビオンの敵になるのならば、またその時引導を俺が渡す。だから、もう『過去』に囚われるのはやめろ。」
「か、こ。」
「お前に石を投げて良いのは、今まで一度も罪を犯さなかった人間のみ。だけれども、俺たち家族は無実ではないだろう?」
エリオットJr.の実力と性格に信頼をしているが、人格についてはシューは許せていないところがあるし、オズワルドを全て許したわけではない。それ以上に父親は最早父だとは思えていない。確かに無実ではないだろう。
「俺たちは赦し合うか、貶し合うか、どちらかしか選べない。これが俺たちが望み行動した生き方の末路だ。俺たち全員の結果であり、お前だけ背負うのはおかしいんだ。」
分かったか、という念押しに少しずつシューの思考も緩んできた。
「…ありがとう。」
ずっとシューの過去を父やエリオットJr.に話したら、そこでシューの人生は終わると考えていた。それはシューの思慮の無さも確かにあるが、微妙に少しずつ今までずれていたパーツがあるべき姿に戻りつつあるということなのかもしれない。
愛称
エリオット→リオ、エル、エリー
(エリオットのあだ名は私の思いつきです)
オズワルド→オズ、オーズィー




