How do l live on such a field?
グイード・デ・ガスペニ(16) 攻略対象の1人。変態芸術家で、美しければ老若男女問わず。
ウィリアム・ジョーンズ(16) 攻略対象の1人。兄オズワルドの親友で、シューの友人。
マリアンヌ・レーヌ・ド・オルレアン(14) ゲームシナリオ上は悪役だが、元々憎めないキャラクターだった。現実では元日本人のキャバ嬢真理亜(源氏名)が転生した。
エリオットSr・アルバート(40) アルビオン公爵であり、オルレアン宰相。シューの父親。頭の良い人間であるが、家族関係は不器用。妻ディアナ公爵夫人まで呆れている様子。オルレアンの王太子シャルルは優しい人だというが、アルバート三兄弟は首を傾げる。
ナイツェル司祭(未登場) シューの出生証明書を書いた人物で、闇属性の判断をしたとされている。
季節は秋になり、だんだんと風が冷えてくる。夏も元々日本とは違って日が沈んでからの夜は寒いのだが、さらに冷たくなる季節だ。
「冬になる前にマリアンを捕まえにいくわ。あの地域、今年夏の不作で冬は厳しいみたいだから、下手をすれば死んでしまうわ。」
マリアンヌに呼びつけられて、そう言われたのはいいが、
「そのマリアンという子が何かあるんですか?」
「ちょっと、ガスペニ卿。口を挟まないという約束じゃないですか。」
シューの隣で芸術しか興味のない男グイードが何故か座っている。
時は少しだけ遡る。
「シュー・アルバート卿。」
「何故ここにいるんです、グイード・デ・ガスペニ卿。」
「僕は美しい人がいるところに現れるんですよ。」
今まさにマリアンヌに呼びつけられて会いに行こうとした矢先にグイードが現れたのだ。
「ああ、そうですか。それでは失礼しますね。」
「どこへいくんですか?」
グイードの質問にも答えないまま、王宮から来た馬車に乗り込もうとしたのだが、
「僕も乗ります。」
何故かグイードが押し入ってきたのである。
「な、誰の許可を得て…。」
「見たところシュー・アルバート卿の護衛はお2人、御者と城の人間を含めても5人。近頃王都にきな臭い人間がいるようですから、心許ないでしょう。なので僕もついて参ります。」
「いや、貴方も信用は出来ないんですけど。」
確かに彼は攻略対象のキャラクター、元々能力は他の人間達よりは高いし、悪い人間でもないということは分かってはいるが、それだけで信頼するのも無理だ。
「御者台にいますから。」
「嫌ですってば。」
シューも頑固だが、グイードもなかなか譲らなかった。刻一刻とマリアンヌの面会時間か迫っていた。
「シュー様…。」
城の人間の方が困り果てていた。マリアンヌを待たせるのは良くないし、いくらシューより下位に位置する伯爵家の人間だからといっても、社交界ではそれなりに力のある夫人の息子だ。あまり蔑ろにするわけにもいかず、御者台に乗せるのも外聞が悪そうだった為、グイードの馬での随行を了承した。
マリアンヌはグイードが側にいることを驚いたが、二つ返事で了承した。それは彼が攻略対象であって、いつかは力を借りることになると分かっていたからだ。
「マリアンというのは、恐らく光属性産まれの人間ですわ。はっきりと確認したわけではないので、公言はできませんが。」
「ほお、それはそれは。現在魔族がきな臭いようですから、光属性産まれは貴重です。その可能性があるのなら、保護しにいくべきですね。それにお二人で行く予定なのですか?」
シューは神殿の仕事をできる限り休みたくはないので、行くつもりではなかったが、フィリップがオルレアン王都周辺で統率を取っていたガイルが消えた今、街道は危険で王女とその周りの護衛だけでは不安があると言ったから、またもや神殿を休暇する羽目になったのだ。
「勿論従者も護衛も付けますけれど。」
「そこは辺境ですがジョーンズ伯爵の領地ですし、ウィリアムを連れた方が安全では?オルレアン王国とはいえ、王家の直轄領ではないのですから。」
「それも、そうですわね。力を貸して頂けないか頼んでみますわ。」
グイードは学院での成績や素行態度に問題があるようで落第するかもしれないとオズワルドが話していたが、頭は悪くないらしい。
「ウィリアムには学院で僕から聞いてきますよ。ジョーンズ伯からの許可はそちらに任せてもよろしいでしょうか。」
グイードが王女殿下と話を進めてしまって逆にシューが口を挟めなくなってしまった。
「でも、どうしてガスペニ卿が私たちの話に乗ってくれるのです?」
「恥ずかしながら下心ですよ。僕は美しい人の味方ですから。それから、僕も是非連れて行って欲しい。」
王女殿下の御前でなければ、さっさと彼から逃げて退室していた。ゲームではヒロインの設定上(見た目は普通という設定)それなりに攻略難度は高かったから、妙に勘ぐってしまうが、恐らくマリアンヌとシューの顔が彼の好みに合致したんだろう。
「僕行かなくてもいい?」
「絶対来て欲しいとは言えませんけど…。」
一度はシューが行かないことを了承していたが、不安げに肩を落とした。
「冗談。ガスペニ卿は進級は大丈夫なんですか。」
「大丈夫大丈夫、僕はやればできる子ですから。もし落ちても、シャルル殿下と同学年になるだけだから。」
魔法学院の進級試験、およそ半数が落第するらしいから、彼は落ちることに抵抗感がないようだ。それに彼は芸術の方で実績を残しているから、大きな問題でもない。
「シュー・アルバート卿に気にして頂けるなんて嬉しいです。」
この男に対して何を話したところで変わらない。「ビル様に迷惑かけるのはだめですよ。」
王女殿下にジョーンズ伯爵に許可を得てきてもらうこととグイードにウィリアムに頼む事を頼んだ。シューがあまり乗り気ではなかったせいか、シューがやることといえば旅の準備くらいだ。後はエリオットJr.に話だけでも通しておくべきかと思ったが、王宮にいるマリアンヌが宰相エリオットにも話を通すというので、家への報告も簡単にで十分だ。
「グイード。」
王宮を出て、グイードも含めて乗ってきた馬車に乗り込もうとした時、シューは彼に声をかけた。
「なんで僕に目をかけるの?」
彼が美しい人に興味を持つのは知っていたが、彼の周りは元々容姿端麗の人が多いのだ。それにいくら美しても、喧嘩して仲が悪いオズワルドには厳しい態度をするくらいには普通の人間であるし、ずっと冷たい態度を取っていれば、嫌になっても可笑しくはないはずだ。シューの質問に驚いたようだが、彼はくすりと微笑んだ。
「貴方が僕の作品を食い入るように見ていたから。」
すっかりシューは忘れていたのだが、お茶会でオズワルドがグイードの絵がホールに飾られていると話していた。それがあの玄関ホールに飾られた大きな宗教画だ。グイードが才能豊かな芸術家であることは知っていたけれども、まさかあれほど立派な精霊の絵画をこんな少年が書き上げてしまうのかと信じられなかった。
「…あの、精霊画?」
「そう。あれは名前が残っていないのだけれど、遠い国にいた光の精霊なんだよ。そのお話が僕は好きでね。」
簡単に言ってしまえば、セクシーな精霊の誕生話だった。このファンタジックな世界でどこまで事実なのか分からないが、精霊は肉欲なんて遥か遠いところにあるような存在と現在は捉えられているからこそ、その話がより精霊を身近に感じられるのがグイードには良かった。
「絵が凄いからといって貴方の人格まで評価した訳ではないです。」
「作品の評価と作者の人物評価なんて元より離して考えるべきだと思いますよ。芸術家なんて常識から外れて考える生き物ですから。それに貴方が僕のことに嫌悪感を抱いているのにも関わらず絵を評価してくれているのは僕の腕を素直に認めているという何よりの証拠で嬉しいです。」
シューはお手上げだと肩をすくめる。やはりこの男も普通の人間だった。自分の創作したものを喜んでくれた人間に甘くなるのは、美代子もよく分かる。
「ビル様、ウィリアムに宜しくお伝えください。」
「ええ、勿論。お任せください。」
ある程度距離感があれば、グイードはいい男だと思えてきた。オズワルドも悪い奴ではないとは言っていたのだから、変に意地を張るのは公爵家の人間としても良くはない。
「…あと、もう敬語使わなくていいです。」
「ふふ、今日頑張った甲斐があったなぁ。嬉しい、シュー・アルバート卿。」
そう言ってすぐ手にキスしようとするのを反対の手で阻止した。
「シューでいいですから、触らないでください。」
むすっとして、馬車に乗り込んだ。グイードは馬で付いてきたので、シューが馬車にのりこめば彼は追ってこなかった。
しかし、馬車は動かなかった。カーティスが降りて確認してくると、必死に渋面を隠した顔でシューに告げる。
「旦那様が、シューにお話がしたいと。」
カーティスが呼ぶ旦那様、勿論エリオットJr.やオズワルドではない。未だになんとも話せない父親だ。
「ちゃんと行きます。グイードは帰らせといて。」
シューの護衛として名乗り上げて王宮に付いてきた訳だが、長くなるかも分からないのだ。
「畏まりました。」
通されたのは、王宮内の宰相の執務室だ。いくら家族とはいえ簡単に通してはいけない、政治的な資料やらがあるはずの部屋だ。護衛のカーティスとフィリップは部屋の外で待機を命じられた。
「ご無沙汰しております、お父様。」
「ああ、よく来た。」
父エリオットは動かしていた手を止めて、立ち上がってシューを迎え入れた。シューは戸惑いながら机を隔てた父の前に立つ。
「如何なさいましたか?」
エリオットはすぐには答えず、机を避けてシューの前に立った。シューが戸惑っていると、父親はシューの頭の上に手を乗せた。
「辺境の村までの道中、海路があると聞いた。」
「ええ、そうですね。陸路より海でアキテーヌの街から回った方が早いとに聞いて。」
それを聞くと、兄エリオットJr.以上の鉄仮面が少しだけ歪んだ。
「海には気をつけなさい。」
シューが分からず聞き返すと、
「お前は海から嫌われているのだから。」
「はい?」
生まれてこのかた海になど行ったことはないが、アルビオンは三方を海に囲まれている殆ど海の国だ。その地域を収めるアルバート家三男のシューがなぜ海に嫌われているのだろうか。たしかにアルバート家の人間はイフリートの加護を得ている父エリオットも含めて水に弱い火属性の家系ではあるが、それが海に嫌われる理由はない。海の精霊も幾人もいるし、マリアンヌに加護を与えているオケアニスという精霊も海の精霊だが、シューに敵対している様子ではなかった。
「…どういう、ことですか?」
思っている以上に冷たい言い方になってしまった。男が何かを知っているようなのに、きちんと教えてくれないのが腹立たしかった。ティキのように回りくどくてもいいからちゃんと言って欲しい。
「私も詳しくは知らないが、シューを海の精霊が憎んでいると聞いた。」
「…それは?」
「ナイツェルだ。精霊の考えていることは分からない。」
この場にフィリップないしフアナを連れられなかったのは残念だった。実際の事実がどんなことかは分からなくても彼の言葉が真実かどうかは確かめられたはずだ。頭に置かれた撫でようともしない手が重く感じた。
「お父様はなんなのですか。」
「なんなの、とは。」
「僕のことをどう思っているんですか。」
今は見ていない海よりも目の前の男のほうが怖かった。
「…どう、か。」
「少しでも僕は貴方の息子なんですか?」
「シューが、私を父親だと思っているのなら。」
ああ、嫌いだと心の底から思った。比べられないくらいグイードの方が良い人間だった。
「僕は、貴方のこと大っ嫌いです。父親じゃなけりゃ良かったと思ったことは何度も思ったけれど、父親でないと思ったことは一度だって無かった。」
「シュー。」
頭に置かれた父親の手を振り払った。
「でも、息子ではないと貴方が言うのなら、それはそれでいい。とっとと縁を切って神殿に追い払ってください。」
「…それはしない。」
シューは激しい感情で父親を睨みつけたが、エリオットが今まで見せたことのないような、深く眉間にしわを寄せて、様々な感情で迷った子羊のような、力のない目でシューを見ていて、すーっと激しい感情が少しずつ冷めていった。
「…貴方は僕を。」
「シュー、すまなかった。」
「なにを。」
「私の覚悟が不足していたんだ。お前を育てると言う覚悟が。」
「バカにしていますか。」
「アキテーヌから帰ってきた後、ディアナがお前をアルビオンの屋敷に呼んでいると聞いた。もし、真実が知りたいのならディアナに聞いてほしい。」
「貴方からは話さないんですね。」
「私ではきっとうまく伝えられないのだ。」
オルレアン王国の中で1番巨大な領地を持ち、1番力のある貴族であり、この国の宰相という男は、予想以上に弱い男だった。
とりあえずマリアン捕まえに行きます。




