She has never participated in the croquet game.
Hi,ma’am.Alice is not published in the Middle Ages.
Exactry.But it is a fictional world.
エリオットJr.は多忙な人間だった。大多数の貴族が不動産と金利など不労収入がほとんどで、有閑的な暮らしをしているわけだが、彼は自分で監査しないと気が済まない性質だから他の有閑貴族達からは無駄の多い男として思われているに違いない。元々はアルビオン公爵ーーーエリオットSr.の仕事で彼自身の仕事ではない仕事を引き受けているので、更に周りからすれば非効率的な男というわけだ。
そのような男だったから、シューとの打ち合わせは、シュー自身が出向く予定であったのだが、その男が騎士団の見回りの間を縫って神殿に訪れた時は心底驚いたのだ。神殿の方にはエリオットJr.の書状を持った伝令係が先に断りを入れてあり、こちらの対応が困ることもなかった。見回りの間もあって彼の隊の副隊長クリストファー・オールセンを連れ立っていた。
「先日はオズ兄様はウィリアム・ジョーンズ卿を連れていらしたんですよ。」
「ウィリアム君が?ああ、そういえば彼が大蛇に咬まれた時に解毒したんだっけ。」
「クリスは連れてきたわけではなく、付いてきたんだ。」
「俺だって久しぶりに弟くんに挨拶したいと思うだろ。気が利かないな。」
2人の様子を見ていると、オズワルドとウィリアムとは正反対だが、よく似ているような気がした。
「クリスさんにそう言って頂けるのは光栄です。」
「光栄だと言ってくれるのが、俺としては光栄だよ。」
「さっさとお前の要件を言え。時間が限られているんだ。」
「それなら僕が後日お伺いしますが?」
「いや、この件は俺としても早めに対処したいところだからな。」
シューが日を改めようとカーティスに確認を取る前に、エリオットJr.が止めクリストファーをにらんだ。
「悪かったよ。騎士団を辞めるから、その挨拶に来たかったんだ。一緒に戦った仲間だし。」
「騎士団を?」
「ああ、父が引退するから、伯爵を継ぐんだ。騎士団には勉強の為に入っていたに過ぎず、オールセン伯爵が騎士団にいるメリットないからな。」
オールセン伯爵家はオルレアン王国には属しているが、民族としては別で、古くは違う国の貴族だった。騎士団の所属は紳士としての教育と、軍事協力する際の連携を取りやすくするための勉強にしか過ぎなかったらしい。
「辞めるという話はクリスさんだけなんですか?」
「オズワルドか…。たしかにそう考えていたこともあったが、暫く俺は辞めない。クリスと共に辞めたら引き継ぎが面倒だからな。」
「お父様が腰をやらなきゃ話は違ったんだけどね。王都には度々戻らなきゃいけないけど、寂しくなるよ。」
クリストファーもエリオットJr.と同様長男、期待と共にやるべきことも多い。働いているとは言え、クリストファーが騎士団に所属していた期間はある種のモラトリアム期間、青春だったのだろう。シューにそれを告げるクリストファーは、卒業式の日を迎える大学生のようにも見えた。
「今度送別会をアルバートタウンハウスで行うから、来たらいい。」
「アルバートの?」
「オールセンのタウンハウスはパーティをするような屋敷ではないからなのと、正式な除隊式の後の送別会じゃなくて、同年代の仲間内のお気楽なパーティでエルが主催してくれてるからなんだ。」
美代子は勝手に大学生たちのふざけた仲間内のパーティを想像してしまうが、正しい上流階級のパーリーピーポーならばシューでも気楽だろう。
「それから本題だが、クリスには退席させるから安心しろ。」
「折角来て頂いたのに?」
「元々俺はこの為に時間を開けたからのだから。」
「はいはい、無理に付いてきて悪かったよ。弟くんは気にしないで。元々そういう約束で付いてきたんだ。」
シューがエリオットJr.の隊にいたのは高々2週間程度なのにもかかわらず、クリストファーがこのエリオットJr.に無理を言って挨拶に来てくれたことは、温度感を失いかけているシューの心を温めた。
「ありがとうございます、クリスさん。」
「とんでもない。君には世話になっているからね。」
去り際にパチンとチャーミングにウィンクをして、彼は部屋から退室した。
「クリスもだが、お前は随分クリスに懐いたな。」
「クリスさんは僕が兄様の弟だからだと思いますけどね。」
なんだかんだ言ってシューもエリオットJr.と似ているのだ。エリオットJr.と仲良くなった彼が、シューの扱いに長けているのも頷ける。さらに言えば彼は弟がいて年下の面倒を見るのに慣れているから、エリオットJr.と似ている年下のシューに良くしているのだろう。
「さて、話をしようか。」
居住まいを正し、エリオットJr.は空気を変えた。
「最近王都で少しばかり流行っている病について。」
「流行病というのは、病原体が原因なんです。悪魔の仕業ではありません。」
魔法や悪魔がいる世界で、美代子の世界の知識が正しいのかすらきちんと検証したわけではないが、考え方次第は間違っていないのは今までの神殿での治療を通して確かめている。
「病原体な。」
「そう、それがこの世界では大概闇属性ということが重要です。」
「なるほど。だからこそ、光属性の治癒魔法が効果的というわけだな。」
シューの言い回しに少しばかり疑問を抱きながらもエリオットJr.は同意だけ示す。
「その通りです。この病原体というのも、最初は重症化しますが、2度目かかった場合比較的軽度になります。それは人間の身体には、この病原体に対して抗体が生まれるからです。これが闇属性の病気耐性付加魔法の理屈です。病気を作り出すことができる闇属性の魔法だからこそできるんです。」
シューの説明には納得しているようだが、どうしても腑には落ちないようだ。
「これをフィリップに頼み、カーティスにかけて貰っていましたが、カーティスは体調を崩したことはございません。」
「…闇属性か。」
「これはアルビオンで研究するしかありません。闇属性が特に忌避されるオルレアンの王都では。」
「その魔法を完璧にし、病気を予防させる。たしかに光属性が減少している中なら重要だ。とは言っても闇属性も実は光属性と同じくらい貴重なんだがな。」
光属性の人間が希少なら、その対をなす闇属性もまた実は希少になっている。アルビオンは
「その魔法は闇属性ではなく、火属性でも可能か?」
「それは光の治癒魔法と同じと考えてください。」
「良くわかった。」
シューの目的はあくまで患者数を減らすことで、闇属性の力を使えば今よりもっと光属性の人間に頼る必要がなくなるのだ。闇属性に近い力を持つ火属性は、光属性に最も近い水属性の光魔法と同程度であるということだ。
「流行病はアルビオンよりオルレアンの方が流行るが、やはりそれが理由か。」
「そうですね。闇属性に近しい人の方が病気にはかかりにくいものですから。」
「…研究所に通しておこう。しかし、忌避されていた期間が長い。人々の意識改革の方が魔法の確立より時間はかかるぞ。」
そもそもオルレアン国内で禁術とされている魔法を、研究するにあたり下手をすれば研究所が摘発される可能性すらある。無論アルビオンの研究所であるなら、すぐオルレアンが介入することは無いのだけれども、それがオルレアンがアルビオンに挙兵する理由にもなりかねない。
「治療は簡単に効果を証明できるが、予防に関しては証明が難しい。」
「病原体が原因ではないのに、似たような症状を訴えられる方がいらっしゃるので絶対ではないこが難しいところですね。」
エリオットJr.はシューの話を前向きに考えながらも絶対とは答えられなかった。人が救えると証明できるとしても、それ以上に人を殺す原因になるのがすぐには頷けないのだ。
「それはマーリンにも相談しよう。」
アルバート家の家令マーリンは執事のアーサーとは違って家の全体的な財務や法務を行なっている。裏のアルバート家当主と言っても過言では無い。
「話は変わるが、フィリップ。」
不細工な猫に代わるようにシューの膝上に鎮座する黒兎に声をかけた。
「お前の言っていた事が事実だったとカルヴィン辺境伯から解答を得た。」
「それならば、私を信じてくださるということですか。」
フィリップは黒兎の姿で礼を欠くことを謝罪したあと、エリオットJr.に向き合った。それは2人の間で交わした司法取引だ。フィリップが服従の紋を入れない代わりに、シルバーウルフは寒い地域に住む白い毛皮の持ち主なのだが、それが王都の貴族に好まれ高く売れるようになり乱獲されるようになり、シルバーウルフは減少し、人族を恨んでいた。それを利用して魔族でも人族でも無いシルバーウルフをあの戦いに誘導したのだとエリオットJr.にガイルの説明をしたのだ。
「そうだな。フィリップ・アヴァロンは正式にフットマンでいることを認められる。」
「ありがたき幸せです。」
シューはただ聞いていただけだが、もう取り上げられることはないだろうと顔には出なかったが、恐れで固まった心が少し緩くなった。
「俺からの話は以上だが、そういえばチェシャ猫がいないようだな。とうとう女王陛下に首をはねられたか?」
エリオットJr.はシューの周りを見渡して、1人欠けていることが気になったようだ。
「何を言ってますか、エル兄様。チェシャ猫は現れたり消えたりするのが普通ですよ。」
「それもそうか。」
シューの冗談に乗っかり、
「ちゃんと公爵夫人の所に帰ったのか。」
と、返した。
「ええ、赤ん坊の面倒を見に。」
ちゃんと主人公が赤ん坊の面倒を見てくれれば、チェシャ猫は必要ないのだけれどもとシューは笑ったが、エリオットJr.は真面目な顔をした。
「公爵夫人が赤ん坊の面倒を見るべきだろう。」
それにシューは返せなかった。エリオットJr.は咳払いを1つして、話を変える。
「カーティス、本当は今日土産として渡すつもりだった茶葉があった。明日代わりにジルが持ってくる。」
「茶葉?」
「イーシン(イールゥイの父)が自国から持ってきた红茶(hongcha)だ。普段飲んでいるものとは風味も色も違うぞ。」
「それは楽しみです。これでお茶会が始められますね。」
お茶会といえば紅茶だが、まだオルレアンに紅茶は無かった。イールゥイの国はお茶の名産地であるから、シューも楽しみだ。
「そんな面倒なものは誕生日くらいにしておけ。」
エリオットJr.は席を立つと右側に置いていた剣を取り、腰に差す。
「シュー。」
部屋を出る前に、エリオットJr.は止まってシューの名を呼んだ。
「冬になる前に一度アルビオンに帰るぞ。」
「え?」
「俺たちの公爵夫人がシューに会いたいと言っている。」
彼女はシューにとって、父親エリオット並の敵だった。あの人はシューのことが嫌いで会いたく無かったのではないのか。その困惑に気づいたのかエリオットJr.は難しそうな顔をした後シューの側に寄って、座っているシューに目線を合わせた。
「あの人は極度の面倒くさがりであるだけだ。お前が嫌いだから、オルレアンに来ないわけではない。オルレアン貴族が嫌いだから来ないんだ。」
「…上手くアルビオン語が話せるかな。」
「あの人もオルレアン語の方が得意だから気にするな。」
オズワルドと形こそ似ているが、いつも厳しい顔をしていて全然似ていないと思っていたのに、その時ばかりはオズワルドの優しい顔によく似ていた。
英語は辞書を駆使して書いてありますので、不自然な点があればすぐ訂正をお願いしたく存じます。




