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これがゲームの世界ですか?  作者: 詩穂
アルバート家とアンデッド退治
37/115

Don’t think,FOOL!

難産でした…。


カーティス(14) シューの側仕え

フィリップ 心の精霊フアナに狂信している男

混乱するカーティスの説明はうまくいかなかった。翌日もどこか腑に落ちない様子でまともにカーティスと話すことはできなかった。そして、間の悪いタイミングでフィリップの受け入れの準備が整い、フィリップは黒兎から正式に人族の使用人として屋敷で働くことができるようになった。しかも、信用しない人間に当たりの強いシューの側仕えの1人とすることになったのだ。勿論人に仕えることが無かったフィリップはカーティスの下につくことになった。

「名前がフィリップ・アヴァロンになった。」

「げぇ、アーサーの養子じゃん。」

「緑の目が似ているから、本当に親子のようじゃないか。」

そのことを伝えたエリオットJr.は本気か分からない冗談を言う。緑の目といっても、アーサーはもっと明るい色をしているし、髪の色素が全体的に薄いから射干玉の髪のフィリップは全く似ていない。

教育係としてはカーティスだが、アヴァロン家は代々アルバート家に仕える由緒ある家だ。弱小貴族のカーティスよりもずっと地位の高い家だから、2人の関係が更に凸凹としたものになりそうで、今からシューは気が重い。ただでさえ、カーティスとギクシャクしているのにだ。

執事は執事でも、ユーリの家の名前ならまだシューとしては良かった。でも、ユーリの生家グラディウス家はアルバートに忠誠を誓っているアヴァロン家とはまた違うからそうもいかない。

王都の屋敷を管理するアーサーが正式にフィリップにその説明をし、フットマンの服、正しくいうと昔の主人のお古を着せられている。しかし、あれが書類上の親子なのかとまるでテレビのドラマのワンシーンでも見ているような錯覚を覚えた。横で呆然とするカーティスに声をかけることができなかった。

元魔族で、元々人族の地位なんて底辺だったフィリップが、ほかの下々の人間を差し置いてフットマンの服を着ていることにシューは違和感を抱いたが、彼は元より頭の良い人間だし、能力がすぐ認めらたということだと思えばそれも普通のことだろう。

「カーティス、彼は何も知らないようだから君には苦労させる。」

アーサーの気遣いの言葉に、カーティスは良い子に返事をした。シューはアーサーに詰め寄りたかったが、カーティスの様子を見るとそうも言えなかった。

「詰ったっていいじゃない。」

カーティスとフィリップを連れて部屋に戻り、カーティスだけを中庭の東屋に連れ出した。それを言われたカーティスは目を瞬かせた。

「突然現れた人間が、あのアヴァロン家の養子になって、フットマンになったじゃん。」

シューが不貞腐れたように言うと、カーティスは噴き出した。

「シューは何故不機嫌なんですか。だって、連れて帰ってきたのは貴方でしょ。貴方が彼を殺したくなくて、助けたんじゃないんですか?」

そう。普通ならシューの思い通りになったのだと、シューは手を叩いて喜ぶべきだ。でも、何故かほかの人間が、カーティスが無視されたようで悔しかった。

「殺したくなかったのは僕じゃない。助けたのは、彼がとても可愛そうだったから。」

カーティスに目を背けながら、ボソボソと呟くように答えた。

「酷いですね。今私の為に不機嫌になっているのは、私が可愛そうだからですか?」

シューはハッとなって顔を上げ、カーティスの瞳を見る。茶色の瞳が泣きそうに笑っていた。

「意地悪な事を言ってしまってごめんなさい。たしかに私も狡いとアーサー様に詰りたくなりました。でも、貴方が怒っている様子を見てそれが間違いだと気付きました。」

そう言うと悪戯っ子の笑みを浮かべた。

「私の為に怒ってくれたのは嬉しいですよ。」

「カートの為って訳じゃあ。」

「でも、ペットとしてシューの側にいるのは間違いだと思います。」

フィリップは、ティキやフアナとは違うのだ。悪魔や精霊というのは元々『働かなくても生きていける』存在で、彼等が有する時間も無限に近い。人族は生きていくために働かなきゃいけない。彼は悪魔や精霊ではなく人族なのだから。

「それにフットマンなんて母屋ではページの次に立場が弱いですし。」

正式には女性のメイドの方が地位が弱いはずなのだが、女性の方が気が強いことが多く、若いフットマンはメイドたちに良いようになって使われているのだ。フットマンに気のいい坊ちゃんが多いせいもある。

「私も後輩が出来るのは楽しみですから、心配しなくて結構ですよ。」

カーティスは形式的に良い子だとずっと思っていたが、本当に素直で優しい良い子なのだろうと、決まりの悪さを感じた。

「カートといると、自分の愚かさを肌に感じて劣等感を刺激されて苦痛だ。」

暴論であることは認識できるが、シューにとっては素直な感情で、筋道のある理論だ。言われたカーティスはきょとんとするしかない。カーティスは、自身はシューが劣等感を抱くような存在ではないと思っているからだ。

「でも、そんなことで劣等感を持つ自分も嫌でさ、嫌悪の無限ループだよね。」

「はっきりと口にできるシューは凄いですよ。」

「そんな凄さなんて、要らないよ。」

「溜め込むよりはずっといいです。」

そういうカーティスはモゴモゴと口を動かすが、声になっていなくて、シューには聞き取れなかった。でも、彼の言葉を待った。残念ながらフアナやフィリップと違って心を読む力がないから、彼の言葉が無ければ彼の考えていることなんて読めやしない。

「ごめんなさい。」

漸く次に彼の口から出たのは謝罪だった。シューには謝罪される謂れはないから腑に落ちない顔をするが、遮るようなことはしなかった。

「知ってました。下品な話し方をするルルさんと昔馴染みであることを。」

「うん?」

「知ってました。美代子さんという前世という記憶があることを。」

「うん。」

「知ってました。シューが美代子さんを取り戻す前、使用人や家庭教師を虐めていたこと。」

「そうだね。」

「それから、私はシューが闇魔法を使えることを知ってました。」

「誤魔化すように教えたね。」

箇条書に書いても、なかなか意味のわからないことを、理解させないまま教えたなと思う。そのせいで今カーティスは悩んでいるのだから、非がシューにあるのは火を見るより明らかだ。

「それなのに、魔族と協力関係にあったというだけですごく、困惑して。今のシューがそうではないのは私がよく知っているのに。」

本当に彼にはかわいそうなことをしていたと酷い後悔が襲ってくる。相手は和平を結んだ、元敵対関係にあった国民でもなく、種族も生き方も違う、ずっと戦争状態が続いている相手と協力関係があった、なんてその事実だけでも極刑が下ってもおかしくないのだから、侮蔑しても仕方ないはずだ。

「当たり前だよ。軽蔑して僕のことを殺したって不思議じゃない事実だ。」

「でも、私は気絶してまでウィリアム様を助けたシューを知っていますし、何人もの重症者を救っていた貴方を知っています。いつもフラフラになるまで助けた後に、更に多くの人を助けようと魔法の研究をしていた貴方を知っています。」

カーティスはシューの小さな手を掴んだ。漸くカーティスの中で纏まったようで、今までのただシューの言うことを流し流しで聞き、付いてきた瞳とは全く違っていた。

「だから、私はシューを信じています。それすらももし貴方の企みだったとしても、私は信じます。私は優秀な従者ではありませんから、間違いなんて分かりません。もし本当に貴方が悪なのだとしても、その先に断罪が待っていたとしても、私はどこまでもついていきます。」

今度はシューが言葉を失い、口をモゴモゴと動かす番だった。シューが話す相手は殆どティキで、素直に感謝や激励などのポジティブな言葉を口にすることはなかった。これ程綺麗な言葉を発する人間が自分の側にいるなんて、未来むかしからは考えられない。美代子ではなく、シューの瞳から静かに雫が溢れる。

「あの、やっぱり、私、言葉を選ぶの間違ってましたか?あ、そうじゃなくて、ちゃんと優秀な従者になれ、ということでも。」

全力で首を振ると、カーティスはホッと安堵したようだった。

「怖いよ。君が、屋敷から、僕から離れる日が。」

シューがやっと伝えた言葉が、感謝や歓喜ではなく、恐怖だった。美代子が生きていた現代日本よりももっとぽんぽん人が死ぬのだ。神殿の少年たちも年に30パーセント程死んでいるらしい。病院で1番感染症を貰いやすいのと同じように、ゴム手袋やマスクなど無いせいで看病する少年たちもまた病気を貰いやすいという理由もある。

「シューの傍がこの世界で1番健康に生きられる場所だって私は思います。」

「…当たり前じゃない。」



続けて投稿します。

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