Why do you like someone?
エリオットJr.(18) シューの1番上の兄。ワーカホリック気味。
オズワルド(16) 2番目の兄。次男なせいか少しお気楽な面がある。
マリアンヌ(14) オルレアン王国、第一王女
気が強いが、優しいひと。
シャルル・ド・オルレアン(16) オルレアン王太子
マリアンヌの異母兄。シスコン気味。
クー 悪魔でよくある名前ベスト10。マリアンヌとシューが話しているクーは追加コンテンツ、シュールートのラスボス。正体不明。
いつもより華やかで輝いている兄オズワルドがシューの手を引いた。
「さ、行こうか。」
本来ならお茶会に連れてくるのは、母親であるはずだったが、ディアナ公爵夫人はアルバート家領から出てくるのを嫌がる為、こうしてオズワルドが慣れないシューのサポートをするべく付いてきてくれた訳だ。先述したように、いい年した男性はあまりお茶会に参加しない。だから、少し申し訳ない。
「シューちゃんは気にしなくていいよ。」
「やっぱりオズ兄様のその態度に慣れないというか。」
「ま、それはそのうち慣れるよ。」
「無理です。」
少し前まで会えば喧嘩ばかりしていた兄と和解したとはいえ、慣れるものではない。シューはぎくしゃくしながら彼と王城へ向かう。
基本的に夏のオルレアンは晴れていることの方が多い。今日も絶好のお茶会日和だ。会場である王城の、シメントリーに飾られた庭は夏を謳歌するようにさまざまな花が伸びやかに咲いていた。中でもオルレアンの国花であるユリが、王女殿下の代わりのように華やかに高潔にシューを迎えた。
「お久しぶりですわ、アルバート卿。先の戦いでは大変ご活躍なされたようですね。」
会場の大きさに圧倒され気後れしていると、すぐに王女殿下がシューに気づいて出迎える。側に居るオズワルドにも恭しく頭を下げ、シューに挨拶をした。
「いえ、私は大したことをしておりません。王の騎士達がとても優秀でしたから。」
「謙遜しなくて結構ですわ。お兄様も貴方のことを褒めていましたわ。」
「…光栄でございます。」
マリアンヌ相手であるが、王女殿下との公式の場だから仕方ないけれど、礼儀を気にしすぎて何の話をすれば良いのか困ってしまい、中々思うように話せない。
「やあ、こんにちは。こないだはどうも。あの後後遺症などはありましたか?」
マリアンヌと話していると、シャルルが少しだけ不満そうにシューに話しかけた。シューがマリアンヌと話しているのに少し嫉妬しているようだ。それほど激しい感情ではないが。
「いえ、心配してくださってありがとうございます。」
ちゃんと頭を下げると、シャルルは優しく微笑んだ。それからシューの後ろにいるオズワルドに話題を振る。
「オズは、学院はどうですか?」
「楽しいですよ。ミヒャエルともちゃんと仲良くしてますから。」
「本当です?昔から要領良いですから、そんなに不安には思ってませんが。」
エリオットJr.が、シャルルにオズワルドはシャルルが苦手だと言っていたが本当のようで、オズワルドはどうにか彼との会話を切り上げようとしている。
「ふふ、お茶会は始まったばかりですわ。楽師達も呼んでおりますから、楽しんでくださいね。」
王女殿下はそれを察したのか、シャルルを連れてまた違う貴族へ挨拶に向かう。元々主宰者なので、沢山の来賓に挨拶回りをしなければならないから、それほど一人に時間は取れないのだろう。
彼らに挨拶した後、シューは辺りを見回した。さすが王女殿下ということもあって、数多くの貴族が集まっていた。それらのいくつもの目がシューに対して注がれる。身分のせいで誰にもシューに話しかけられないが、初めてあったアルバート家三男に話しかけたくて仕方がないようだ。視線から隠れるようにオズワルドの背の方へ回る。
「シュー、知り合いのご婦人たちに挨拶しにいくから、一緒においで。1人だと心細いだろう?」
話しかけなければならないのは、次男のオズワルドも同じだ。出席したのだから、隠れるシューの事を優先する訳にはいかない。護衛の騎士たちも近衛兵で知り合いもいないし、兄のオズワルドだけが頼りだから仕方がなく付いていく。
「御機嫌よう、ガスペニ伯爵夫人。」
「あら、アルバート卿。お元気そうで何よりですわ。」
オズワルドがまず声をかけたのは、ご令嬢たちではなく、伯爵夫人だった。茶色い髪と茶色い目、オルレアンでは一番よくいる色合いの女性で、夏らしい青い色の上品なアフタヌーンドレスを召していた。生地の刺繍が派手なのに、嫌味に感じないセンスと彼女の迫力に圧倒される。恐らく女性リーダー的存在だ。女性の集まりは権力に寄ることもあるが、そういったファッションセンスなどに惹かれて集まることもある。この女性はどちらでもあるが、後者の方が強そうだ。
「私の愚息はちゃんとやっているかしら。」
「ええ、こないだグイードの絵がホールに飾られていましたよ。」
「あら、まあ。嬉しいわ。」
シューは2人の会話を聞いて思わずオズワルドの背から出ると、ガスペニ伯爵夫人はあらと驚く。
「これは失礼しました。私の弟のシューです。」
オズワルドは彼女の紹介をしてくれ、シューも続けて挨拶をする。ガスペニ伯爵は父エリオットの側近で、その奥方であるのが彼女らしい。そして、その息子がオズワルドと同い年のグイード。ゲームの攻略対象の一人だ。
「シュー様はまたアルバート卿とは違った美しさですわね。絵画があったら買ってしまいそうですわ。」
ぎこちなく礼をする。どんなに美しくてセンスのある人だと言ってもあのキャラクターの母親である事を知ると、褒められても恐ろしく感じてしまう。
「…何か機会があれば描いてもらいましょう。」
兄のオズワルドも社交辞令でも躊躇いがあった。何しろグイードはこのゲーム唯一の「超変態キャラクター」なのだ。美しければ老若男女を問わないという恐ろしい性癖の持ち主だ。
「冗談ですわ。」
冗談には全く聞こえないが、そこまで本気ということでもないだろう。
ある人物がシューとオズワルドのことを見ていることに気づくと、シューはオズワルドの腕を引っ張った。
「それでは失礼します。」
オズワルドもその人物のことに気づくと、伯爵夫人に礼をしてから、その元へ向かう。
「ご機嫌麗しゅう、レディ。」
「ふふ、久しぶりですわ。オズ…、アルバート卿。」
引きこもりのシューも何度か顔を会わせたことがある、エリオットJr.の婚約者、コゼット・マドレーヌだった。
「それから、シューちゃん、ではなかったわ。シュー・アルバート卿もお久しぶりですわ。」
「お久しぶりです。」
「あまりお会いできないから心配してましたが、元気そうで良かったですわ。今日はあまり妙齢の男性方がいらっしゃらないからアルバート卿がとても目立ちますわね。」
兄の婚約者とは言っても引きこもりだったためシューは片手で足りる数くらいしか会ったことはない。
「邪魔なライバルがいなくて快適ですよ。」
「ライバルがいても貴方は選り取り見取りじゃない。」
昔馴染みのせいか、オズワルドとコゼットはつい礼儀を欠いた態度をしているが、周りもそれを察しているせいか変な目で見られてはいない。
「いつも剣を振っていらっしゃるから、扇子を持っていた今日はすぐに気付きませんでしたよ。」
「鍛錬はかかせていませんの。でも、もうアルバート卿には勝てなくなってしまったでしょうね。」
エリオットJr.の婚約者コゼット・マドレーヌ嬢は高位のご令嬢の中では珍しく男勝りで運動、特に剣術が得意で、性格は何事も自分で決めたがるところがあった。エリオットJr.の婚約者になったのも、その性格の為であって、親が勝手に縁談を決めるのが嫌だった彼女が、いつでも勝手に破談してくれという条件をエリオットJr.に叩きつけて、お互いの防波堤として婚約を結んだのだ。マドレーヌ伯爵領は小さいが、豊かな土地であり、また、オルレアンを代表する伯爵であったことから、オルレアンとアルビオンの結びつきの強化をアピールできるので、親たちの反対は一切なかった。ゲームではヒロインがエリオットJr.のルートに入らない限り、2人はそのまま結婚する。お互い恋はしていないが、妥協点よりは少しだけ高いくらいの相手だ。
「でも、是非今度手合わせを願いたいですわ。」
「兄の許可が下りればいつでもいいですよ。」
「アルビオン伯爵の許可を得たら、アルバート卿は手加減してしまうでしょう?ねえ、シュー・アルバート卿?」
「オズ兄様は元々フェミニストですから、どちらにしても勝ちは譲られますよ。」
「あら、最近のフェミニストは男女平等主義者でしょう?」
そうだとしても、オズワルドは女性に優しい人であるから、昔馴染みとはいえ本気で剣で向き合うことはない。オズワルドの嫌味にも普通に返されてしまっているし、彼は苦笑いしている。
「どちらにせよ、兄の婚約者に怪我させられません。」
「アルバート卿は頭が堅いわ…。」
「貴女の頭が軽いんですよ。」
突然会話に入ってきた男に、コゼットを含めて3人で目を丸くした。
「あら、エリー…、今日は騎士団のほうに行っていたのでは、ありませんか?」
彼女の婚約者、エリオットJr.の登場を流石に予見していなかったのか、コゼットはたじろいだ。
「兄様、なぜここに。」
「王太子殿下の命令だ。」
急遽参加した次期公爵に会場は色めき立った。奥様方も、見目麗しいエリオットJr.の顔を見れるのは楽しいらしい。
「私の婚約者殿もいらっしゃるし、末弟が慣れていないのだからと、王太子殿下にな。」
コゼットはおほほと苦笑いを浮かべながら、どうにかこの集まりから逃げようとする。アルバート三兄弟に囲まれている状況で他のご令嬢たちの嫉妬を買っているのが嫌なのだろう。オズワルドと親しげに話している時点で遅かりし由良之助だが。
「元々お互いのプライベートには干渉しないという約束であるから、剣を振ろうがどうでも良いが、マドレーヌ伯爵の令嬢であることを忘れるな。」
「ええ、軽率でしたわ。」
話す姿は険悪な様子ではあるが、お互いの領分を弁えているせいか、それなりに似合いのカップルであるとは思う。エリオットJr.が完璧な紳士ぶりを発揮することはなく気安く接しているのがその証拠で、その2人の気安さを見てゲームでヒロインが傷つくエピソードがあるくらいだ。
「世話になっている方に挨拶をしてくる。」
それだけ言うと、またすぐエリオットJr.は離れていった。
「つまらない人だわ。何が楽しくて生きているのかしら。」
「乗馬にはとても嵌っているようですが。」
付き合いは悪くないらしいが、エリオットJr.は1人の方が好きらしく、暇があれば1人でどこかへ行ってしまうとクリストファーが嘆いていた。
「結局ああやって働きに行くのだから、殿下の気遣いも意味をなしませんわね。」
3人の目の先に行けば、有力者の奥方たちに笑顔を振りまきに行っていた。兄弟に対しては、というよりシューに対しては騎士団との訓練した時の罰を言い渡した時だけみせたあの笑顔である。オズワルドも思うところがあったのかため息を1つすると、コゼットにニコリと微笑む。
「我々も挨拶回りの途中でしたから、失礼しますよ。」
「ええ、久し振りに会えて嬉しかったですわ。」
コゼットはシューにもそう言う。顔を合わせたことがあると言っても、ほとんど会話はしたことはないけれど、コゼットは社交辞令ではなく本当に嬉しいようだった。
「僕は剣を振るレディが見たいです。」
「ありがとう、シューちゃん。シューちゃんも剣を持つことがあったら是非私と戦ってね。」
兄の幼馴染コゼットの手袋越しに握手をするが、ニーナと同じように剣士の手をしていた。美代子のせいか、戦う女性に惹かれるものがある。
コゼットから離れ、違う女性たちにも挨拶回りをした後、休憩とでも言うように置かれている料理を食べる。
「シューちゃんって、女騎士好きなの?」
「好きです、カッコよくて。」
淀みのない返事に、オズワルドはああ、そうと簡単に返す。美代子であるとしてもシューはまだ12歳だから、オズワルドが考えるような感情は持ち合わせていなかった。
「好きな子とかいないの?」
「オズ兄様の求めている答えが分かりません。」
早熟な子供達ならいるのかもしれない。生憎恋愛音痴の美代子はそうじゃなかったし、とりあえず親兄弟を見返せれば良かったシューにはいなかった。
「…ほら、可愛いなぁとか、足が早いとか?」
小学生か。いや、シューは小学生の年齢であるけれど、それは女子から見た男子である気がする。
「オズ兄様は足が早い女性が好きなのですか?」
オズワルドは苦笑して頭を振った。シューはもういらないと皿の上にフォークを置いた。
「リズ…、エリザベス・ノーランド以外に僕が好きな人はいないですよ。」
そう言ってしまえば、オズワルドは黙るしかなくなる。エリザベス・ノーランドはシューを殺そうとして、殺せなかったシューのナニーだ。既に亡くなっている人物をあげればもう何も言えないだろうと思い告げたが、効果はかなり覿面だった。
招かれた楽師たちの音楽は優美で穏やかで、シューにはつまらなかった。一曲終わると、拍手をすると、飲み物を取りに行く。もう大分慣れたからと兄を置いて1人で会場の端にあるバーテンダーのところまで歩いた。
「失礼。」
レモンネードを片手に兄のところに戻ろうとすると、シューは声をかけられた。声をかけた男は、楽師たちと同じような揃いの衣装を着ていたが、楽師たちは向こうで次の音楽を奏でていた。
「無礼者だと言いたいところだけど何の用?」
マナーはあくまでもマナーだ。法的な縛りなどない。身分の高いシューが許せば、それで終わりだ。ただ一度でも許してしまえば、後から同じように話しかけられてしまうから嫌なだけだ。この男に嫌われてもいいので、ポーズだけは男に汚らわしいというようにする。
「いえ、音楽が嫌いなのかと思われまして。」
「まず身分を明かせ。」
大部分の招待客が音楽の方に集中しているので、シューたちを見ているのは警備兵とサーブしている使用人たちのみだ。
「すみませんでした。楽団のマネージャー、ケビン・カーボンと言います。」
勝手に裏写りしそうな名前だと思いながら、彼の話を聞いた。
「そう。音楽が嫌いか?という問いに対して答えるなら、嫌いじゃない。1人で聞くならね。これで君の質問は終わりかな?」
お茶会において非常識なところもあるが、楽団のマネージャーをしているならそれなりの身分と学があるはずだ。下級貴族か上流の平民とかだと思われた。あちらが先に非礼したのだから相手する必要もないとさっさと戻ろうとすると、彼に腕を掴まれた。
「あの、良ければ今度演奏したいのですが。」
「何故?」
知り合って1分も経っていない男に何故そう言われるのか全く分からない。
「無礼ですわ。その手を離しなさい。」
知った声が聞こえ、ケビンはさっと掴んでいた手を離した。優しい王女殿下が冷たく言うのはとても恐ろしく聞こえた。
「いくら私が呼んだ楽師だからと何をやっても許されるわけではありませんわ。」
王女殿下はシューが変な男に絡まれていると思ったのか、飛び出してきてしまったようだ。お陰で注目の的になったし、ケビンに白い目が向けられた。フアナやフィリップでもないが、お茶会に参加したことがないシューに対しても冷たい目が晒されているのが何となくわかる。
「殿下、お手を煩わせてすみません。この方は私の大嫌いな虫が手についていたことを気づいて払ってくれただけなんです。誤解させて申し訳ありません。」
マリアンヌは納得はしていない。マリアンヌはケビンがシューに演奏を聴かせたいという言葉を聞いていたからだ。しかし、これ以上シューが注目されるのも良くないと踏んだのか、シューの発言を容認した。ケビンはさっさと追い払われ、王女殿下は、変な虫に刺されていないか確認すると告げ従者を呼び、シューを庭近くのサロンに呼んだ。
「シューちゃんは可愛いんだから気をつけなよ。」
久しぶりに真理亜の声を聞いて、思わず笑った。
「こっちは心配してるんだよ。その態度どうなの?」
「あはは、僕があんな弱そうな男に悪戯でもされると思ったの?」
心配する真理亜に対して、それを嘲笑うようにシューはゲームのシューの台詞のように話した。
「あたしの知るシューちゃんならともかく、中身ただの女の子なんだから、気をつけなって。」
「真理亜はマリアンヌを演じているわけじゃないよね?僕も美代子が僕を演じているわけじゃないんだ。偶に別人格かと思うくらい、美代子に引っ張られるときはあるけどさ、気にしないで。僕は美代子だけど、女じゃないよ。」
「そうですわね。中身が女の子というのは言い過ぎましたわ。」
それでも、シューは魔法以外からっきしの幼い子供でしかないとマリアンヌは不安そうだった。
「あたし、前世でほんっとうにヤバいやつ見たことあるから心配なんだよ。女子よりは危険は少なくても、男の子が好きな変態野郎はいるからさ。美代子はかなりそういうの疎そうだから、すっごい心配。」
「でも、彼はアンヌが呼んだ楽師の1人なんでしょ?」
シューがマリアンヌを信頼していると告げると、マリアンヌは嬉しそうな顔をしたが、同時に悲しげな顔をする。
「信頼する楽師を呼んでも、そのグループメンバーまで分からないのですよ。だから、より護衛たちには注意をするようにしていますが、どこにだって綻びはありますもの。」
元凡人が天才だからいけないのか、どうしても危機感というのが持てない。だから、アンデッド討伐に参加してしまったのだ。
「でも、心配してくれてありがとう。」
「当然ですわ。…それで、聞きたいことがありましたのだけれど、いいお嬢様はいらして?」
そうだった。元々マリアンヌはシューにもそういう対象ができればいいとこのお茶会によびつけたのだ。オズワルドもそう言っていたが、マリアンヌの計画の一端でも聞いていたのだろうか。
「それは確かに綺麗なお嬢様はたくさんいらっしゃったけど、僕にはまだ恋愛の興味はないし。」
「美代子だから女性に興味持てないのかしら。男性の方がよろしいのかしら。」
「…どっちに対しても興味ないよ。男なら神殿でもたくさん見てる。騎士団でもね。」
真理亜もマリアンヌも同性の恋愛に対して嫌悪感はないのかもしれない。美代子もないが、シューはよく分からない。そういう場面すら見たこともない。シューには恋愛なんてどうでも良いのだ。
「見た目だけなら女子の方が好きだよ。可愛いから。」
「女性って見た目だけなら同性の方が好きだったりしないかしら…。だって男性の女装とか、筋肉隆々で精悍な男よりも女っぽい顔の方が好きな女子多くない?」
「じゃあ、分からないね。」
マリアンヌの探りも意味ない。そんなものシューが聞きたいくらいだ。
しかし、久しぶりに会えたマリアンヌとそんな不毛な話ばかりしたくはなかった。
「真理亜のゲーム知識はどこまである?」
「シューの絶望とクー以外は全てあるよ。ゲーム廃人舐めないで。」
「それだけおぼえてないとなると世界の根幹なのかな…。」
マリアンヌもシューに同意しながらも、付け加えた。
「そうではなくて、原作とこの世界に明確に違いがあるのかも。だから、ぼやけている可能性がありますわ。だってシャルルとお兄様には年齢が違うもの。」
「え?そうだっけ?」
「ゲームのシャルルはセルジュと同い年。すっかり忘れてて、こないだ気づいたのよ。セルジュと私は側室の子っていうのがゲームの設定だった。でも、現実は違うの。この国側室というのを認めていないのよ。」
ゲームではシャルル王子は正妃の子で、セルジュは側室の子だった。だから、シャルルが王位継承者第一位の王太子なのだ。しかし、現実では配偶者が死なない限り離婚も認められないくらい、結婚が神聖で厳しい国だ。寵姫というのは認められているから厄介な話だが、寵姫の子供は滅多なことがない限り、王位継承や爵位が継承されることはない。しなし、セルジュやマリアンヌは寵姫ではなく、正当な後妻の子だ。
「私のお母様は寵姫ではなく、ちゃんと結婚しているよ。シャルルお兄様を産んですぐ、シャルルお兄様のお母様が亡くなっている。」
「死別してすぐ結婚してすぐ子供が産まれるっておかしくない?」
「…そこは下世話な話になるよ。ここら辺実は王家のドロドロ恋愛話だから。今でこそ、幸せな家族なんだけどね。シャルル王子のお母様って凄く性格のキツイ人だったらしいんだよ。それで、ほわわんとしている私のお母様にちょっと…ごにょごにょ。」
少ししか疑問に思ってなかったところを、ちょっとした好奇心でつついただけなのに、王家のドロドロ劇を説明されるところだった。
「オーケー、分かった。もうそこはいいや。とにかくゲームとシャルルの年齢が違うんだね。」
「あとはグイードも年齢が違う。ゲームではオズワルド様の1つ下だよ。」
「ん、思い出した。グイードは2年生組じゃん。」
2年生組というのは、シャルル・イールゥイ・グイードの3人組にファンが勝手に付けた名前で、オカン・チャイナ・超変態というほかの学年に比べてキャラが濃いのだ。
「そうそれ。微妙にあたしの知っているプロフィールと違うんだよね。」
「この世界はゲームを基にしてはいるけど、全く別物ってこと?いや、元々別物なんだけど。えーっと似て非なるというか。」
説明し難い。でも、何故ゲームと現実で、プロフィールなど変わりようがないところが違うのか全く分からない。
「この事実、私シューちゃんと出会う前まで気づきませんでした。ずっと記憶をノートに記して整理していたのに、ですわ。」
「僕たちが転生したのは偶然ではなくて、誰かの意図があったのかな。それで、都合の悪いところはぼやかされてる。」
「そしたら、誰が、何の為に?」
「目的は何となくわかる、『バッドエンディング』の阻止じゃない?」
「…え?」
既に霞がかっているが、夢で見た未来のイメージがある。あれはゲームの絵ではない。シューの視点なんて美代子の記憶にはない。でも、シューは何となくあれがバッドエンディングなんだと思っていた。
「それって、この世界は一度バッドエンディングを迎えたってことになりませんか?だって、バッドエンディングがこの先にあるなんて、誰も知らないはずですもの。バッドエンディングの回避の為に私たちが転生させた、というなら。」
「やっぱり突飛な発想だったかな。」
「いいえ!そもそも転生自体ぶっ飛んでますもの。」
マリアンヌは美しい顔をに皺を寄せた。シューは夢で見た馴れ馴れしい男がどんな容姿だったか、最後にシューに何を言ったかも忘れてしまった。でも、彼はこの転生に何か縁がある気がしていた。
「…話は変わるけどニーナ・ネーサンという方にアンドリュー・ホワイトを探してもらってる。」
「ホワイト?この世界ではアンドリューのファミリーネームはそうなっていましたのね。」
ゲームではプレイヤーが設定したヒロインの名字と同じになるので、流石の王女殿下も知らなかった。
「神殿行きの時に偶然会って名前を聞いたんだよね。ニーナ姉様は討伐隊でお世話になって仲良く…。」
「姉様…、シューちゃん私のことはアンヌと呼んでるのに。」
さっきまで真剣な話をしていたのに変なところでマリアンヌは落ち込んだ。
「マリアお姉ちゃん。」
サポーターキャラクターだった時のゲームのヒロインに対するシューのように、か弱そうな弟を演じると、マリアンヌは心臓を抑えた。
「弟萌えとか無かったけど、さいっこうですわ。」
「アンヌ、今日は真理亜出過ぎじゃない?」
お茶会難しいです。貴族云々が難しいです。
王女殿下と2人きりになるのはまずいと思いますが、進まないので…。シューはそれほど熱心ではないので、王女殿下がいないと全然前に進まないのです…。




