表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これがゲームの世界ですか?  作者: 詩穂
アルバート家とアンデッド退治
27/115

【番外編】 バイバイベイビー

なんでこのタイミングで番外編なのでしょう…。すみませんでした。続きは暫くお待ちくださいませ。


シュー・アルバート(10) アルバート家三男 夢は大きく、「自分の名前を世界に知らしめる」。


ティキ・シルヴィア 中級悪魔 猫ではない。


オズワルド・アルバート(14) アルバート家次男 思春期真っ只中。1番難しい年頃。シューのことを目の敵にしてる。


エリオットJr.・アルバート(16) 眉目秀麗、質実剛健、品行方正、相変わらず堅苦しい人間。

明かりも付いていない廊下は石造りの冷たさを如実に表していた。それでも明かりが少しでも見えれば闇の濃い方へ逃げる。その様子を見かねた悪魔ははぁとため息をついた。

「ちっ、まどろっこしいぜ。とっとと行っちまおうぜ。」

「黙ってくれないかな?脳みそガバガバ悪魔さん。」

空気の入っていないゴム毬のような頰をシューは引っ張った。

「ひゃめろ。お前一応光の属性なんだぞ。俺様の皮膚が焼かれちまうぜ。」

「ティキの気持ち悪い頰なんて焼けた方がカッコよくなるかもよ。」

「な訳あるか。」

「誰だ、そこにいるのは!」

小声で話していたが、周りが静かだったせいで聞こえてしまったようだ。シューはティキの尻尾を掴むと魔法で小さなネズミの姿を変えて逃げる。

「だから、お前の手で引っ張んじゃねえってば。」

何故シューとティキがこの暗闇の中逃げているのかというと、話は簡単だ。シューがティキの情報に唆されて王立魔法研究所の地下で封印されているという闇の魔道書を手に入れるため侵入をしたからだ。

なんとか警備員を巻くことができたところで、元の姿に戻った。

「なぁなぁ、もっとバーって行って盗ってこようぜ。超超超つまんねえしよぉ。」

「あのねぇ…。」

この悪魔の言うことに従っていたらあっという間に見つかって、簡単に処刑台の上に上ることになる。

「てめぇが捕まれば、アルバート家の信頼は地に堕ちるんじゃねえか。シューが望む未来だ。」

ギャハハと笑う悪魔の頭を力を入れて掴んだ。

「痛えって。」

「なるわけない。僕は所詮娼婦の子でお父様と似てないし、血のつながりがないって言われればそれまで。人一人居なかったことにすることくらい簡単に出来るんだ。」

簡単にシューが捕まって、処刑台に送られても、彼らにとって大した痛手にはならない。

「だから、僕のことを無視できないくらいにはのし上らないとダメだよね。」

シューは子供のような可愛らしい願望で、それから純粋に力を望んだ。悪事を働こうとしているのに、何故か彼の目は爛々と輝いていた。

「俺様、お前のそう言うところ嫌いじゃねえぜ。みみっちいところは嫌いだけどな。」

「脳みそが入ってもないような奴にそんなこと言われたくもないね。」

「馬鹿な方が幸せに生きられるんだぞ、シュー。」

「不幸にも気づかない馬鹿にはなりたくもないね。」

ひたすらにシューとティキは暗い廊下を歩く。廊下に燭台はあるのだが、全て火が消えている。その為シューは灯りをつけずに、闇の魔法でメガネザルの目と同等の暗視能力を手に入れて歩いているのだ。悪魔のティキも光がなくても問題なく見えるようだ。

「闇の魔道書があるっつー割に警備ザルだな。」

「侵入するまでの結界が鼠の侵入を防ぐくらいの高度だったから、油断しているんじゃない?」

その高度なシステムの結界を突破したのも、単純な方法だ。どんなに優れた技術で保護していても、管理する人間の甘さで簡単にどうにかすることができる。ここのところシューは野良猫に化けて管理者に対して媚を売っていた。

「猫好きっていうのがまさか致命的なダメージになるとはな!」

「それと、闇魔法は姿を変える魔法であるっていう不認知だね。」

「ま、知っていりゃあ警戒するわな。」

シューはまんまと高度な技術で貼られた結界の内側に入ったわけだ。ただやはり建物の事前情報が中々掴めなかったのは痛い。

「地下って方向感覚掴めないから面倒だ。」

「ん、あれ、1つだけ扉の装飾が違うぞ。厳重だ。これじゃねえか?」

ティキが指を指す先に、他の扉は木製だが、1つだけ厳重な鉄扉があった。しかし、扉であるが、全くドアノブが存在しない。蝶番がこちら側にあることから、押すのではなく引かなければいけないのにだ。

「魔法で鍵をかけているのにも加えてドアノブを外すとか姑息だなぁ。」

「焦ってないな?」

魔法の鍵は複雑な構成をしていたが、シューは難なくそれを破壊することができた。

「見事なお手前で。」

あとはドアノブがないことをどうにかするしかない。

「深淵で眠るハデスよ、我に力を与えよ。」

シューは腕をタコに似た海の魔物の触手に変えると、ぴったりと吸盤に扉をくっつけた。

「ああ、なるほどな。」

ドアノブが無くても、扉は簡単に開いてしまった。すぐに人間の手に戻し、開いた扉を押さえる。

「げぇ。」

中には、たくさんの本で埋め尽くされていた。おそらく全てが貴重な魔道書や歴史書の類だ。この中の1つが、シューの望んだ闇の魔道書なのだ。

「いっそのことぜんぶ盗っちまえばいいじゃねえか。」

「足がつきやすくなる。」

「まあ、加護つきの本は少ねえから、見つかるだろうよ。」

ティキが1つの本を取ると興味なさそうにパラパラと捲る。

「お前のライブラリーの空き容量はどれくらいなんだ?」

「なにそれ。そんな魔法聞いたことない。」

「あん?なんかいっつも盗んだ魔道書をどっかにしまってるだろ?」

盗んだ本を家に置いておくほど、呑気な性格はしていない。それを相談すると、闇の精霊は快く自分の空間に置いておくことを許してくれたため、全てその精霊の空間に預けているだけで、魔法らしい魔法ではない。それをティキに言うと呆れたような顔をする。

「ハデスさん、お前に甘いなぁ。孫か何かか?」

「久しぶりの人族だからねぇ、きっと。」

それ以外に、かの精霊は光属性を憎んでいる。正確には光の精霊を憎んでいて、光属性のシューが光をある意味裏切っているからということも一因にあるだろう。

「お、これ。」

「何かあった?」

「凄え昔のエロ本。」

シューは手にしていた貴重な歴史書をティキの頭に投げつけた。

「光の付加つけて投げてくんなよ!痛えよ。」

「なんでそんなものがあるのさ。」

「八つ当たりかよ。これふっつーの神話だからな。精霊のあれであれがあーなって、土地ができたっつーな。」

「聞きたくなかった。」

シューにはよく分かってはいなかったが、ティキはかなり直接的な身振りをして教えていた。

シューが古ぼけた本を手にした時だった。こちらに近く人の歩く足音が地下空間に響いていた。シューは音を立てないようにしながら慌てて扉を閉めた。

「ふぁあ、飽きてきたぜ。」

能天気な悪魔は、せっかく閉めたという扉を大きな音を立てて開けた。勿論優秀な警備兵がそれに気づかないはずもなく、

「誰だ!」

シューは頭が痛くなる。呑気な悪魔を追ってシューも部屋を出た。

「春を告げる鳥よ!」

いくら動きの鈍いシューだからといって、人間の姿よりは動物の方が早い。シューは身近な燕のすがたになると、馬よりも早く飛ぶ。

「あ、ズリィ。」

悪魔の方は隼になると、ぐんぐんとスピードを上げて地下を飛び抜けた。

「追え!悪魔だ!」

「ギャハハ、鬼さんこちらぁ!」

小さな燕のシューは悪魔が騒いでいるうちに、地下に空気を入れるための換気口から出ると、悠々と追っ手をまいた。侵入者がいることがバレた時点で外の結界が、侵入を防ぐためのものから追い出さないようにするためのものに変わった。流石に王国の騎士たちは緊急時でも冷静だ。シューは研究所の軒下で騒ぎを観察していた。空は白み始めていて、そろそろ自室に戻らないと家の者に気づかれてしまう。

「お、お前そこに居たのかぁ。」

呑気な声が聞こえ、ぎょっとそちらを見ると何人かの騎士に追われるティキがいた。

「まいてから来てよ!」

「こんな面白いこと、独り占めするのも悪いなってよ。」

「楽しいのは君だけ!わかる?」

結界を壊さない限り、シューの転移魔法も使えない。それなのに、この悪魔は呼べるだけの最悪の事態を持ってきたらしい。

「しゃあねえな。悪魔の本領見せてやるぜ。」

追われるティキにシューも一緒に逃げる。すると、隼の姿をしても不細工な悪魔はニヤリと笑うと、大きく転回した。シューは何となくティキが考えそうなことがわかると、シューも追っ手の騎士に向き直った。何かしてくると彼らもかなり警戒し、剣を構えて睨む。

「闇の王の招待を受け、闇の宴に参加せよ。ダウン・イントゥ・ザ・グラウンド!」

すると、彼らの足元に深い沼のような黒色が現れ、中から無数の手が彼らの手や足を掴み、彼らを闇の中をを引きずり込もうと引っ張った。

騎士たちは慌てながらも、魔法で的確にそれらを振り払う。元々シューもその魔法で彼らをハデスの元に送りたい訳ではない。

悪魔の姿に戻ったティキは中央にいた騎士の背後を取る。

「しまった!」

少しでも悪魔に隙を見せてしまったのが彼の運の尽きだった。ティキの姿がグニャリと大きく歪み、無形の黒い「何か」になるとそれが騎士を包んだ。

「隊長!」

周囲の騎士が慌てて、彼の肩を掴んだ。お気楽悪魔も頭は回るらしい。きちんと彼らの頭を狙い、その身体を乗っ取った。ティキとは似つかない美丈夫の顔が、だらしのない笑顔になる。

「ギャハハ、残念でしたー!俺様登場!」

中腰で拳を空に突きつけてかっこいいポーズを決めたつもりなのだろうが、大の男の大人がやるとかなり奇妙だ。

「いいかぁ、見とけよー、子羊ちゃん。複雑で高度なもんってのーはな。少しやられるだけですぐダメになるもんなんだよ!」

高度かつ複雑な魔法、他者が崩すのは難しい。しかし、術者本人がヒビを入れるのは簡単だ。何しろ自分の魔力を使っているのだから。ティキは高らかに腕を上げると結界魔法を破った。

「僕は先に行くよ。」

悪魔のことを気にせず、シューは一人で転移魔法で遠くへと逃げた。

「ちょ、ぴったりとした服は脱ぐの難しいんだぞ!」

悪魔は悪態をつきながらも大して焦ってない。何しろ騎士たちはシューの闇魔法の無数の手によって行動は阻まれている。なんとか、悪魔はその身体を脱ぎ捨てると、再び隼の姿に戻り天空へと逃げた。


王立研究所の近くの森で、シューは息をついた。王都にある家には次の転移魔法で帰れる距離だ。

「おう、シューを発見。」

1羽の隼がシューの目の前に降り立つ。無論悪魔のティキである。

「疲れたなぁ。」

シューは木の根元に腰掛ける。

「あん?こないだの遺跡のよりはマシだろう?」

「地味な侵入って案外気を張り詰めるんだなぁって。」

「だっから言ったのによぉ。てめえがゆっくり慎重につったんだろ?」

「疲れたけど、後悔はしてないよ。最良の選択だったもん。」

でも、この悪魔にはそれは通用しない。ドタバタ痛快アクションの方が彼は好きらしい。

「こういうのは地味でいいの。派手に騒いで次狙うところの警備増やされた困る。」

「でも、最後楽しかったろ?」

ティキは魔法を使って屈強な大人たちを黙らせているシューが心の底から笑っていたのをよく見ていた。本人であるシューは全く気づいていない。

「お前は魔法使ってる時が1番幸せそうだよ。」

「そうかな?」

シューは闇魔法でしまっていた最後に掴んだ古びた本を取り出す。

「ちゃんとお目当ての本も手に入れたし、暫くこれで満足するよ。」

「なんの魔法なんだ?」

「病気関連っぽい。昔って言っても禁術になる直前の年だね。」

「禁書の中じゃあ、最近のものか。つまんねえな。」

それなりの労力を使ってバタバタ騒いだ割に、地味な魔道書にティキはうんざりしたが、シューはそうでもなかった。

「結構楽しいよ。光魔法と組み合わせたら、良い治癒魔法もできる。」

「天上天下唯我独尊のシューが誰を治すって?」

「売れる恩は多い方がいい。」

なんだかんだ最終的に人が求めるのは金ではなく健康だ。健康ありきの金なのだから。だから、光の治癒魔法を覚えていてもなんの損はない。

「全く狡猾な坊ちゃんですこと。」

「恨みしか買ってこない君に言われたくないかなぁ?」

「今日最後に結界を破ったのは俺様なんだが?俺様を称えやがれ。」

「それを手伝ったのは僕だけど?僕は君に感謝しないって言ったよね?」

シューが睨み付けると、ティキはへいへいと気の抜けた返事をする。

いつまでもシューは彼と話しているわけにもいかない。既に夜が明け、パン屋が開いている。

「じゃあね、ティキ。」

ティキに別れを告げると、惜しむこともなく再会を約束することもなく、一瞬で魔法で帰ってしまった。

ティキは小さな少年が先ほどまでいた場所をじっと見つめた後、いつもにやけてばかりの顔が無表情のまま静かに森から立ち去った。


家に帰ったシューはすぐにベッドで眠りこけた。しかし、既に朝だった為、直ぐに侍女がシューを起こした。ただでさえ眠いのに嫌いな家人に起こされ、持てる限りの力で侍女を振り払った。

「…坊っちゃま。」

侍女が困り果てていると、シューの部屋の扉を開けオズワルドが中に入ってきた。

「あれあれ、まだ寝てるのかなぁ?これだから、妾の子は…立場が分かってない?」

嫌味ったらしい声にシューは飛び起きて、枕を彼に投げつけた。

「貴方こそ、家の醜聞を広めるような言い方は如何なものなんでしょう。」

「…おいおい。既にシューちゃんはどれだけの恥を家にかかせてるのかも知らないでさぁ。リオ兄様がご立腹だよ?そんなんじゃ兄様が実権を握った時ぽぽいのぽーいだよ。」

朝からバチバチと繰り広げられる兄弟喧嘩に侍女やフットマンたちが焦って双方を宥める。その騒ぎを聞いてか、いつのまにかエリオットJr.が部屋の外に立っていて、その手には乗馬用の鞭があった。

「散歩から帰り、なんの騒ぎかと思ったら、お前たちか。」

パシンと彼の手の中で鞭が鳴ると、2人は黙り込んだ。いくらシューでも痛いものは嫌だ。

「お前たちはアルバートの子供という自覚があるのか?」

「リオ兄様、起こしに来た使用人を振り払ったことを注意していただけだよ。」

自分は決して悪くないとオズワルドは兄に弁明する。エリオットJr.はそれを聞き入れたのかどうなのか分からないまま無言で立ち去った。エリオットJr.に伸びた手には全く気づいていなかった。

「準備するから出て行ってくれない?」

シューはエリオットJr.が立ち去って、立ち尽くしたオズワルドを始め使用人に苛立ちを隠さないで部屋から追いやった。それからシューを起こしに来た侍女を睨みつける。

「出て行って?」

「あの、お着替えを…。」

「要らない。そういって君に背を向けた時にナイフを突き立てられたくないもの。」

シューは可愛らしい顔をした女性に、オズワルドに投げつけた枕とは違う枕を投げつけた。侍女が出ていくのを確認すると扉に鍵をかけると息をついて、自分の身体を抱きしめた。

「まだダメ。まだ我慢。」

それから、なんとか服を引っ張り出して一人で着る。リボンがめちゃくちゃになってしまったが知るものか。シューは光の魔法で目の下の隈を消し、体には良くないが眠気に負けないように魔法をかけると部屋を出て行った。


闇の魔術師のシューの話



タイトルは好きな絵本から取りました。

面白いお話なので是非読んでみてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ