誰も直そうとしないので。
大変遅くなりました!
エリオットJr.・アルバート (18) アルバート家長男 騎士団エリオット隊 隊長 攻略対象
イールゥイ・リー(李宜锐)(15) 欢喜公司の社長子息 ゲームの攻略対象
カーティス(14) シューの側仕え 心配性
追記:ニーナのエリオットJr.の呼び方を変更致しました。
騎士団の協力員として、正式に国王陛下から任命を受け、急だった為神殿のローブに勲章を頂いた。それが前日のことである。シューの従者はシューの自室でそわそわしていた。
「カート、落ち着いて。」
「は、はい。」
戦場に従者は連れていけない。代わりに騎士団の若手メンバーが何かと手伝ってくれることになったのだが、カーティスは落ち着かないようだ。
「シュー、ちゃんとご飯を食べてくださいよ。あと、早く寝るのと、お風呂には中々入れないので我慢するのと。」
初めて子供が一人暮らしをする母親のように、
「テメェの母ちゃん、心配性だな。」
「誰が僕の母様だよ。ルルとフアナもカートと家に残るんでしょ。」
「なんか大っきい失敗してこいよ。」
心配するカーティスを横目に、シューとルルはいつも通りに呑気に話していた。それがカーティスには異様に思えて怖くて震える。
「戦うんですよ?死ぬかもしれないのに、なんでそんな呑気なんですか?」
カーティスが思わず叫んでしまっても仕方ない。ただルルもシューも不安な彼の心情は分からなかった。全くもって2人とも「シューが死ぬ」かもしれないとは思っていないからだ。
「それはそれで未来は変わるかなぁ。」
「シュー!」
「それは置いといて、僕はここで死ぬ気はないし、僕がこれから『生きていく』為に戦いにいくよ。心配してくれるのは嬉しいけどね。」
カーティスは口を閉じた。
「それより、僕の為に死んでしまうかもしれない騎士達を心配してあげて。昨日見た王宮の雰囲気だと、僕を最優先で守るっぽいんだよね。」
シューは昨日の任命式の様子を思い出す。静かで厳かに行われていたが、出立する騎士達はかなり緊張の色が見え、王宮の役人たちはどこか浮き足立っている様子だった。終えてからエリオットJr.は一言シューに告げた。
「絶対に騎士たちの指示に背くな。」
エリオットJr.の隊以外では、チラチラと異様な目で見られた。あれは良感情ではない。
「…それはそうだと思います。正式な軍人ではありませんし、子供ですし、光属性だとバレてしまったのですから。」
「だから、僕は死なない。」
12歳の少年はいつものように自信満々だった。それがただの驕りではなくて、彼にはいつも自信となる根拠がちゃんとあった。カーティスは完全に落ち着くわけではなかったが、震えは止まる。
「油断と慢心には気をつけてください。」
「あと好奇心な。死にかけたら、絶対戻ってこいよ。」
「ルルのは意味わからない。」
「死にかけるくらいのダッセェ失敗を聞きてえ。」
「ふーん、僕には死んで欲しくないんだぁ。」
「死んだらそれで終わり。面白くもなんともねぇ。ヒッデェB級コメディだぜ。」
ルルは楽しそうに尻尾を振る。ルルの大好物の失敗はあくまで、「死にかけるほどの無様な姿」であって死に姿ではない。
出立の時間は昼過ぎだった。夕方、オルレアンの王都を出て朝には西の森に着く予定なのだ。アンデッドが苦手な時間である昼のうちにアンデッドの討伐を終わらせる予定だ。シューが共用の書斎で迎えを待っているとき、突然目の前が風の切る音と光で溢れた。シューの膝の上でルルが眩しそうに目を細めた。
「啊呀,你们好!」
いつのまにかそこに帰ったはずのイールゥイが現れた。シューの姿を見るや否やで彼は満面の笑みを浮かべて挨拶した。
「イールゥイ?なんで?」
「注文来ル、スグ行く。这是モットー。」
イールゥイは大事そうに華やかな紋様で描かれた布に包まれた物をシューに手渡した。
「僕に?」
「书、頼ム、だ。光の魔术书。」
シューが中を改めようとすると、丁度書斎の部屋が開き、ユーリが入ってきた。彼はイールゥイの姿を認めると安堵して息を吐いた。
「ここに着いたんですね。予定場所に来なくて焦りました。」
「ズレる、ネ。我、书のこと、考えタ。ごめんナさい。」
アルビオンからの転移魔法がズレて、シューの目の前に変わったらしい。イールゥイはケロっとしているが、転移魔法の少しのズレは死に至る危険(腕が跳んだり、最悪首が飛ぶ)もあるくらいなので、絶対に余計なことをしてはいけない。ユーリは予定の時間にイールゥイが予定された場所に来なくてさぞ不安でたまらなかったのだ。
「無事なので何よりです。」
「怖いって言っていたのに、よくその魔法で来れたね。」
シューの最初に会ったからの印象から、彼は転移魔法を怖がっていたイメージが強い。それでも、シューにその商品を届けるためならとその魔法で来てくれたのだ。イールゥイは自慢気に胸を張って、シューの為だと言った。
「凄く嬉しいよ、イールゥイ。」
「我もネ。」
感動の再会もちゃんと終わらないまま、迎えが来てしまったようだ。メイドが申し訳なさそうに書斎に入ってきてそう話した。こちらが無理を言って連れて行ってもらうのだから、待たせるわけにも行かなくて、布に包まれたまま中身を確認することもなく魔道書を持ってシューは家を出発した。
「討伐隊中、世話をすることになったニーナ・ネーサンだ。」
「ニーナ姉さん?」
ニーナ・ネーサンは黒髪を後ろで1つに括った涼やかな目元の女騎士だった。そして、シューは冗談で言ったわけではなく、真剣に受け取ったのだが、
「好きに呼んでくれて構わない。」
ニーナを含めて周囲にいる人間も訂正することもなく、シューは気づかなかった。
「女性の方なんて珍しいですよね。一応僕も男なのに。」
美代子でもあるから、屈強な男たちに囲まれるよりも女性の方が安心するのは確かなのだが、カーティスたち以外にそれを知る人はいないはずだった。
「アルバート隊長殿が女性隊の隊長に交渉しに来ていたのだが、何も貴方は知らないのか?」
「はい。」
「ふむ、まあ粗野な男たちが多いから、女の力に頼りたいところがあるのだろう。私のような人間でも女の力があるかは分からないが。」
ニーナは綺麗な顔立ちをしているが、戦士ということもあって化粧はしていない。そして、日々の鍛錬で鍛えられた指はシューよりも太く、皮が硬いそうだった。
「ニーナ姉様は綺麗な女性なので一緒に居て嬉しいです。」
美代子でもあるシューの心からの言葉だった。いくら可愛がってくれていると分かっていても、自分よりもふた回りも大きな男性に囲まれるのが怖かったから、芯のある女性が側にいてくれるのは違った安心感がある。
「き、綺麗か?私が?化粧っ気もないし、自分で言って悲しいが、女らしくもなく言葉も汚いだろう。」
宮廷にいる綺麗に着飾った女性たちは、確かに彼女よりも美しいだろう。彼女たちはそちらで努力しているひとたちなのだから、比べるのも双方可愛そうだ。ただシューが言いたい彼女の美しさはそう言ったことではないが、はっきりと言葉にするのも難しい。
「でも、貴方のような綺麗な人にそう言われるのは吝かではない。ありがとう。」
褒められたことに対して少しばかり動揺し、照れたようだが、凛々しい姿は変わらない。そういうニーナの姿がシューには眩しくてかっこいい。
「ニーナ姉様は女性にモテる人ですよね。」
「そうか?そうだったら嬉しいが。」
「嬉しいんですね。」
「鎧に慣れてしまっているが、私も綺麗なドレスや化粧に憧れがある。憧れる人に好かれることは喜ばしいことだろう。」
彼女はゲームの登場人物ではないが、どうしてゲームに彼女が出てこないのかというくらい、この短時間で彼女に対して憧れる思いが強くなる。
西の森近くまで、シューはニーナとともに小さな馬車に揺られる。ニーナはシューに小さな焼き菓子を差し出した。
「私のような物が作ったものなど食べたくないが、よければどうぞ。まだ夜営のポイントにはつかないからな。」
「ありがとうございます。」
「先程から思っていたのだが、私は貴族ではないから気楽に話してくれていい。私は汚い言葉で申し訳ない。」
「貴族ではないんですか?」
「父は数十年前の戦役で功績が認められて爵位を得たが、一世代のものなので、私は平民だ。」
大体の貴族が持つ爵位は世襲制だが、増えすぎる貴族を抑えるために、一世代限りの爵位というのも存在する。彼女の父親もその1人らしい。シューも厳密に言えば、爵位を持つのは父親で尚且つ継ぐ予定が無いので平民ではあるが、何故か立場は違うという矛盾があるが、誰もそこに懐疑しない。
彼女から差し出された焼き菓子は、小麦粉と砂糖でできたシンプルで固かったが、カーティスが差し出すお菓子が想起される優しい味だった。
「やはり美味しくないだろうか。」
「いいえ、美味しいです。」
子供で良かった。甘いお菓子だけで簡単に安心してしまうのだから。真剣にお菓子を齧るシューを見て、クスリとニーナは笑った。
「良かった。あまり得意ではないから。」
「神殿では貴重だからと砂糖をあまり使わないのですが、ニーナ姉様の家はよく使うのでしょうか。」
「平民だが、私の家はそれなりに余裕がある方だからな。」
ニーナの父親は爵位のある、功績がある方でニーナもまた騎士団で働くほどの地位のある人だ。手を真っ赤にさせて暮らすようなヒロインクラスの平民とは話がまた違うのだ。
「シューはそういう話が好きか?」
「いいえ。ただ僕はあまり世間について詳しくないので、神殿が基準なんです。実家が規格外なのは理解してますし。」
他の貴族の中でも、アルバート家だけは別という認識は貴族の中では共通にある。平民のニーナもそれはよく知っているので納得しているようだ。
「私は貴族と平民の間の人間だから聞かれれば答えられる。しかし、平民の暮らしが気になる貴族は珍しいな。」
宮廷の貴族は最早平民のことを人間として理解しているかも怪しい。代理の役人を立てずに領民を直接治めているアルバート家はまた違うのがこの世界の貴族の変なところだろう。
「平民に会いたい人が居るんですよね。どこに住んでいるか、まったく検討がつかないんですけど。」
平民である彼女と話すのは丁度いい機会だと思われた。
「何か分からないのか?」
「名前がアンドリュー・ホワイトというくらいです。」
本来ならヒロインの名前で尋ねたいところだが、この世界のヒロインの名前を知らない。それに、ゲーム以外で彼女を探す理由がない。神殿に行く時助けてもらった彼の名前ならば、まだシューが探しててもおかしくはない。
「ふむ、流石に知る名前ではないな。暇な時に探してみよう。」
「いえ、偶然出会った時に思い出せてくれればそれでいいです。」
「探すと言っても私もあまり時間に余裕があるわけでもない、大して力にはなれないだろう。」
シューとしても、彼女に任せたくて話をしたわけではないので、シューがその人物を探しているという認識はをしてもらうだけで構わなかった。
日が落ち始め、西の空が赤く染まった時だった。馬の声とともに突然馬車が止まった。シートベルトのような便利なものがない世界で、受け身など取れないシューは思い切り向かいの椅子に頭を打ち付け、頭がグワングワンと悲鳴をあげた。
「大丈夫か!」
しっかりと受け身を取れた彼女はすぐにシューの心配をしてくれる。頭をやられると魔法をかけるのも遅くなるから困る。なんとか自分に治癒魔法をかけ、彼女に返答をする。シューがちゃんと答えたのを確認すると、ニーナはシューを庇うように周囲へ警戒をする。
「ネーサン少尉、伝令です。」
「何だ?」
外から男の騎士の声がし、ニーナは馬車の扉を少し開け、伝令の顔を確認する。
「どうやら近隣の村が山賊に襲われており、騎士団に助けを求めております。」
「このタイミングでか?」
「はい、罠かと疑う者もおり。」
騎士団の足止めにその村を使った可能性もあるが、国が民衆を見捨てたとなると、民衆からの反発が出かねない。いくら今は貴族の力が強く、蔑ろにできたとしても報いはいつか来る。
「助けに行くのですか?」
「…いや、騎士団は行かないだろう。」
「エリオットJr.様とクリストファー様数名で真偽を確かめに行くようです。」
エリオットJr.がただの山賊に負けるはずもないし、はたまた魔族の差し金であったとしても簡単に負ける人間でもない。とは言っても、まだ18歳の青年であるし、嫌なタイミングだ。
「…もし兄様が作戦開始まで戻って来なかったら僕はただのお荷物になりませんか?」
シューがこの短時間で連携の確認をしたのはエリオットJr.の隊で、尚且つ戦線では機動力のないシューはエリオットJr.の馬に乗る予定だった。
「それまでには戻って来られると言っておりましたが、もしもの時はそのままネーサン少尉に頼むとのことです。」
「私か?エリオット隊でもないし、歩兵なのだが。」
機動力のないシューを歩兵であるニーナに頼むということは、シューは後ろで引っ込んでいろというエリオットJr.の意思を感じる。ここまで来て後方支援に徹しろということだ。
「…怖いな。全部誘導に感じる。」
ガイルがこの山賊の襲撃に関与していなければいい。シューがボソリと呟いた声をニーナは聞き取っていた。
「何の誘導だ?」
「戦力を分散させたい、ように感じただけ。」
あたり障りのないことを言って誤魔化すしかない。
もしガイルの誘導だとしたら、目的が分からない。使えそうにないと見限ったシューの抹殺が狙いだとしたら、適当に呼び出して後ろからサクッと殺すこともできるのにも関わらず、手が込んでいる。
「ここにいる騎士団は三分の一くらいでしたっけ?」
「王都の騎士団はそうだな。」
「うーん、じゃあ気にしすぎですかね。」
全然進んでなくてすみません!
サブタイトル詐欺継続中…。




