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踊り子

 私たちが男子禁制の村に来たその日、盛大な歓迎会が催された。

何しろこの村は結界に守られた出入りが厳しく制限されている村。

客人などほとんど来ない。


 歓迎会は私たちはもちろん村中の女の子が一杯参加している女だらけの女子会だ。

男の人など誰1人いない。

何せ師匠すらも性転換して女の子になってこの村に入ったのだから。


その中でひときわ目立つ女性がいた。

そのひとはとても妖艶でなまめかしかった。

大人の色香を纏い私の憧れる女性像とそっくりだった。

その人は踊り子でとても色気のある衣装と踊りを披露してくれた。


 歓迎会が終わった後、その踊り子が私たちの所へやって来た。

踊り子は

「師匠、久しぶりにお目にかかれて光栄です。

20年ぶりでしょうか。

師匠から受けたご恩はこれまでも1日たりとも忘れたことはありません。

これからもそのご恩を一生の糧として生きて参る所存です」

私は師匠に

「師匠はこの方をご存じなんですか」

と聞いた。

師匠は

「あ〜、言い忘れていたよ。

こいつは君の前の弟子だったフィロー。

君にとっては兄弟子になるかな」

とカワイイ声で答えてくれた。

私は師匠の言っている意味がよく分からなかった。

師匠は

「今日はフィローの家で休むことになるんだ。

詳しくはフィローから聞いてくれ」

と子供らしく欠伸をしながら答えてくれた。


 フィローの家に着くとフィローは突然自分の身の上について話し始めた。

「今日は私1人しかいないから気楽に部屋を使ってね。

ところで師匠から私のことを話すように言われているから順を追って話すわね。

そう、あなたが師匠の新しい弟子なの。

では話すわ。

ビックリするかも知れないけれど私は以前男だったの」

突然の告白に私は呆気にとられていると彼女は続けて

「私は師匠の一番弟子になったきっかけなんだけど。

悪者に追われていてそれを師匠に助けてもらったの。

その時、私には力がなかったから師匠の力にとても憧れを持って弟子入りしたってわけ。

だってあんな強い女の子なんて見るの初めてだったから」

師匠は

「僕はこのとき、伝説の勇者としていろいろと騒がれていたから素性を隠すため今みたいに性転換して女の子として生活していたから」

と補足してくれた。

フィローは続けて

「師匠の訓練はとてもきつかった。

それにその修行が何十年も続いた。

あの頃の思いでは今もはっきりと覚えているわ」

感慨深げに頷きながらしゃべっている。

フィローは

「でも、その時悩みがあったの。

それは女の子にモテないこと。

性別を自由に入れ替えられる事の出来る師匠にその事を相談したわ。

そうしたら「お前は女心が分からない、今のままでは一生彼女なんか出来る訳がない」って言われたわ。

それがショックでいろいろと女心を勉強したわ。

師匠が引くぐらいにね。

それである時気づいたの。

女の子になれば自由に女の子と話が出来るって。

それから一生懸命女の子になる訓練をしたわ。

そして最終関門としてこの村に入ることを許されるまでになったの。

今では生活もしているけれど」


 彼女はなんか真面目すぎるようだ。

ていうか思い詰めるところがあるようだ。

正直、どん引きしている。


 フィローは

「そうそう、明日には私の奥さんも帰ってくるから。

街で見つけたんだ。

私のストライクゾーンどんぴしゃ。

即告白して即結婚したんだから。

今は3度目の結婚でラブラブ。

私と奥さんの中を邪魔しないでね。

そういえば弟じゃなくて妹さんがこの村の外れに住んでいたっけ。

私がお姉さんをこの村に連れてきたからこの村に入れるようにいろいろと苦労したみたい。

その人にも会うことをお奨めするわ。

その人は驚く事なかれこの村きっての魔女、世界的にも名の通った魔法使いらしいの。

私は近々、この村を出て行かなければならないの。

別に悪さをしたとかじゃなくてね」

彼女はため息をつき思い切ったように

「この村、まるで収入源がないのよ。

生活は自給自足だし。

だから師匠たちと一緒に旅がしたいの。

私はこれでも名の知れた踊り子。

何処でもすぐにお金が入るわ。

それに少々魔法を使った踊りも出来るしね。

その時に私の妻の弟じゃなかった妹を連れて行って欲しいの。

絶対あの子も私も役に立つから。

しばらく私の妻と別れるのは寂しいけれどこれも生活のため。

新婚なんだけどね。

あ、さっきから言っている私の奥さんの妹はれっきとした女の子だからね。

生まれた時から。

見た目も姿もって同じ意味か、可愛らしい女の子。

声もちゃんと女の子の声。

でも、なぜか男の子っぽいのよね。

本人もその事を気にしているからあまり触れないでね」


 そういうことで明日はその魔女さんに会うことになった。

一体、どういう人なのか。

可愛らしい人とのこと。

それでも何処か男っぽい女の子。

非常に楽しみだ。


 そんなこんなでフィローの家での女子会は夜通し続いた。

師匠の元奥さんからも師匠のいろんな過去が聞けた。

師匠はと言うとそんなことは露とも知らずぐっすり寝ている。

どうやら私は一睡もせずその魔法使いの女の子に会いに行くことになりそうだ。

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