男子禁制
私たちは今、旅に出ています。
それは師匠が私に前の弟子を紹介したいと言ったからです。
それは先日のことでした。
師匠が修行中いきなり
「そういえば、前の弟子のことを話していなかったな。
前の弟子はちょっと変わった奴なんだ。
一にも二にも女の子のことばかり考えている奴だった。
どうやったら女の子にモテるのか、そればかり考えていやがった。
修行中にもそれを考えているものだったから僕が怒ったこともある。
それでもそれを考えることがなかったんだ。
と言うのも奴曰く生まれてこの方女の子にモテた試しもない。
師匠方以外の女の子と会話したことも無いと言っていた。
とにかく女の子と会話をしたいと話していた。
正直、頭の中はスケベ以外の何者でもない奴だったんだ」
私は「へぇ〜」と思いながら黙って聞いていた。
そして翌日師匠は女の子になっていた。
女神の加護を受けた師匠はその日の気分で性別を変えることが出来るそう。
でも、しょっちゅう変えていると生活に不便が出るので滅多なことでは性別を変えることはないそうだが。
と言うことは必要があって性別を変えた訳だ。
その理由は前弟子に会いに行くため。
前弟子が今住んでいる場所は男子禁制の村らしい。
このとき私は初めて前弟子が女性だということを知った。
師匠の話しぶりだと男のような感じがしていたけど。
今、私たちはその村に向かっています。
かなりの山の奥。
険しい道を歩きながら、ていうか走りながら。
と言うのも師匠は常に修行だと言い、時速20キロで車椅子を走らす。
私はそれに連いて行くのが必死です。
それにたまに崖があると崖の間を器用に車椅子が飛ぶ。
かなりの長距離を。
私は師匠にコツを教わりながらその崖を飛び越えるのだ。
正直命がけだ。
食事も自給自足で自分で調達しなければならない。
だから、この一週間ろくなものが食べれていない。
そんなこんなで一週間が経った。
夕方頃、師匠は何もないところで止まった。
辺りは木々でうっそうとしている本当に何もない山の中だ。
そして師匠は
「やっと着いたよ」
と私に言ってきた。
私は
「何処に村があるのですか?」
と聞いてみた。
師匠は
「ここに結界があるんだ。
普通の人には見えない結界が。
今から結界を開けるよ。
多分1時間ぐらいかかると思うけど」
私は
「師匠ほどの力でも1時間もかかるのですか?
私は結界ぐらいすぐ開けれるものだと思っていましたが」
師匠は
「そうでもないんだよ。
このぐらいの結界なら一瞬で開けれると思うのだけどそういう訳にはいかない。
ここは人の家のでっかいバージョンだと思ってくれれば良い。
村全体がでっかい家だと。
勝手に家に入ったら泥棒だろう。
だから、村の責任者の許可が必要なんだよ。
村自体が広いから最悪1時間以上かかると言うことだよ。
最初に連絡をしとけば良いというかも知れないけど、ここは電話も通じない辺鄙な場所。
結界があるから手紙も届かない。
だから突然訪れるしかないのさ」
師匠にそう言われ1時間以上待った。
結界は突然開いた。
そこは今までの木々でうっそうとしていた場所とは違い開けた農村のようだった。
そこに老婆がやって来た。
「私の名前はババル。
この村の村長じゃ。この村に入る前にちょっとした検査をする。
と言っても今からわしの通る場所をお前さんたちも通ってもらうだけだがのう。
この村は結界で守られている村じゃ。
第1結界はわしが開けた。
第2結界はおぬしらが開けるのじゃ。
この結界を開ける条件は身も心も女であること。
そっれだけが条件じゃ。
女であるお主たちにはたやすいことじゃと思う」
私は焦った。
私自身は生まれた時から身も心も生粋の女だ、当たり前だが。
でも、師匠は違う。
師匠はついこの間性転換をしたばかりだ。
体は大丈夫だが心は女じゃない。
ていうか師匠はその門番に対して
「相変わらず面倒なシステムだな。
このために性転換しなきゃいけないのは面倒だよ」
と親しげに男言葉で語りかけている。
なんか親しげな感じでもある。
私たちは意を決してその結界を通った。
結果は・・・・・・大丈夫だった。
私が驚いていると師匠は
「厳密には心は男でなければ良いんだよ。
僕の心の性は無性なんだって。
つまりどっちの性別にもこだわりがないと言うことらしい。
昔、ここに来た時に初めて知ったんだけどね
それにババルは僕の親友でもありここの村長でもあるんだ」
と語った。
師匠は
「そういえばフィローは元気かい?」
と村長に聞いた。
村長は
「あぁ、踊り子のフィローかい。
あやつはすこぶる元気でやっているよ。
あんたの弟子らしいね。
あんたも不老不死らしいがあやつも不老不死。
かなりの年になると思うがいつまでも若く元気でやっているよ。
それにしても不老不死って奴が本当にいるんだね。
私ははじめは半信半疑だったがあやつを見て信じるしかなくなったよ。
お前さんも見た目変わらぬ少女のままだしね」
地元では少年なんだけどと言う言葉を私はぐっとこらえた。
村長は
「そういえば先日あやつは結婚したよ。
3度目の結婚だとか。
この村には女性しかいないからもちろん女性と。
それも最近、この村に入った女性だったか。
その女性を追ってもう1人女性が入ってきたからその女も隅に置けないのう。
フィローの女たらしにも手を焼いておる。
とんだプレイガールと言うべきか
そなたが師匠なんだから1回お灸を据えてくれ」
一体フィローという人はどういった人なのか些か不安です。