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女神

 私は学校を卒業し初めての弟子入りに成功した。

弟子入りが認められるまで1ヶ月以上かかった。

師匠は見た目10歳ぐらいの男の子だ。

しかも車椅子で生活している。


 弟子入りした次の日、私は彼に直接聞いてみた。

それは噂と見た目が合わないこと。

なぜなら師匠は伝説の勇者で100歳以上は言っているはずだから。

それを聞くと師匠はゆっくりと話し始めた。


 「まずは自己紹介をするね。

僕の名前はエクローニ。

一応伝説の勇者が1人さ。

大体70年ぐらい前の大戦で大活躍させてもらったものさ。

ちなみに僕の業績はいろいろな本に載っているから君も分かると思うけど」


 伝説の勇者エクローニと言えば私も小さい頃から読み聞かせられている人物だ。

恐らく私の国では知らない者のいないぐらい有名な人物だ。

しかし今も子供のような姿でいるとは知らなかった。

彼は

「あ〜、この体のことかい。

これは女神の呪いみたいな者でね。

話すと長くなるんだけど」

と言って話し始めた。

「僕が10歳ぐらいの頃かな。

幼なじみのロンティーと湖のほとりで遊んでいたんだ。

最初は普通に遊んでいたんだけどお互い勇者の血筋、普通の遊びじゃ物足りなくなってきてさ。

次第に危険な遊びをするようになってきたんだ。

初めは格闘のまねごとから始まったんだけどさ

そのうち武器を使うようになってさ。

ある日、お互いに斧を数十本持ちだして投げて遊んでいたんだ。

そうしたら何本かが湖に勢いよく落ちちゃったんだ。

そうしたら湖から女神が出てきたんだ」


 話を聞いていると常人では考えられない内容。

しかし、斧を湖に落とし女神が出てくるとはどこかで聞いたような話だ。

師匠は続けて

「女神は出てくるなり「おんどりゃぁ、なめとんのか、われ」とすごんできたんだ」

ちょっと話の様子が違ってきた。

師匠は

「言っておくけど女神はこの世の者とは思えないほどの美人だったんだ。

それが鬼の形相でいきなり怒り出したんだ。

女神は「コホン、最近、ここであなたたち子供が遊んでいるのを微笑ましく見ていました。

しかし、その遊びが段々激しくなっていき終いには斧まで持ち出す始末。

私は喧嘩でもしているのかと冷や冷やでした。

しかしあなたたちの表情を見ていると楽しんでいるように見えます。

あなたたちは子供の遊びのレベルを超えています。

そして今、あなたたちは故意ではないとしても勢いよく斧を私に向けて落としてきたのです。

殺す気ですか。

あなたたちがここに住む女神の存在を知らなかったとしても酷すぎます。

あなたたちは「金の斧、銀の斧」という童話を知らないのですか。

湖には必ず女神がいるのですよ。

普通ならここであなたの落としたのは金の斧ですか銀の斧ですかと聞くところですが私はかなり憤慨しています。

何しろ本当に危なかったですから。

でも話していて大分落ち着きました。

何しろ女神ですから。

言っておきますがあなたたちに恨みがある訳じゃ有りません。

ちょっと取り乱してしまいました。

私はこれでもあなたたちを優しく見守っていたのです。

親のような気持ちで。

そこで提案があります。

あなたたちは伝説の勇者になる資格があります。

そのためには私の加護を受ける必要があるのですがよろしいですか。

言っておきますけど拒否権はありません。

なにしろ私に死の危険を与えたのですから」

女神は笑顔で話していたのだけど目は決して笑っていなかった。

僕はどんな罰でも受けるつもりだった。

でも僕の心配とは裏腹に最高レベルの能力を付加されたんだ。

最後に女神は

「困ったことがあったらいつでも訪ねなさい。

いつでもあなたたちの味方だから」

と言って湖に帰っていったんだ。

しかし、最高の能力と引き替えに失ったものがある。

年齢さ。

僕はそれから見た目が成長しなくなったんだ。

言い方を変えれば不老不死とも言える。

だから見た目が少年のままなんだ」


 女神に愛された少年と言うべきなのか。

それとも女神の怒りに触れた呪いなのか私には分からない。

でも話を聞く限りその女神は決して悪い人には見えないのだが。


 そしてもう1つの疑問を私は聞いてみた。

車椅子のことだ。

師匠は

「あ〜、これは生まれつきだよ。

僕は生まれつき足が動かないんだ。

女神にも足が動くようにお願いしたけど、生まれ変わらないと無理だと断られたよ。

実際、この状態でも上手くやってこれたしね。

僕はこれでも車椅子格闘術の達人でもあるからね」

と笑いながら答えた。


 私は女神とはそれから会っていないのかを聞いた。

師匠は

「全然会ってないね。

あれは怖い体験だったからね。

トラウマ級のね。

あれから湖にも行っていない。

でも女神のおかげで僕は伝説の勇者になれたんだ。

そのことを思うと経緯いきさつはどうあれ女神には感謝しているね」


 師匠は女神に認められた人物だと思う。

でなければどんな経緯であれそんな神の領域に達した能力を持てるはずがない。

そして私は師匠の話を聞いていると師匠の人柄が好きになってきた。

まだ出会ってからほんの少ししか経っていないが私はこの人の弟子になって良かったと思う。







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