雪山
私が師匠の弟子になって初めての冬が来た。
今年は暖冬らしく暖かかったらしいがようやく本格的な冬が来た。
私は相も変わらず修行の日々。
フィローからは格闘技、オトエメからは魔法を教わる日々が続いている。
フィローはめちゃくちゃエロ目線で私を見てくる。
ほとんどセクハラまがいの修行だ。
あまりにもセクハラが酷い時は
「(同性婚相手の)奥さんに連絡しますよ」
と忠告する。
そうすると彼女は
「あらあら、冗談よ。
本気にしないでね」
とそそくさと私から離れる。
そんなこんなで格闘技の修行は続いています。
ちなみにフィローは女性で同性愛者です。
ただ、ちょっと同性に対してのセクハラの度合が凄い。
同性だからって許せるレベルでは無いと思うのですが。
彼女は性転換者で男性だった時女の子に対して喋れなかった事の反動だと本人は弁明していたけど。
それにしても酷い。
今度師匠にチクろうと思っています。
彼女は師匠には頭が上がらないので。
そしてオトエメ。
彼女はロリっ娘で僕っ娘で男の娘風味です。
と言っても生まれてからの女の子一途の歴とした女の子ですけど。
(ちょっと日本語がおかしいですが)
彼女からは今のところ風、雷、水の属性の魔法を教わりました。
と言っても初歩中の初歩ですが。
そして彼女が教えると言っていた炎と氷の属性の魔法はまだ教えてもらっていません。
その事を彼女に尋ねると
「まずは基本を身につけてから。
正直言って、残りの2つの属性の魔法はとても難しいんだ。
だから僕が教えた他の3つの属性の魔法を早く習得する必要性があるんだ。
それが出来たら教えるよ」
最初の話では5つ同時に教えてもらえる予定だったのに。
そんなオトエメの言い分にいつも隣に付いているメイドのピュッペが苦笑しているのが少し気になった。
そんな修行の日々を回想していた。
ふと窓を見ると雪が降ってきた。
初雪だ。
そう思うと同時に私が師匠の元に来てもう冬になるんだと感慨にふけった。
突然師匠は
「久しぶりの雪だな。
ていうか今シーズン初めての雪。
初雪が異様に遅かったな。
そうだ、今日は修行を休もう。
せっかくの雪だ、みんなで楽しもうじゃないか」
と提案してきた。
私は
「師匠は何がしたいのですか?」
と聞いてみた。
師匠は
「久しぶりにスキーをしたいな。
ここではまだ積もっていないけど毎年めちゃくちゃ雪の積もる場所を知っているんだ。
そこに行こう」
私は師匠に
「滑れるんですか?」
と聞いてみた。
と言うのも師匠は車椅子生活。
とても滑れるようには思えないのだが。
師匠は
「あ〜、それは大丈夫。
この車椅子は便利で雪山を滑れるし空も飛べる。
海だって進むことが出来る万能型なんだ」
私はそれを半信半疑で聞いていた。
確かにそれは師匠が手を使わなくても自動で動き出す便利な車椅子なのだがそこまで便利な車椅子が存在するのだろうか。
雪山に行くことに全員が合意しようかというところでオトエメが反対意見を言った
「僕は行かないから。
そんな面倒い所」
オトエメの従者のピュッペは
「大丈夫です。地を這ってでも生かせますから。
お坊ちゃま(女)は寒いのが基本的に苦手なのです。
暑いのも苦手ですが。
知ってました?
ロフィーヤ様(私)に炎と氷の魔法を教えない理由。
お坊ちゃま(女)は魔力が強すぎるので普通の魔法の力じゃありません。
炎は熱すぎる、氷は冷たすぎるとの理由であまり使いたがらないのです。
だからロフィーヤ様に教えないのです」
私はピュッペは大丈夫なのかと聞いてみた。
ピュッペは
「私は基本、土で出来ているゴーレムですが足下によって組成が変わるのです。
意識すればですが。
だから土のない所でも存在は可能です。
雪山に行くと言うことでしたら雪で体を組成することになりますが。
あと、基本地面から両足を同時に離すことは無理なので走ることは出来ません。
どんなにスピードを出しても競歩状態ですので」
ちなみにピュッペは主人のオトエメのことをお坊ちゃまと呼ぶ。
それはピュッペが誕生した時からだそう。
ピュッペ曰く今更オトエメの呼び方を変える気は無いのだそうです。
私たちはこのあと、雪山に行った。
ほぼ1時間しか歩いていないのにこの雪景色とは。
まるで別世界のようだった。
師匠は
「僕たちは普通の人たちより早く歩けるんだ。
修行の成果で大体時速60キロぐらい。
山の中突っ切ってきたから気づかなかっただろうけど」
修行恐るべし。
私は師匠がどうやって滑るかを観察していた。
まさか車椅子の師匠がスキーの時だけ立って滑る訳があるまいし。
じ〜っと見ていると師匠の車椅子が変形を始めた。
車椅子の車輪が内部に仕舞われしたから折りたたまれたスキー板らしきものが現れてきた。
そのスキー板は次第に広がりちゃんとしたスキー板になった。
スキー板の上にはサスペンションらしきものが見える。
なるほど、これが師匠の言うスキーなのかと思った。
気がつけば師匠はストックらしきものを持っている。
「さぁ、行くよ」
と師匠が綺麗なシュプールを描き雪山を下っていった。
次に滑っていったのはメイドのピュッペ。
スノボーらしきもので滑っている。
でもそういえば地面から足を離すことが出来ないって言っていたような。
よく見ると素足で滑っている。
海で素足でウェイクボードしているような格好だ。
その姿はとても格好良い。
メイド服でなければなおさらだが。
フィローは踊り子の姿でスノボー。
その姿は妖艶でなまめかしい。
普段の姿とは想像出来ないぐらい。
彼女は黙っていれば美人なのだからもうちょっとおしとやかにしてほしいものだ。
私とオトエメはと言うと滑れないのでお留守番だ。
しかも暖を取りながらのガールズトーク。
とても楽しかった。
でもまさかここで初めてオトエメの炎の魔法が見れるとは思わなかった。
そしてオトエメは
「滑ってないことはみんなには内緒だよ。
いいじゃん、どうせ休みなんだから。
それにみんな自分事しか見てないし」
と背徳のガールズトークを楽しんだ。
久々の休暇で非常にリフレッシュしました。




