ゴーレム
今日からオトエメの番だ。
修行はフィローからオトエメへと変わった。
ところで少し気になることがある。
師匠の家に新しい女性が来たことだ。
いつの間にか師匠の家に居着いたその女性は前からいたかのように自然とそこにいる。
いや、誰かツッコめよと私は思った。
見知らぬ女性がそこにいるのだから。
なのに私以外の人たちとよく馴染んでいる。
私以外には見えないのかとも思ったがそうじゃない。
よく他の人たちと世間話をしている。
私はこの数日その女性をよく観察した。
よく見るとその女性はメイド服姿だ。
メイドでも雇ったんだろうか。
私は師匠に聞いてみた。
「いや、メイドなんか雇ってないけど。
そういえばあの女性は何者なの?」
師匠も知らない様子。
それなのになぜ馴染んでいるのか。
話は修行に戻ります。
オトエメは
「僕からは魔法を教えるのだけどその前にフィローから習った格闘技の腕前を見てみたいと思います。
と言っても僕は見た目通り格闘技が苦手。
お気に入りの服も汚れちゃうしね。
そこで君と闘ってもらう相手を紹介します」
そういうと例の女性が出てきた。
「初めまして。
私の名前はピュッペと申します。
ここ数日あなたたちの家にお邪魔しているものです。
フィロー様には劣りますが私も格闘技の達人。
あなたのお相手をします」
そう言うと彼女はいきなり私を攻撃してきた。
彼女はいきなり顔面に突きを入れてきた。
それを私はかわした。
その瞬間に彼女は蹴りを顔面に入れてきた。
それも私はかわした。
彼女はにっこりと笑い
「やりますね。
ではスピードアップしますね」
と攻撃をあげてきた。
私はかわすのが精一杯。
そして、偶然肘が彼女のお腹に当たった。
その瞬間、彼女の体がなぜか崩壊した。
私が呆気にとられているとどうも後ろから攻撃されたようだった。
そして私は気絶をした。
私が目を覚ますと
彼女は
「ごめんなさいね。
言い忘れていたことがあるの。
私はゴーレム。
体は土で出来ているの。
だから防御力が皆無でね。
でも地面からすぐ復活出来るから問題はないのだけれど」
私はゴーレムというものを初めて見た。
文献では知っている。
でも実物を見るのは初めてだ。
しかも人間のように動いてしゃべれるとは。
私の様子を見ていた彼女は
「もしかしてゴーレムを見のは初めて?
私は自立型のゴーレム。
自分でモノを考えられるし命令がなくても行動が出来る。
一応ご主人であるオトエメ様によって作られたのだけどオトエメ様の意思とは関係なく動くことが出来るの。
ちなみに自立型のゴーレムは世界に数体しかない貴重なモノだそうよ」
私は彼女のことをもっと知りたくなった。
「ねぇ、ねえ、いろいろと質問とかいい?」
彼女が頷くと
「食事とかはどうしているの?」
「食事というか飲食はしません。
それをしなくても生きていけるので必要がないのです」
「あなたは何を目的として生まれたの?」
「よく分かりませんがオトエメ様は寂しかったのだと思います。
だから私を作ったのだと。
私は主にオトエメ様の話し相手や身の回りのお世話などをしていますが。
それが私の生き甲斐でもあります」
「ねぇ、ねえ、オトエメって普段どんな性格なの?」
「お坊ちゃまは・・・、失礼お嬢様は普段はおとなしい性格ですよ。
甘えん坊でもありますし。
「え、さっきお坊ちゃまはって言いかけましたよね」
「よく注意されるんです。
女の子なのにお坊ちゃまって。
でも私はオトエメ様はお坊ちゃまが相応しいと思うんです。
格好は可愛らしい女の子ですけどなぜか男の娘チックなお姿。
しゃべり方も含めてですけど」
そこについては私も同意だ。
そして私たちはなぜか固い握手をした。
「コホン、君たちは何を話し合っているのかな。
ていうか変なところで意気投合するな」
私たちはオトエメに怒られてしまった。
オトエメは
「とりあえずピュッペと対等に闘えること。
それから僕の魔法を教えるよ」
と言った直後、ピュッペは
「お坊ちゃま(女)、意地悪なさらないでください。
ちゃんと魔法を教えてあげてください」
「お坊ちゃま(女)って言うなっていつも言っているだろう。
まぁ、いいや。
魔法の基本的な知識だけ教えてやるよ。
魔法は五原則からなっているんだ。
火、氷、水、雷、風。
普通はそのうちの1つだけ覚えれば充分なんだけどこの際サービスとして5つ全部教えてやるよ。
僕はスパルタだから気を引き締めろよ。
ではこれで今日の修行はおしまい」
と言って私たちは師匠の家に帰っていった。
師匠の家に帰るとまずピュッペのことをみんなに説明した。
どうやらみんなモヤモヤしていたみたいでやっと安心が出来たようだ。
正式にピュッペが新しい仲間として採用されたのでピュッペの部屋が用意された。
彼女は飲食はしないそうなので食費がかからない。
ベッドはと聞くと
「プランターをご用意出来ますか。
私がすっぽり入るような大きさの。
そこに私が土を入れます。
それが私のベッドになります。
寝る時は私はプランターの土と同化します。
私の体がさっきみたいに崩れるように。
そして起きる時にまた再生しますのでご安心ください。
一回体が無くなりますが死んだ訳ではありませんから。
私の寝る姿は人間にはショックなようでオトエメ様もかなりショックを受けてしばらく寝れなくなったとのこと。
だからあなたたちも見ない方がいいかも。
ただ、体が崩れるだけなんですけどね」
確かに想像しただけでトラウマになりそうな光景だ。
新しい仲間が増え修行内容もどんどん過酷になっていく。
とりあえず明日のことは考えずに私も早く寝ようと思った。




