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格闘家

 今日から本格的な修行が再開した。


 いつもは師匠とマンツーマンの修行。

師匠は車椅子ながらも華麗な動きをする。

体術の訓練なんかは車椅子であることを忘れるぐらい素早く反応する。

魔法なんかも私が出来ないぐらいの大技を見せてくれる。

師匠曰く「勇者」という職業は総合職なんだそう。

つまり体術も魔法も一流じゃなければならない。

いつも師匠は口を酸っぱくして言っている。


 さて、突然ですが仲間が増えました。

踊り子のフィローと魔女のオトエメです。

2人とも男子禁制の村で出会いました。

フィローは20年ぐらい前に師匠の弟子だったそうです。


 師匠も暇なようでいて結構忙しい身。

ことあるごとにいろんな所に行っているようです。

でもここのところ私の修行に付きっきり。

仕事には行けずじまい。

ちなみに師匠の仕事は人助け中心のクエストらしいです。

まだまだ治安の悪い世の中いろんな所からひっきりなしにオファーあるそうです。

それをここ何ヶ月かは私に為に断ってくれていたらしいのです。

とても有り難いことですが。

でも生活するためにも師匠もそろそろ仕事をしなければならないとのこと。

新しく生活するメンバーも増えたことだし私の修行にばかり囚われたくないのだそう。

そのために2人に来てもらったのだという。

(ちなみに1回のクエスト料で私たち全員を一年間贅沢に暮らせるぐらいの額をもらえるそうです)


 そして、今日修行を見てもらっているのは踊り子のフィロー。

正直、師匠じゃなくてがっかりです。


 フィローは

「今日はあなたの修行の担当をします。

そのために呼ばれたんだしね。

私の専門は体術。

ちょっと意外でしょう」

正直少し意外だった。

でも踊りを教えられたとしても使いようが無いけど。


 「私は踊り子を生業としているのだけど、踊り子になる前は格闘家だったの。

師匠が異世界人だったんだけど。

と言っても前の前の師匠ね」

「異世界人」という言葉にビックリした。

噂では聞いたことがあるけれど実際にいるとは知らなかった。

あくまでオカルトの話だと思っていたから。

「師匠は女の人でとても綺麗だったわ。

何でも「日本」という国で柔道や剣道の達人だったらしいの。

空手も達人クラス。

私は師匠の元、それらをたたき込まれたわ」

確かに「日本」という国も「柔道」、「剣道」、「空手」と行った格闘技も聞いたことが無い。

「とにかく師匠は格闘技マニアで前の世界のあらゆる格闘技、そしてこの世界のあらゆる格闘技をマスターしてきた凄い人なの。

今の師匠もぶっちゃけ凄い人なんだけど前の師匠も伝説級の勇者だったから。

しかも魔法を一切使えずに伝説の勇者になったのは師匠ただ1人。

私はそんな伝説クラスの師匠2人も出会えたのがものすごい自慢よ」


 私はしばらくフィローの自慢に付き合った。

「私が元男なのは知ってるわよね。

性転換したのにも理由があってね。

昔から男の子の輪に入るのが苦手だった。

男子の論理を理解できなかったの。

かといって女子と一緒にいることも出来なかった。

恥ずかしかったから。

でも心の中では女子の輪に入りたいと思っていた。

話している内容に興味があったし、それに私の趣味嗜好が女子の方にあっていたし。

男子がする話題は興味すら持てなかった。

それでも私の心が女性だとは気づかなかった。

気づいたのは今の師匠に出会ってから。

私ね、実は何人もの師匠に出会っているのだけどその人たちはいずれも女性なの。

本能的に女性の師匠の方が安心するからなんだけど。

今の師匠は出会った頃は女の子だったの。

今の師匠が性別を自由に変更できるなんてつい最近知ったばかりだからその事にかなりビックリしたわ。

前の修行の時に言ってくれればよかったのに。

その時から自分を解放するようになって今に至った訳」

 

 私はそれらの話を筋トレしながら聞いている。

かなりきつい。

かれこれ1時間になるだろうか。

彼女は筋トレが好きらしい。

とんだ筋トレフェチだ。


 彼女は

「私が踊り子になったのは実は理由があるの。

あらゆる格闘技を身につけた私はかなりムキムキの体になったわ。

だから今の師匠は私が心の性別が女だったとは全く思いもしなかったと行っているわ。

でも体が男らしくなる度に心と体のギャップに苦しんだわ。

性転換した時いくらか心は安らいだけど体はムキムキのまま。

女らしい体になりたかった私はありとあらゆる事にチャレンジしたわ。

そして行き着いたのが「踊り子」というわけ。

でも格闘技と踊りというものは密接なつながりがあって簡単に言うと格闘技の格闘の流れがそのまま踊りに繋がるの。

踊りの中に攻撃もあれば守備もある。

踊りと格闘技は表裏一体のものなの」


 私は午前中の筋トレに音を上げていた。

地面に大の字になって横たわっていた。

聞きながらも休むことを許さない彼女はめちゃくちゃスパルタだ。

大体、私だってムキムキの体になんかなりたくない。

女らしい体でいたいのだ。

だからこれ以上の筋トレを私は拒否した。

しかし、彼女はおしゃべり好きだ。

修行は8時から始まりもう3時間も経つ。

その間、ずっとしゃべっていた。

聞いているこっちの身にもなって欲しい。

話を聞きながらの筋トレは流石にきつい。

私はその事について抗議した。

彼女は

「ごめんなさいね。

私、話し出すと止まらないから。

それに元格闘家の影響で1日中筋トレをしていたことあって。

そうか、普通の女の子にはハードすぎたわね。

午後からは本格的に技の練習だからしっかり休んでね。

午後の修行は1時からです。

たっぷり休憩してね。

ちなみに私は女だけど女の子が好きなの。

お互い女好き同士頑張りましょう」

と言って彼女は帰っていった。


 ちょっと待って。

私がいつ女好きだと言った。

大体私は男の子が好きだし。

しかし、反論しようにもその元気が無い。

結局動けないまま2時間が過ぎた。

もちろん昼食も摂っていない。

そして昼ご飯抜きでハードな修行がまた始まった。


 早くおうちに帰りたい!!





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