表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/61

2.光桜子

A.生まれたときにすぐ思った。私は生まれちゃいけなかったんだって。


 「あんたさえいなければみんな幸せになれた」父母姉、全員の口癖だ。


 父は学歴はないが女兄弟に囲まれて育った影響か妙に女性に甘えるのが上手くそれとなく生きてこれた。フリーター生活の中でのバイト先の娘が母だった。

 

 母は先に別の男と結婚していた。でも上手くいかなかった。だから父に甘えた。父との間に子供ができたので前の旦那と離婚しようとしたができなかった。でも生みたかったので姉を出産した。これで前の旦那はあきらめて離婚してくれるとみんな喜んだ。


 でもいまだに前の旦那と母は関係があった。姉を生んですぐ母はまた妊娠した。前の旦那の子供だ。


 それが、私である。


 前の旦那は妊娠報告を聞いた後記入済みの離婚届だけを置いて消えた。父と母は降ろそうとしたがそのころ、母の両親がやってた店つまり(父のバイト先)は経営不振で潰れた。母の両親は借金を背負い父母もお金がなく手術費用が払えずしょうがなく私を生んだ。


これが私の誕生ヒストリーだ。家族で私だけ他人だ。



そんなことを思いながらバスの上からほかの車の車体の上をジャンプして移動する。箒は携帯が面倒臭いので持っていない。棒状のものに魔力を流せば代用できるから。



ぴょんぴょんはねてると頭上に突風が吹く。ほかの魔法少女が箒で害獣に向かっているのだ。

風で無駄に大きい帽子が飛んだ私を、箒に乗ったつり目の魔法少女がバカにしたように微笑んで去っていった。わざわざ煽るために一時停止したとか煽りスキルが高い。


向かった先は通学途中にバスから見える中学校だった。たしか私立で田舎のこの町でもお金持ちの子供が行く学校だ。


害獣は人間から生まれる。特に思春期の子供は簡単に気分が落ち込む上に同じような子供を集めた学校という集合体は良い土壌だ。普通の人間には見えない上接触できないが。身体や心情に影響を及ぼし、暴力や死も生み出せる。唯一コンパクトの力を持つ魔法少女だけが接触できる。


誰にも感謝されない存在も認識されない必ず必要でもないそんな中途半端なヒーロー

それが魔法少女だ。


校庭が見えてきたので飛び込むとすでに3人の魔法少女が戦っていた。銃のようなもので射撃する者。後ろでコンパクトをいじる者。ツリ目は何本か矢を打った後害獣の移動時のあおり風で飛ばされた。


今回の害獣は赤黒いサンショウウオのような形だ。ただ、目や口の部分からねばりついた赤と黒の個体を延々と流し、制汗剤と汗の混じったようなにおいがした。


害獣は狙撃してくる魔法少女の球を吸収しその上何も影響なく動いている。とそのまま狙撃魔法少女のほうに目を向けると赤黒い液体を放出した。飲み込まれた魔法少女は即死ではないけど「目が見えない。痛い、痛い」と叫んでいたがそのうち声が聞こえなくなった。あれはもう消えたな。


 遠くでコンパクトからデータや救援を出しているようにみえたおかっぱ黄色の魔法少女に近づくとこちらの意図を理解してくれた。

「カースト上位に好きなアニメをバカにされた上に今日生理が重い日のカースト下位女子が発生源だと思うよ。原因探したほうが早いと思う」


情報はありがたいけどじゃあなんで狙撃魔法少女にそれ言わなかったのと言いかけたけど言わなかった。おかっぱも後ろめたいのか「だってなにも聞かれなかったし向こう無言で攻撃始めたから・・・」とモジモジ言い訳している。


そのように私たち二人が話していると害獣はこちらに向かってきた。でも、武器吸収するようなら私の鎌は使えないし飛び道具やビームなんて都合よく搭載されてない。おかっぱも「他の魔法少女早く来てよー」とずっとコンパクトを叩いているので攻撃手段を持っていないのだろう。


とりあえず逃げようと思ったその時、害獣は校庭の中心から現れた大きな竜巻に飲み込まれてしばらく抵抗していたけどそのうち消えてなくなった。コンパクトに「トウバツサレマシタ」の赤い文字と耳障りなアラーム。


校庭の中心にはドヤ顔のツリ目がコンパクトから出てきたハムスターのような生き物から錠剤を渡されそれを即座に飲み込むのが見えた。


隣にいたおかっぱが「私魔法少女になってからあの薬飲めてない・・・そろそろやばいよね」と危機を感じながらもどこか諦めたようなトーンで呟いた。


「ねえ。魔法少女になって願いは叶った?」

私はずっと聞きたかったことを聞いてみた。


「うん叶ったよ。」おかっぱは笑った。

「ずっと体育が嫌いで仕方なかったの、できないときの居残りが嫌で、それがなくなった。でもね」

そこで言葉を切った。

「それだけなの。体育ができたからって成績の数字が2か3上がっただけ。それだけのためにこんなことしてるんだって。こんなに小さな悩みだったんだって解決してすぐ気が付いたんだ」


おかっぱは俯いて泣き出した


「こんな小さなことのために消える可能性ある戦いしなきゃいけないなんてなんで私願っちゃったんだろう。」


こんな小さなことも魔法に頼る私はこれからも生きていけるわけないんだからここで死んだほうがいいんだ。と自棄になり地面を叩き続ける姿はいつの間にか魔法少女の形から元の制服姿に戻っていた。ツリ目は撤退したのかいなくなり。害獣に襲われた狙撃魔法少女はそのまま消えた。私も変身を解いたら彼女がいたことを忘れるのだろう。これはそういう戦いだ。


彼女は願いが叶ったといった。私の願いはなぜ今もかなわないのだろう。

泣き叫ぶおかっぱを慰めずに私はぼんやりとそんなことを思った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ