1.香山譲
「結婚します」
そう僕は社長に宣言して事務所を出た。
僕、香山譲(芸名ジョー)は大人気イケメンアイドルグループの最年長にしてリーダーである。
生まれた時から僕は誰が見ても分かるイケメンだ。幼稚園に入る前から娘持ちの母親達から注目され公立幼稚園なのに入園時抽選が行われ、小学校入学時にまた同じことが起きた親は面倒くさがり最初から試験ありの私立に入学した。道を歩いていて僕を見ない人はいないし、買い物に行けばお金はいらないと言われ、告白されない日は今もないし連絡先は変えてもすぐ知れ渡るため着信拒否ができる電話とメール以外滅多に使えない。
とにかく顔で人生全てがイージーだった僕だけど、高校卒業前に今の事務所にスカウトされて面白半分で入ってみてからはそれなりに大変だった。
スカウトされた事務所は、普通のアイドルや俳優タレントの養成事務所ではなくダンスやヒップホップが中心で僕の顔面パワーが通用しない世界だった。
スカウト側も、芸能経験者だと思ってたらしく全くの初心者と分かったら無理して来なくていいと気を使われたが僕にはそれがとてもイラついたのでやれるだけやってみることにした。
ダンス未経験で周りの年下たちにバカにされながらのレッスンはやめたくなることもあったがほぼ人生初の困難に正直心が躍った。初めて自分で人生を切り開いている気がした。
そんな僕のガッツをバカにしながらも認めてくれる仲間と出会い慕われて仲良くなった5人を、社長は新しいアイドルグループとしてデビューさせてくれることを決めた。
もちろん最初から売れてたわけじゃない。新人らしく接触やフリーライブで着々と顧客をつかみネット配信なんかも積極的にしてSNSでファンとの交流やメンバー仲良しアピール(これが起爆剤になった)で今の地位まで上り詰めた。
僕たちが人気が出た原因としてSNSでの中のよさそうな写真やかわい子ぶりっ子な自撮りがある。
他の投稿と比べてRTやいいねハートの桁数が違うことに気が付いた社長がファンのアカウントを覗きに行きファンが本当に求めているものを知った事で僕らの売り出し方は大きく変化した。
まず衣装が黒ばかりで髪色も明るい金髪や赤緑など奇抜だったものが、いかにもお金持ちそうな高校の制服ぽいデザイン(なぜかブラウスでリボンタイ)に変更でおとなしそうな黒髪や柔らかい茶髪に変えるようマネージャーから指示された。曲もクラブや真夏の湘南でかかってそうな曲ではなく夜9時台のドラマの主題歌のような今まで僕たちが歌ったことない曲をリリースすることになった。
なによりプロモーションビデオだ。今まではひたすらクラブや廃墟のような所や海で怖そうな人やきれいな女の人と踊っていたのがどこかの山奥の学校を借り、男だけで撮影された。
内容は、思春期の葛藤?らしいがなぜか5人で密着して屋上に寝転んで星を見たりメンバー同士で殴り合ったり空を見て涙したりな内容で、曲の大サビ前で人気1位メンバーが机で寝ている2位メンバーにキスをするというシーンが撮られた。(もちろん二人とも男だ)
撮っている間僕たちは言われるまま訳も分からずだったがこの曲により売上ランキングのデイリーウィークリーの連続1位最高記録を樹立しCMソングとして利用した音楽プレイヤーは在庫が消滅しプレミア価格となった。一気にメインレギュラー番組やドラマ映画CMにコンサートツアーが決まり今も人気は衰えない。
まあこんなことがあって僕たちは大人気アイドルとなった。つまりファンが求めているのは僕たち同士の関係性であり、女性との恋愛などありえないのである。
それなのになぜ僕が女子高生魔法少女と結婚することになったのかをこれからお話していこうと思う。