プロローグ
ピピピピピピピピ...
カチッ
朝7時
目覚ましを止めた。
俺ではない誰かが。
そんな事は知らずに俺は爆睡していた。
ピピピピピピピピ...
カチッ
これが2回目の目覚ましだという事を知らない俺は、
ああ、もう7時か...ダルいなぁ。まだ眠っていたい...
いつもの様に朝はそんな事をボーッと考える。
そしてしばらくして、目覚まし時計を横目で見る。
いつものように時計の針は7時とちょっとくらいを示している...はずなのに...
「うわあああああああああああアア!!!!!!!」
今日だけは違った。
「遅刻だああああああああああアア!!!!!!!」
時計の針は8時10分程を示していた。
とにかく急ぐしかない。
幸い、僕の家から高校までは本気を出せば自転車で10分程の距離だ。始業の時間は8時半。いける!
身じたくをさっさと熟し、家を出た。
「よし、学校が見えてきた!」
制服は汗でベタベタ体に張り付いてくる。だが、そんな事はどうでもいい。間に合ったんだ!今までの人生で1度も遅刻しないという俺の目標はこんなところでは終わらなかったんだ!
心の中でそう叫びながら校門というゴールラインを越えた!その直後だった。
ガララララララララ!!!!!!
俺の真上の渡り廊下が大きな音をたてながら崩れ落ちて来た。
俺は乗っていた自転車ごとその瓦礫の下敷きになった。
身体中の感覚が無い。視界からは辛うじて校舎が見えた。校舎の窓から何人もの生徒が覗きこんでいた。
よく見ると香々美さんも覗いていた。俺は香々美さんが好きだ。向こうの方は僕の事はただの友達としか思っていないらしい。
ああ、俺の恋は実る事なく終わるのか...俺の目標は達成される事無く終わるのか…
視界が段々と暗くなっていく。
せめて最後まで香々美さんの事を見ていたい…そう思い、俺は精一杯の力を振り絞って目を凝らした。
ああ、香々美さんはいつ見ても可愛いなぁ…この人を見ながら死ねる俺は幸せなのかもしれない...
...
...ん?
香々美さんの隣にいるのは誰だ?友達が少ない俺なのに見覚えがある。それも凄く身近な人な気がする。
間違いない。
香々美さんの隣には俺が立っていた。
どういうことだ??
更に、香々美さん含めるみんなが驚いた表情をしている中俺だけが何故か笑っている。優しい笑顔だ。
ああ、もう意味がわからない!
とうとう俺の視界は真っ暗になった。
「ちょっと待ってくれ!せめて意味を教えてくれ!死んでも死にきれないじゃないか!」
俺の主張とは裏腹に、俺は力尽きた。
すぐにレスキュー隊が撤去作業を開始したが瓦礫には俺の死体は無く、自転車がぺしゃんこに潰されているだけだった。
もう1人の俺がこう呟いた。
「安心しろ、お前はそれでいいんだ。」
異世界転生はしないと思います。