夏休みの宿題 飼い猫の観察日記
わたしは、いっぴきの、ねこを、かっています。
とっても、かわいい、ねこ、です。
しゅるいはわかりませんが、ちいさくて、あしがみじかくて、つぶらなひとみをしています。
ぜんぶ、ひらがなで、かこうとしましたが、さくしゃに、くじょうがきそうなので、おとなっぽくかきたいとおもいます。
という訳で私の猫は最強に可愛い。
種類は分からないと言ったが実はマンチカンだ。はい、猫被ってました。
これでも私は小学一年生だ。全て平仮名で日記を書こうとしたが、チェックが面倒くさい、そして読みにくいという理由で却下された。
さて、それでは本題に移ろう。
私の飼い猫、名前はチャコ。年齢は0歳3か月。まだ生まれたばかりの子猫ちゃんだ。
色は真っ白。瞳の色はキトゥンブルー。
良く遊ぶ玩具はスマートフォン。
時々父親や姉のを盗んではゲームをしている。とても頭の良い子だ。
頭がいいと言えば、チャコは時々白い服を着て二足歩行で歩く事がある。
私は見て見ぬフリをしているが、まるで人間のように歩いているのだ。
そして家電の留守番記録を確かめたり、テレビで映画を見たり、父親のスマートフォンで何処かに電話したりしている。
こんな可愛くて頭の良いチャコだが、最近私は少し心配だ。
スマートフォンを使って電話するならまだしも、壁に爪を立ててガリガリしているのだ。
何故そんな事をするのだ、もしかしてこの子は猫じゃないのか?
何故壁を引っかき回すのだ、猫なら猫らしくスマートフォンで遊んでいればいい。
心配になった私は、とあるラジオ番組の相談コーナーに投稿してみた。
投稿内容はこうだ。
『うちの、ねこが、かべを、ひっかきまわしてあそんでいます。なんで、だーくそ○るや、ふぁい○るふぁんたじー14で、あそばないのですか? とてもふしぎです』
この投稿内容に対し、相談係りはこう返答してきた。
『ほー。最近の猫はテレビゲームするのか。俺あんまりやったこと無いんだよね。最近スマホのゲームは結構するけど……ほら、俺……若い頃北極に居たからさ……』
相談する所を間違えたかもしれない。
私は単にもっと猫らしく遊んでほしいだけだ。
次に私は、チャコが普段家に一人で居る時に何をしているのかが気になった。
そこで私はFDWを雇った。FDWとは人権を与えられたAIの事だ。最近ではAIという言葉自体差別用語らしいが、あまり細かく説明していると文字数が増えるので……気になる人は「俺、女子高生始めます」という同作家の小説をチェックしてほしい。ちなみにこれは宣伝では無い。
そのFDWからの報告を小学校で受ける私。
スマホの画面に写っているチャコは、今はテレビで映画を見ているようだった。
見ている映画は邦画のようだ。井戸から髪の長い女性が出て来るような奴だ。
チャコは夢中になって画面に食いついている。そして時折何かメモをしながら頷き「地球人恐ろしいニャ」と呟いていた。
まさか日本語まで喋れるとは思っていなかった。
なんて頭のいい子なんだ。
そして今まで見ていた映画を見終わり、棚から次に見る物を選ぶチャコ。
器用に棚から取り出した映画は「シックス・セン○」だった。
あまりに有名すぎるホラーサスペンス。私も幼稚園くらいの時に父親に見させられたが、とりあえずワケワカメだった。それはそうだ、小学一年生になった今なら理解できるかもしれないが、幼稚園児が見ていい映画では無いだろう。
チャコも「シックス・セン○」を見るのだろうか。まだ0歳3か月なのに。
「にゃ、にゃんてこった……この傑作は何処の家にもあるニャ? うー……見たいけど……今日はいいにゃ……」
どうやら諦めたようだ。しかし今の口ぶりからすると、チャコは色んな家の映画を漁っているのだろうか。
何か途方もなく不安になって来た。
私は引き続きチャコの観察を続行した。
そしてある日、ついに見てしまったのだ。あの子の本性を。
「こちら第三十三方面支部、チャコですにゃ。本日、この国のホラー映画を数本チェック。一番怖かったのは「リ○グ」って奴と、「着○アリ」って映画ですにゃ。ガラケーの隊員はスマホに変える事をお勧めするにゃ。間違っても自分の電話番号から掛かってきても取っちゃダメにゃ。ぁ、それと父親のスマートフォンに、娘が初めて掴み立ちした時の動画や、初めて歩いたときの動画が多数保存されていたにゃ。どうやら地球人、初めての○○っていうのが大好きみたいだにゃ」
なんということでしょう。
私の父親がそんな動画をスマホに保存していたなんて……。
そしてそれを誰かに報告しているチャコ。
映画の感想はまだしも、私の初めてシリーズが存在している事を外部に漏らすなんて……帰ったらお仕置きしてやらねば。
数時間後、家に帰還した私は早速チャコの元に馳せ参じた。
毛布の上でゴロゴロしているチャコ。
そっと抱き上げ、私は父親の秘蔵映画コレクションの中から一本を選び出した。
今まで私が最強に怖いと思った映画。
そのパッケージを見るなり、チャコはまるで氷像のように凍り付いてしまった。
「ちゃこ、いっしょにみよー?」
そのあと、ちゃこといっしょに、「しゃい○んぐ」を、みました。
とっても、こわかったです。
おしまい
『も、もうこの映画だけは勘弁してほしいにゃ! 怖すぎるんだにゃ!』