君の涙
喉が熱い。頭がズキズキする
近藤さんと土方さんの声がする。良かった…生きてた。他の皆は大丈夫かな……
手が…温かい。心が落ち着く。
総司はゆっくり目を開けた。
「…っ!!…総司っ?!」
なつの声に皆が総司の元へ集まる。
「…そんな…皆して覗かないでくださいよ…」
「バカヤロー!皆心配してたんだよ…」
左之助の目には涙が浮かんでいる。
「お前、歳がいなきゃ死んでたぞ。」
近藤は安堵感の篭った声で優しい笑顔で嫌味を言った。
そうか…あの時土方さんが宮部を……
「良かったな。」
土方はなつの肩をポンポンと叩き、いかにも心配してませんといった表情で行ってしまった。そんな土方がおかしくなる。総司が池田屋で見た最後の土方の表情は、必死の形相で、誰よりも総司の安否を気遣ってくれていただろうというものだった。
…ポタリ……―――
総司の手に一滴の雫が落ちた。
…ポタリ…ポタリ……
その雫を辿っていくと…今まで見た事のなかった泣き顔があった。目にいっぱい涙を溜め、大粒の雫がとめどなく流れている。その表情は心配、安堵、怒り、嬉しさ…様々が入り組んだものだった。目を合わせた二人を見て、暗黙の了解の如く、総司のまわりを囲んでいた者が立ち去っていった。
二人はしばらく見つめ合った。そこにいる存在を、生きているということを納得するように。
「なつ、そんなに泣くなよ。綺麗な顔が台無しだ。」
総司は笑みを浮かべながら言った。
「……………バカ……」
「え…?」
ボソリと呟いたなつの声に総司は聞き返す。
「馬鹿っ!どれだけ心配したと思ってんの?!総司が倒れたって聞いて……私を置いて逝かないでっ………」
なつの目からは止まる事の知らない雫が流れ続ける。総司は拭いきれない雫の流れ道にそっと触れた。
「私はなつを置いて逝ったりしない。なつを悲しませたりしない。約束する。」
なつに笑顔が戻った。
「やっぱりなつは笑っている方が良い。」
総司の手は温かく、生きているのだと実感する。本当に良かったと胸を撫で下ろした。
「…なつ……」
「何…?」
総司はなつの目を真っ直ぐ見つめ、優しい温かい笑顔で囁いた―――
『愛してる』
総司となつは、人目も憚らず、口付けを交わした。




