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池田屋事件(後編)

「…宮部……宮部はどこだ…」

 総司の頭の中には宮部を斬る事しかなかった。立ち向かってくる浪士は全て邪魔者。


   私の邪魔をするな…


 総司は容赦無く斬り捨てる。

「宮部ぇぇーー!!!どこにいるんだ!!!!」

 総司がそう叫んだその時―――

「宮部は俺だ…肥後脱藩宮部鼎三…」

 総司の前にゆらりと姿を現した。

「新選組一番組隊長沖田総司」

「お前が沖田か。何故俺を探してた…?」

「私は…あんたに大切なものを傷付けられたんだ…」

 総司の目には尋常じゃないほどの殺気が漂っている。なつの仇を討つためなら鬼にも修羅にでもなれる。

「大切なもの?知らねぇなぁ。…あ、一人、女は抱いたな。」

 宮部には分かっていた。総司の怒りの原因は天神牡丹を抱いた事。新選組が押し入って来た時に、天神牡丹は新選組の密偵だったと気付いたのだ。

「あの女…馬鹿だよなぁ。幕府の犬共の手先にさえならなければ、身体を売るような真似しなくて良かったのにな。」

「……黙れ………」

 総司の怒りはふつふつと沸き起こっていた。

「それにあの女、標的を間違えたよなぁ。俺さえ選ばなければ、身体売らなくて良かったかもしれねぇのに。身請けしてやるって言ったら即効で仕掛けてきやがった。俺はそんな簡単じゃねぇよ。」

 鼻で笑う宮部に総司は目をカッと見開いた。

「…黙れっ……」

 自分が何を言われようとかまわない。でもなつを侮辱する事だけは許せない……

「ただ俺も新選組の奴だとは思わなかったのが失敗だったな。…ま、なかなか良い身体はしてたぜ?あの怯える目、思い出しただけで興奮してくる。ご馳走さん。」

「…貴様……貴様だけは絶対に許せねぇ…てめぇは簡単に殺してやんねぇ。痛み苦しみを嫌ってほど味わわしてやるよ……」

 総司は畳を蹴り、宮部の懐まで入った。刀と刀がぶつかり合い、火花が散る。お互い離れ、また構え直す。

「さすが一番組隊長だ。なかなか早いじゃねぇか。面白い。」

 今度は宮部が仕掛ける。それを総司は難無くかわし、一手を投じる。しかしそれも宮部はひらりとかわす。両者互角の戦いだった。

「なかなかやるな。でもな、勝つのは俺だ。お前が死んだら俺があの女、貰ってやるから安心しな。またあの怯えた目を見れると思ったら腹の底から快感が走る。」

 ニヤリと笑う宮部。総司の怒りが頂点に達した。

「?!?!」

 それまでとは比べ物にならない早さで総司が突っ込んで来た。その瞬間、右肩に激痛が走った。

「…っ…てめぇ…どこにそんな力が……」

 痛みに顔を歪ませる宮部。総司の攻撃は容赦無く続いている。宮部はそれを止める事が精一杯で、攻撃を仕掛ける事が出来ない。

 その時、総司の動きが止まった。

 胸から焼けるように熱い物が込み上げてくる。

「ゴホッ…ゲホッゲホッゲホッ……」

 総司の口から、おびただしい量の血が溢れた―――

「お前…病なのか。じゃあどっちにしろお前の死を悲しむんだな、あの女は。」

 宮部は気力を振り絞り、総司へ刀を振り下ろす。総司は迫りくる白刃を目で追った。


 総司の目の前で宮部が倒れた。その先に、土方の姿を見た。総司が覚えている、池田屋での最後の記憶―――


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